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初心者が、ついて行くべき演奏会③ピアソラ

アストル・ピアソラ(1921-1992)という作曲家をご存知だろうか。生没年だけ見ると随分最近の作曲家だということが分かると思う。2021年に生誕100年、2022年に没後30年を迎え2年連続のアニヴァーサリー・イヤーということで話題になった。

ピアソラはアルゼンチン生まれの作曲家で、タンゴの作曲家として、そしてバンドネオン奏者として有名だ。タンゴは社交ダンスのジャンルの一つでも有名だが、「タン。タタン、タン、タン。タタン、タン」というリズムが特徴のダンスの一種である。バンドネオンは蛇腹がある楽器だがアコーディオンとは異なる。アコーディオンは右手で鍵盤を弾き、左腕の動きで蛇腹を操作するが、バンドネオンは両手のボタンを操作しつつ両手で蛇腹を操縦しなければならない。

ピアソラは、タンゴのリズムを、クラシックやジャズと融合させた曲を多く残した。最も有名なのが「リベルタンゴ」である。

クラシックの演奏会においては、プログラムのアンコールで演奏したり、オール・ピアソラ・プログラムの演奏会で演奏されたりすることはあるが、そこまで頻繁に聴ける曲でもない。

そもそも、ピアソラ自体をクラシックの文脈だけに落とし込んで話をすることについても、賛否があるかもしれないが、とりあえず今回はピアソラをクラシックの演奏会で聴くことの楽しみについて紹介したい。

2022年9月21日、名古屋市の三井住友海上しらかわホールにて、オーケストラ・アンサンブル金沢による名古屋定期公演が行われ、指揮は広上淳一さん、ヴァイオリン独奏は神尾真由子さんによる、「ブエノスアイレスの四季(デシャトニコフ編)」が演奏された。神尾さんは、BS東京で毎週土曜日朝に放送されている「エンター・ザ・ミュージック」で指揮者の藤岡幸夫さんと度々共演されていて、この「四季」もよく見かける。

チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝されていることもあり、卓越した技術力で、特に近代のヴァイオリン協奏曲で定評がある神尾さんですが、ピアソラの音楽との親和性の高さも今回垣間見ることが出来た。

ヴィヴァルディの四季は、特に春の第1楽章が有名なので、あの軽やかな、入学式や卒業式で流れそうなバロック調の音楽を容易に想像できるだろう。しかし、ブエノスアイレスの四季は、ラテン調の、まさに情熱的・官能的、妖艶な音楽である。曲順も、春→夏→秋→冬ではなく、秋→冬→春→夏で、南半球仕様になっている。

ヴィヴァルディの四季のメロディーをパロディとして挿入している部分もあって面白い。また、編曲をした作曲家のデシャトニコフは、弦楽アンサンブルとしてアレンジしており、各所にチェロパートのソロや、弦楽器特有の特殊奏法を散りばめている。

まさに踊り出したくなるような音楽なので、初心者でも楽しく聴ける音楽なのではないかと思い、今回おすすめしたい。


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