私の手のなかにあるもの

久しぶりに心を持っていかれた本に出会ってしまって、そしてまた活字を追い求めてココにきてしまいました。酔っています。

柚木麻子さんの『その手をにぎりたい』
なんて素晴らしいんでしょう?感動しました、あまりにも。

舞台はバブル全盛期の不動産業で働く華やかな女性である青子。そんな彼女は高級寿司店で働く同い年の職人に恋をする、、、思い通りにいかない青子のアピールや気持ちとともにバブルは終焉を迎えていく。

柚木麻子節を感じられるユーモアたっぷりの文章たちと、想像するだけで涎が出そうな鮨の表現。滑らかな時の刻みとスルスル体に馴染む文章が心地よかったです。久しぶりに時間を忘れて没頭してしまいました。。

「目の前の手をにぎることはこの先、一生ないかもしれない。でも、こうして互いの時間を交換し合えば、それで十分、相手に関わったといえるのではないだろうか。自分が東京に残った理由がようやくわかった。仕事や恋愛に未練があったわけではない。誰かと強く関わりたかった。誰かの人生に足跡を残したかった。」

—『その手をにぎりたい (小学館文庫)』柚木麻子著


誰かと特別な関係を築きたいというのではなく、誰かの人生に踏み込んで爪痕を残したい。

その良くも悪くも残された痕跡で自分の生や価値を認識する。。私のような破滅的な人との関わり方を指摘されているようで恥ずかしい。それでいて隠し用のない、隠し方を知らない純粋な欲望を美しいなとも思ってしまう。

綿谷りささんといい、女性作家のこの奥深い人間的な泥臭い自分勝手な表現が大好物でたまりません

通い詰めたBOOKOFFでしばいた柚木麻子作品と、未来屋書店で手に入れたピカピカの新品作品がまだ数作残っているのでまた読んでいきたいと思います。

酔いも覚めてしまった
完全に醒める前に眠ります。残りの平日も頑張りましょう。

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