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ドイツでの滞在許可証の取得が大変すぎて、失業しかけた(後編)

ドイツはワークライフバランスが充実したとてもいい国ですが、事務手続きが非常に遅く、いつも苦労しています。たとえば私は今週、滞在許可証(Ausweis)の更新トラブルのせいで、仕事を失いかけました。

2025年12月末までドイツのゲッティンゲン大学で働けるようになったにも関わらず、2024年6月11日に失効する仮滞在許可証(Fiktionsbescheinigung)しか持っていないという状態が、3か月以上も続きました。前編は下記URLからご覧ください。

4. 滞在許可延長の催促(2回目)

2025年12月末まで滞在するためには、「真の」滞在許可証が必要です。新しい担当者Lさんに必要書類を提出してから3か月経ち、2024年5月13日になっても、まだ滞在許可証が届きません。滞在許可証を受け取れる日を聞くために、Lさんにメールしましたが、1週間経っても返事はありませんでした。

再送信したメールの返事を待っていると、勤務先の人事部から「6月10日までに新しい滞在許可証を提出できなければ、雇用契約は終了します」という警告メールが届きました。これまでの入国管理局とのメールのやり取りや、滞在許可証の審査がまだ続いていることを人事部に伝えましたが、受理されませんでした。あくまでも、滞在許可証または入国管理局(Ausländerbehörde)からの証明書がなければ、失職するようです。

そこで、市役所/入国管理局に行き、総合窓口で状況を説明しました。しかし、「予約が必要です」の一点張り。担当者が音信不通で、面会の予約ができないことも、考慮してくれませんでした。仕方なく職場に戻り、前回のように、ドイツ人の同僚や秘書さんに助けを求めました。しかし今回は、6月になっても、入国管理局からの返信は来ず、電話も繋がりませんでした。

私は最悪の事態に備え、在ハンブルク日本総領事館にもメールで相談しました。残念ながら、滞在許可申請の手続きは管轄外でした。しかし、滞在許可証の申請中である限り、不法滞在で捕まったり強制出国させられたりする可能性は限りなくゼロに近いことがわかりました。

別の用事で訪れた、在ハンブルク日本総領事館

5. 滞在許可証の失効直前

6月10日午前、失職のタイムリミット当日。勤務先の秘書さんが、1時間おきに入国管理局に電話かけても、繋がりませんでした。ゲッティンゲン大学の人事部も同情してくださり、6月11日午前10時までにタイムリミットを伸ばしてくれました

6月10日正午、しびれを切らした秘書さんが「緊急:滞在許可証。雇用契約は2025年12月31日まで。仮滞在許可証は明日まで」というメールを入国管理局のLさんに送りました。私も14時に仕事を切り上げ、ダメもとで市役所/入国管理局に行きました。その甲斐あってか、ようやく秘書さんの電話が入国管理局に繋がり、16時までに市役所に行けば、新しい仮滞在許可証を受け取れることになりました。

15時に市役所に到着。既に部屋の照明は消され、ほとんどの窓口に人気がありません。入国管理局への入り口は施錠されているため、インターホンを押しますが、誰も出ません。総合窓口からも内線で電話をかけてもらいましたが、反応がなかったので、仕方なくメールで開錠を依頼しました。

掃除スタッフのおばちゃん達が鍵を開けて入っていくので、便乗しようとしましたが、予想通り「立ち入り禁止」と言われて断念。結局、15時半になってLさんに会うことができ、2024年9月9日までの仮滞在許可証を手に入れることができました。これでなんとか、失職の危機を脱しました。

ゲッティンゲン市役所の入局管理局オフィス入口

Lさんからは、「6月下旬には必ず滞在許可証が届くはずだから、許可証が届いたら指紋とサインを登録するためにまた来てください」と伝えられました。日本では何度も耳にした「お待たせして大変申し訳ございません」のような言葉は一切ありませんでしたが、Lさん自身も2月中旬には正式な滞在許可証の申請手続きを済ませていたようです。

博士号を持っていれば、滞在許可証をスムーズに取得できると聞いていましたが、少なくともゲッティンゲンには当てはまりません。結局、今回の滞在許可の更新に3か月以上もかかった理由はわかりませんが、とにかく6月下旬には無事に「真の」滞在許可証を受け取れるように祈るばかりです。

6. まとめ

本稿では、ドイツ(特にゲッティンゲン)での滞在許可証の申請および更新方法について、私が経験した様々なトラブルを含めて紹介しました。特に、以下の3点を心に留めておくと、余裕を持って手続きできると思います。

ドイツでの滞在許可証の取得や更新には、3か月以上かかることもある
日本ような、親切で素早い対応を期待しない
困ったらすぐ、ドイツ語を話せる同僚に相談する

今回の経験で、海外で生活する大変さを身をもって感じました。私が日本にいた時は、所属研究室の留学生の家探しや口座開設、電気会社との契約などを何度か手伝いましたが、いざ手伝ってもらう側になると、本当にありがたみを感じました。もし皆さんの周りに、困っている外国人/留学生がいたら、ぜひ優しくしてあげてください。

余談ですが、このような日本とドイツの文化の差は、ドイツのワークライフバランスが世界最高レベルであることに関係していそうです。日本では、お客様ファーストの意識が強く、たまった仕事は残業してでも片づけますよね? 一方でドイツは、店員とお客様は対等関係で、仕事が残っていても基本的に残業や休日出勤はせず、有給休暇は年間30日で取得率はほぼ100%という働きやすさがあります。言い換えると、多少の不便があっても、お互いに理解し合う文化があるように感じます。

最近の日本では働きすぎや人手不足が深刻ですが、日本のサービスが世界最高レベルの品質であることも一因なのかもしれません(もちろん、少子高齢化など様々な問題もありますが)。

本稿が少しでも、ドイツへの長期滞在を考えている方の参考になれば幸いです。気が向いたら、ゲッティンゲンの紹介記事を書くかもしれません。


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