2020ドラフト候補④ 大学生野手

一時は開幕しないのかもとまで思っていたプロ野球も、このままいけば6月19日には開幕しそうです。高校野球は都道府県内での独自大会開催が発表されたところもあれば、未開催が発表されたところも。ここに関してはトライアウト開催が発表されてほしいところです。大学野球は秋リーグは行われそうな感じで何よりですが、社会人野球は、アピール場所として最も重要視される、全国クラスの大会がドラフト前にあるのかどうか分からないのが心配ですね。

今回のnoteは大学生野手についてです。大学生ともなるとビルドアップしているのが前提になりつつあり、さらに木製バットでプレーしているので、木製バットへの適応期間に関して考慮する必要はありません。3年目までには一軍である程度は数字を残さないと見切られてしまうという意味では、高校生よりシビアです。なお、高校生野手編と同じように、ポジションごとに選手を挙げて書いていきます。

●捕手

昨年からすでに今年の有力候補として名前が挙がっていたのが、古川裕大(上武大)です。関甲信のリーグでは3年春秋とも打率4割以上を記録し、合計8本塁打。二塁送球も1.80前後の数字を記録する強肩で、腰の回転に依存しないスローイングメカニクスなのが魅力。捕手としては、ただ捕るだけになっているキャッチングであり、フレーミングに期待するような次元ではないのが気になるところです。打撃に関しては、腕の技術でスイング軌道を描こうとしているタイプで、ヘッドが下がり気味なことと、腕で追いかけてしまうからなのか、低めの球に対して脆さを見せます。捕手(を含めたセンターライン)としてはアリですが、打撃重視のポジションとして考えると物足りない打力に思えます。本人はスカウトの前で遊撃守備を披露してたりしてましたが、コンバートされるにしてもセンターラインにはとどまってほしいものです。

球団によっては上位候補との声も挙がっているのが榮枝裕貴(立命館大)です。彼の武器は何といってもバズーカ級の二塁送球で、1.8秒を切るような低弾道の送球は迫力十分。打撃は、インパクトまでの芯の軌道にロスが大きく、スイングプレーンもアップダウンが激しい点、右方向を狙いすぎてるような気配、インパクトの後でトップハンドをかぶせにいくのが早い等、不安な点が目立ちますが、少ない打数ながら打率を残しているところを見るに、当てること自体は巧いのではないかという見方もできます。3年秋までの実績に乏しいため、ドラフトまでにどこまでアピールできるかが重要になってくるでしょう。ただ、プロでも捕手として起用されそうという意味では、打撃には多少、目を瞑ってもらえるかもしれません。

他で面白そうだなと感じたのが立松由宇(立正大)。昨秋の東都で打率4割以上を記録した捕手です。守備面はトップクラスでもないものの、打撃力をプロが評価してくれたら指名までたどり着けるかもしれません。少し芯がUの字になりすぎている気がして、低めのボール球に手を出して三振、といった弱点があるのかもしれず、39打数で6三振と少し高い三振率は気になるところです。直プロを目指すなら、8打数で1三振以上も喫しているのは多いので、変にかち上げようとしすぎず、緩いアッパーを描けるようなスイングにできればなと思います。なお、10打数に1三振ほどなら、かなり良いです。

深尾哲平(関西国際大)の視察のためにスカウトが集結したという話もありますが、関西のリーグで打率3割ほどにとどまっている点と、二塁送球がそこまで強くないという点が引っかかりましたので、名前と動画を挙げるのみとします。関西の大学リーグのレベルを考えるなら、打力アピールする場合だと打率4割は超えないと直プロするには弱いです。

●二遊間

今年の二遊間の候補の中で最も注目されているとなると、牧秀悟(中央大)になるのかなと思います。3年次からすでに強打が注目されていた二塁手です。彼の打撃の特徴は、あまり肩甲骨が動かず、後ろの動きが少ないために前の動きが大きいという点。下半身の使い方等は良いのですが、前の動きが大きいので結果的に開きが早く、上体が開いた状態でインパクトを迎えているため、打球にもう一つ力強さがありません。二塁打は多くても一発が少ないタイプと思います。二塁守備は並ですが、待って捕る場面が多いので遊撃手には向いてないと思います。地肩が強いようにも見えないので三塁手向きとも思いませんし、二塁で使い続けるのがベストじゃないでしょうか。

