被災地支援①基本を知る
2024年、年明け早々に起きた能登半島地震。
この災害を機にいろんなことを考えさせられました。
心理職としての支援はなんだろう、とか
心理職じゃなくてもできる支援とはなんだろう?と考えていました。
まず第一に、災害はどれも同じというものはありません。
なので、こうしたらこうなる!のようなマニュアルが確立されているわけではないんですね。
なので、支援の基本を知った上で、その状況に応じたケアを、被災者に寄り添いながら地域の人たちとみんなで考えていく、というのがまず大事な姿勢ではないかなと思います。
今回は支援の基本的な基準や指標についてまとめてみました。
心理職ではなくても、支援についての知識は自分が被害にあった時にもきっと活用できると思います。
支援のイメージができたらいいなと思っています。
心理社会的支援の基本、IASC
IASCという、各種国連機関や国際市民団体によって構成される機関間常設委員会が、2007年国連決議を経て
「災害・紛争等緊急時における精神保健・心理社会的支援に関するIASCガイドライン」というものを作りました。
この目的は、
大きなストレスに見舞われた人々の精神保健と心理社会的ウェルビーイングを人道的に支援することです。
ウェルビーイングとは、心身及び社会的に健やかで幸せである状態のこと。
このガイドラインは、今まで「心のケア」という定義が曖昧で誤解を受けやすかった用語を、「精神保健・心理社会的支援」として明確に定義した重要なものです。
日本では、東日本大震災以降に普及しました。
IASCの6原則として
人権及び公平
現地の人々の参加
害を与えない
地域の資源と能力強化に努める
支援システムの統合
多層的な支援
が挙げられています。
ポイントとしては、「連携」「回復力(レジリエンス)」「多層的な支援」で、ここでいう支援とは、簡単にまとめると
誰もが持っている回復していく力を促進することです。
安心や尊厳、権利がきちんと確保され、家族や友達、地域の人同士のつながりがあることで自らが回復していく力を発揮できるということを支援の前提においています。
また、心理カウンセリングなどの専門家による介入はごく一部で、多くの人にとっては別の形で支援が必要、ということも示されています。
例えば、食糧の確保や安全性、栄養面、衛生面、避難所の設置などの生命に関わるサポートや、医師・教育福祉現場での見守りなどが挙げられます。
支援者が守るべき最低基準、スフィアスタンダード
IASCと併せて、その指針の基準となっているのがこのスフィアスタンダードと呼ばれるものです。
これは、被災者の権利に基づいた支援を行うことの重要性を強調しています。
被災者の尊厳ある生活を営む権利
援助を受ける権利
保護と安全を確保する権利
回復に関する決定に自らが参加する権利
公平に援助を受ける権利
などが挙げられ、水や衛生、食糧、居住環境などの技術的な最低基準にこれらが反映されています。
そして、災害によって権利が侵害されやすい子ども・高齢者・障害者への特別な配慮についても触れています。
内閣府や自治体による「避難所運営ガイドライン」にもスフィアが反映されています。
この基準は、現場に応じた支援を臨機応変に工夫し、害の与えない支援をすることにおいて、必須な基準です。
害の与えない支援とは、IASCの原則にも書かれていますが、
たとえ良かれと思ってしたことでも害を及ぼす可能性がある、ということを念頭に入れておくことはとても重要です。
人や状況、地域によっては自分の支援が迷惑になってしまうこともあるかもしれない、ということを知り、そのためにこのガイドラインや基準に従うことで、害のない支援を心がけることができるのです。
過去の災害現場において、時には有害とされるような支援もあり、それらを防ぐためにこのガイドラインや基準が作られました。
まとめ
こういった国が定めた基準や指標を知ることで、支援者としての立ち位置やあり方を知ることができます。
特に、緊急事態の場合や、切迫している状況のときこそ、正しい知識を持った上での行動が必要ではないかなと思います。
被災者自身も、知っておくだけで身を守ることにつながったり、大事な人を守ることができます。
少し長くなったので2回に分けて
次回は、被災者との関わりの基本や、子どもたちの支援についてまとめます。