「ジェンダー」とは?内閣府がまとめた国際的な定義一覧


この記事について

 内閣府男女共同参画局のpdfをそのまま引用しているだけです。全文は以下のリンクから読めます。「内閣府のサイトの隅っこのpdfなんてどうせ見ないでしょう」という事で、アクセスしやすいよう記事化しただけです。2005年に作成された資料である点にご注意ください。

(資料3)「ジェンダー」という用語の国際機関等での使用例https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku/pdf/genderhyougen.pdf

興味深い箇所を勝手に太字にしています。URLはほとんどリンク切れです。


1. 国際機関等による「ジェンダー」という用語の定義

(2021/09/09 update

「ジェンダー(S)とは、……な……の〇〇(C)である」のSとCだけを抜き出した文を補記しました。近年、ジェンダーの概念そのものの認識に混乱があると感じたためです。ご参考にどうぞ。)

・国連開発計画(UNDP) 人間開発報告書(1995年日本語版)

『男子、女子という生物学的性差を「sex」という語で表すのに対し、社会的 ・文化的につくりあげられた性別をジェンダーという。』
URLなし

ジェンダーは、社会的文化的な性別である。

・世界銀行「Mainstreaming Gender and Development in the World Bank」(1998年12月発表報告書)

「セックスとジェンダー:セックスが生物学的に男あるいは女である状態を意味するのに対し、ジェンダーは社会的に規定された男あるいは女であるという姿(様相)を意味する」
URL:http://www-wds.worldbank.org/servlet/WDSContentServer/WDSP/IB/2000/02/24/000094946_99030406260119/Rendered/PDF/multi_page.pdf

ジェンダーは、姿(様相)である。

・国連ジェンダー問題特別顧問事務所(OSAGI)ホームページ

「ジェンダー:男性あるいは女性であることに根ざす社会的態度、機会、及びあらゆる男女間、少年少女間の関わり方を指す。これらの態度、機会、関わり方は、社会的に構築されたものであり、社会化の過程で習得されるものである。」
URL:http://www.un.org/womenwatch/osagi/conceptsandefinitions.htm

ジェンダーは、態度である。機会である。関わり方である。

・世界保健機関(WHO)ホームページ「What do you mean by "sex" and "gender"?」

『「セックス」は男性であるか女性であるかを規定する生物学的・生理学的特徴を指す。「ジェンダー」は、特定の社会が男性及び女性にふさわしいと考える社会的に構築された役割、態度、行動、属性を指す。言い換えると、「男性」「女性」 はセックス・カテゴリーであり、「男らしい」「女らしい」 はジェンダー・カテゴリーである。セックスの特徴は異なる社会間で実質的に変わらないが、ジェンダーの特徴は異なる社会間で大きく異なる。(中略)
<ジェンダーの特徴の例>(中略)
● サウジアラビアでは、 男性は車を運転することが認められているが、 女性は認められていない。(後略) 』
URL:http://www.who.int/gender/whatisgender/en/

ジェンダーは役割、態度、行動、属性である。

・国連人口基金(UNFPA)ホームページ「What is meant by "gender"?」

「ジェンダーという用語は、男性または女性であることに関連する経済的・社会的・文化的属性や機会を指す。 (中略) ジェンダーはしたがって、それが生物学的というよりも社会的・文化的なものである点でセックスとは異なる。 ジェンダーの属性及び特徴は、とりわけ男性と女性が果たす役割及び人々にかけられる期待全般にわたって、社会間で大きく異なり、 時間の経過と共に変化する。しかし、ジェンダーの属性が社会的に構築されたものであるという事実は、 それらが社会をより公正で公平にするような変化の影響を受ける可能性があることをも意味している。(中略)」
URL:http://www.unfpa.org/gender/faq_gender.htm

ジェンダーは、属性や機会である。

・欧州委員会(EUの執行機関) 雇用・社会・機会均等担当部門作成冊子「100 Words for Equality」(1998年出版)

「ジェンダー / 習得された男女の社会的差について言及する際の概念であり、年月により変化し、それぞれの文化内や異なる文化間で広い変異の幅を持つ。
URLなし

ジェンダーは、差について言及する際の概念である。

・国連環境計画(UNEP) ホームページ「Project Formulation, Approval, Monitoring and Evaluation Manual 13. Annexes 13.1(2000年改訂版)

「ジェンダー:社会的に規定され、形づくられている男女の役割。この役割は、場所・文化により異なり、時間の経過と共に変化する。」
URL:http://www/unep.org/Project_Manual/13.1.asp

ジェンダーは、性役割である。

・国連経済社会理事会 第33会期合意結論 1997/2号(1997年)

「ジェンダーの視点の主流化(Mainstreaming a gender perspective)とは、すべての分野のすべてのレベルの法律、政策プログラムを含め、すべての計画された行動が女性と男性に及ぼす諸影響を評価する過程である。女性と男性が等しく便益を受け、不平等が永続しないよう、女性および男性の関心と経験を政治、経済、社会すべての分野における政策や施策の計画、実施、監視及び評価の不可欠な要素とするための戦略である。最終目標は、ジェンダー平等を達成することである。」
URL:http://www.un.org/documents/ga/docs/52/plenary/a52-3.htm



2. 国連における「ジェンダー」という用語の使用例


・国連特別総会「女性2000年会議」(2000年6月)※1
文書名:成果文書「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ」「第四章 行動綱領の完全かつ更なる実施の達成及び障害克服のための行動とイニシアティブ」

