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5-1. 「海」から「山」へ。テーマの変化と、保持された「女性性」 【ユクスキュル / 大槻香奈考】

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「わたしの海について」飛び出すカード風の作品
引用元:https://twitter.com/KanaOhtsuki/status/679216789939601408?s=20


2008年の「海」から3.11以降(~現在)の「山」へと、テーマが変化してきました。一見真逆に思える題材ですが、どちらも女性性を孕んだモチーフであることが興味深いですね。というのは、どちらも両面性を持っているからです。

例えば海の場合。まず思い浮かぶのは「母なる海」ではないかと思います。単細胞生物を生み更なる進化へと誘った海は、まさに「生」の象徴ともいえるでしょう。

しかしその反面、荒れた海は人間などには歯が立たず、深海へと引きずり込んでいくような渦のイメージも持っています。3.11を例に出すのであれば、津波もやはり海であり、その海が街や人を呑み込んだという悲しい過去もあります。

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上2点ともに「わたしの海について」飛び出すカード風の作品
引用元:https://twitter.com/KanaOhtsuki/status/679216789939601408?s=20

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そして山。穏やかで肥沃な土壌を持つ山には様々な植物が生息し、それを餌に多数の動物や昆虫たちが息づいています。食物連鎖はよくピラミッドの形で現わされますが、山で起きていることそのものとも言え、得てして妙だなと感じます。

しかし豪雨や地震などの災害の際は、山は凶暴性を露にします。火山であれば噴火が起き、そうでなくとも地割れが起きたり土砂崩れや落石といった「人間にはどうしようもない力」を一気に吐き出します。特に土砂崩れなどは、人間や家々ひいては街を、文字通り「呑み込み」ます。

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『失われた家』
引用元:https://twitter.com/KanaOhtsuki/status/1121337741994680320?s=20

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『お人形を置いて』
引用元:https://twitter.com/KanaOhtsuki/status/1121337741994680320?s=20


こうして比較してみると、海にも山にも、さながらユングの提唱する「グレートマザー」的な側面があると言えるでしょう。

母なるものは包み込む優しさを持つ反面、呑み込む力が暴発すると大変な力を発揮するのです。

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