時計

「時計」

今日のキーワード「時計」


「over work」


私は年に10回ほどしか外出しない。


これを聞いて


「少ないな・・」、と思う人もいるだろう。


はっきりと言わせてもらう。


余計なお世話だ。


自分の感性で点数をつけるな。


ママの作ったスイートポテト固めて、それをマクラにして寝てな。


人はそれなりの事情を抱えて生きている。


私が年に10回ほどしか外出しないことにも理由がある。


そこんとこわかって欲しい。


(カラカラカラと窓を開ける)


…あの雲を見たまえ。


自由に浮かんでいるように見えるが、実は大いなるルールのもと浮かんでいる。


ルールは「意志」とも言い換えられる。


私は仕事をしていない。


しかし、私も大いなる意志のもと毎日を生きている。


その意志のもとでは


「年に何回外出するか」なんて些細な問題だ。


「あんぱんとジャムパン、どっちが美味しいか」


これと同じくらい些細だ。


A.どちらも米には及ばない。


以上。


うむ。


まぁ、たまに食べると驚かされることもある。


え、パンに。


わかるでしょ、流れでさ、っとに、鈍いわぁ。


(カラカラカラと窓を閉める)


ここで身の上話を一つ。


私は頭の中に仏を飼っている。


これは比喩ではない。


私は、頭の中に、仏を飼っている。


手が6本、足が4本の、顔はアフリカ象。
顔から下は人間の姿をして、ボロ布を身にまとっている。
後ろからはパープルの後光が差している。


その仏が日に数回、多いときは二桁回、私に語りかけてくる。


「とにかく体を鍛えなさい」と。


私はその声に従ってとにかく体を鍛えている。


人間とは不思議なもので、自分で決めたことよりも


自分よりも大きな存在に言われたことを遵守する。


なので私は体を鍛える。


ここでやっと「何故極端に外出回数が少ないか」の理由に辿り着く。


A.ずっと体を鍛えているから


出かけることができるのは


風が強い日か、大雨の日になる。


何も抵抗がない道を歩くのはなんだか気がひけるし、鍛錬にならない。


加えて、人の目が少ない時にしか外出できない。


理由は私の体だ。


身長4m28cm


体重に至っては527kg


度重なるトレーニングの結果、私は人間の限度を超えてしまった。


私が心地よく着れるサイズの服は、この世に存在しない。


うん。


あっ、ははっ、面白い話を思い出したよ。


聞いてくれ。


昔、ほんの気まぐれでね、天気のいい日に外出したんだ。


すぐさま、優しそうなおばあさんに


アイスピックで刺されたよ。


どうだい。


こんな大男が歩き回ることができるのは、


大雨暴風が吹き荒れる台風の日くらいなもんだ。


そんな国なんだよ、ここは。


はぁ。


…すまんね、取り乱して。


ん?これかい?


これはね


特注のG-SHOCkさ。


うん、一昨年作ったんだよ。


私の持論なんだが、動物と人間の大きな違いは


「時間という概念を知っているか」


ここにあると思ってるんだ。


だから私は服が着れなくなっても、時計は着けるよ。


...人間だからね。


さぁ、帰った帰った。


今日はこれから大雨らしいからね。


早く出ないと帰れなくなってしまうよ。


それじゃあ、今日はご苦労。


インタビューなんて初めてだったから緊張したよ。


…申し訳ないけど、なんて雑誌なんだっけ?


…週刊…文春…。


知らないな。


もう俗世のことはほとんどさ、ね。


でもさ、


あなたたちの記事でさ、晴れた日に大男が歩いてもアイスピックで刺されない


そんな国に変えておくれよ。


…任せたよ。


それじゃあ。


あ、ちょっと。


できたらさ


最初のスイートポテトのくだりはさ、


カットしてもらえないかな。


巨人が人の悪口言ってるのは、印象がね。


頼んだよ。

あ、来た来た来た。
仏通信。

うん

腕立てを...2万7000回。

イエス・マム

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そう言って巨人は真顔に戻り筋トレを始めた。


そこからは我々の呼びかけに一切応えなくなってしまった。


本誌ではこれからも取材を継続していくつもりである。

週刊文春特集号
「日本に巨人は実在した!!高田馬場の巨人ハウスに本誌が直撃!!」
より抜粋


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