「労働における性別分業の根本原因の一つとなっている固定的な性別役割分担意識の問題に対処するため、幼稚園から小学校、職業訓練、大学に至るまで、ジェンダーに配慮したカリキュラムを開発する。」(67 パラ(d))
「男女平等及びジェンダーに対する前向きな態度や行動を推進するために、とりわけ男性や少年を対象とした男女別の役割や責任に対する固定的な態度や行動を変えることを目的とした政策や施策を実施する。」(82 パラ(j))
「根強い有害な固定概念を払拭するため、女性・男性、少女・少年を対象としたジェンダー啓発キャンペーンや男女平等研修を強化する。」(82 パラ(k))
URL:http://www.un.org/womenwatch/daw/followup/ress233e.pdf
・国連ミレニアム総会(2000年9月)※1
文書名:国連ミレニアム宣言(United Nations Millennium Declaration)
「貧困、 飢餓および病気と闘い、真に持続可能な開発を刺激する効果的な方法として、男女平等 (Gender Equality) と女性のエンパワーメントを促進すること。」(20 パラ)
「平和と安全保障、経済・社会開発、国際法と人権、民主主義およびジェンダー問題(gender issues) など、さまざまな分野において、国会議員の世界的な機関である列国議会同盟 (IPU) を通じ、国連と各国議員の協力をさらに強化すること。」(30 パラ)
URL:http://www.un.org/millennium/
国連「北京+10」世界官僚級会合(第49回婦人の地位委員会、2005年2~3月※1
文書名:第49回婦人の地位委員会でなされた宣言」

「北京宣言・行動綱領の完全かつ効果的な実施は、国際的に合意された開発目標を成し遂げるために必要不可欠であることを強調する。 これには、ミレニアム宣言を含むものとする。 そして、ミレニアム宣言のレビューに関する首脳級会合においてジェンダーの視点を確実に取り入れるとの必要性も強調する。」 (3パラ)
URL(委員会報告書):http://daccessdds.un.org/doc/UNDOC/GEN/N05/346/33/PDF/N0534633.pdf?OpenElement
・第60回国連総会首脳会合(2005年9月)※1
文書名:成果文書

「我々は、ジェンダー平等を実現するためのツールとしてジェンダー主流化の重要性を認識する。この目的のために、我々は、政治、経済、社会のあらゆる分野における政策及びプログラムの企画、 実施、 モニタリング、 評価において、ジェンダーの視点の主流化を積極的に推進することを約束し、さらに、ジェンダー分野において国連システムの対応能力を強化することを約束する。 」 (59パラ)
URL:http://daccessdds.un.org/doc/UNDOC/LTD/N05/511/30/PDF/N0551130.pdf?OpenElement
・国連女子差別撤廃委員会(第30会期、2004年)※2
文書名:(条約締結国に対する)一般勧告第25号「第4条1項 暫定的特別措置」「2. 背景:条約の趣旨と目的」

「(前略) 締結国の義務は、個人による個人的行動を通してだけでなく、法律、法的・社会的構造・制度において、女性に影響を与えている広く行き渡ったジェンダー関係と根強いジェンダーに基づくステレオタイプに対処することである。 」(7パラ)
URL:http://www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/recommendations/General%20recommendation%2025%20(English).pdf


※1:日本政府は、これらの国連会議における文書の採択に合意している
※2:日本政府は、女子差別撤廃条約の締結国として、国連女子差別撤廃委員会の勧告を受ける立場にある


3. 日本政府の文書における「ジェンダー」という用語の使用例


・男女共同参画基本計画(2000年12月閣議決定)●重点課題 2の(2)

「社会的・文化的に形成された性別 (ジェンダー) に敏感な視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開する。」
・防災協力イニシアティブ(2005年1月)

「政策決定への参画、経済社会活動への参加、情報へのアクセスといった様々な面で男女格差が存在するために、女性は災害時に特に被害を受けやすい。したがって、 防災協力の全ての側面においてジェンダーの視点に立った支援を行う。」
・ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ(2005年3月)

「国際協力の分野では、 開発途上国の女性の地位向上に着目した「開発と女性(WID)」という開発アプローチに加え、「ジェンダーと開発 (GAD) 」というアプローチが、1980年代以降重視されるようになった。 GDは、 開発におけるジェンダー不平等の要因を、女性と男性の関係と社会構造の中で把握し、両性の固定的役割分担や、ジェンダー格差を生み出す制度や仕組みを変革しようとするアプローチである。GADアプローチは、ジェンダー不平等を解消するうえでの男性の役割にも注意を払うとともに、社会・経済的に不利な立場におかれている女性のエンパワメントを重視する。

以上。




個人的に最も良いと思う説明


 ジェンダー論的に最も的確であると感じたのは次の説明です。

・欧州委員会(EUの執行機関) 雇用・社会・機会均等担当部門作成冊子「100 Words for Equality」(1998年出版)

「ジェンダー / 習得された男女の社会的差について言及する際の概念

 ジェンダーという視座の意義は、いままで一つの連続体であるとされたsexをsexとgenderに二分し、genderの部分を生物学的決定論から分離=社会的に取り扱い可能にした点にあります。

唯一の連続体という認識においては、女性に女性器があることと、選挙権がない事は一体でした。「女性である→産む性である→仕事は家にある→家の主体は男性にある→選挙は戸籍に基づき、戸籍は家単位に基づく→女性に参政権は不要」が、混然一体だったのです。

そこに切り取り線を入れたところに、ジェンダーの意義があります。

そうして切り取ったものは、全て差別に見えるかもしません。ジェンダーという悪しきものへの義憤に駆られるかもしれません。ですが、だからといって、「ジェンダー=男らしさ/女らしさ=性差別=なくすべきもの」などと捉えたり、「ジェンダーとは、見つけしだい破壊すべきものである」と『思想的な含みのある定義』をしてしまっては、何のために分割線を入れたのかわからなくなってしまいます。

分割線そのものの意義を端的に認めている点で、「差について言及する際の概念」という説明は明瞭です。

以上。

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