遊撃手では元山飛優(東北福祉大)が最注目でしょうか。仙台六大学で2度のOPS 1.000超えを記録した強肩ショート。課題としては、肩甲骨が使えず、骨盤の捻りに依存したようなスイングをしているように思われることと、瞬発力がもうひとつ弱く、遊撃手としては敏捷性に欠けることでしょうか。最近は仙台六大学の選手の指名順位が全体的に低めなことは少し気がかりなので、元山も2巡目後半あたりになるのかもしれません。なお、成績を見る限り、春季は打撃絶好調で秋季は微妙という年が2年続いており、不調の原因を把握できているかどうかも大事かなと思います。

個人的に一番注目しているのは矢野雅哉(亜大)です。遠投128m、50m5.9というフィジカルモンスター。捕球と送球とが一体化しているようなスローイングのおかげで、基本的な動きが既にハイレベルなうえに、アクロバティックな守備もできる遊撃手。打撃も、バットを短く持っているので長打が少ないものの、グリップを先行させる打撃ができつつあり、プロで下位打線に置けるぐらいの打力は既にあると思います。本人が、今後は長打力をつけていきたいという意欲を持っているのも好材料。即戦力遊撃手の最前線にいるのではないでしょうか。

彼と同クラスの守備力を持っていそうなのが小川龍成(国学院大)とにかく持ち替えがとても早い。右の肩甲骨をうまく使うことで、余計な力を使わずにスムーズに正確な送球動作へつなげていくことが出来ています。送球への不安が少ないのもあってか、捕球動作のバリエーションが多いのも魅力。ただ、矢野雅哉ほど地肩が強くないので、そこがネックになる可能性は残されています。打撃は大学の先輩である柴田竜拓と似ていて、爪先体重でかなり内股な構え方をするタイプで、下半身の体重移動がうまくいかないリスクのある構え方だと個人的には思っています。リーグ戦の打率も2割強まで落ちてきていますが、逆に言えばここで巻き返せば上位指名は堅いでしょう。

小川龍成と似たタイプとして、瀬戸西純(慶應大)の名前も外せないでしょう。地肩の強さはさほど感じませんが、アグレッシブな遊撃守備は一見の価値ありです。小川や、あるいは矢野雅哉よりも秀でてるのではと思わされるのは、かなりのスピード感を感じさせてくれること。一塁到達タイムに関しても、50mのタイムでは後塵を拝す小川を上回るほどです。打撃に関しては矢野と少し似ていますが、こちらはリーグ戦の最高打率が.275で、昨秋は.129という低打率でした(ただ、四球は多く獲得していて出塁率は.325です)。今年、打撃での成長を証明できれば、指名されることもあるかもしれません。全国大会では打撃成績が好調なので、それが追い風になればよいのですが。

彼らとは少し違うタイプの遊撃守備なのが児玉亮涼(九産大)。とにかく基本に忠実、といった感じで、教科書に載っていそうな捕球・送球をしますが、持ち替えの早さが超一流までは至りません。おそらく、捕球して引き上げていく際にスローイングトップまで引き上げ切らないのが原因ではないかと思われます。とはいえ、ステップの早さがとんでもないことから分かるように、彼の武器は圧倒的な加速力で、右打者で一塁到達4.0秒を切ろうかという速さですから、プロでも売りにできるのは間違いないでしょう。打撃は、右方向の打球を意識するあまり引っ張りきれないタイプ。後脚の股関節の内旋を意識するか、前脚を踏み込む力で骨盤を回すか、どちらかの意識を持てば変わってくるかもしれません。それでも3年春秋を通じ、72打数で3三振は驚愕の数字。攻守ともに一見すると完成されているように見えますが、プロでさらに大きく伸びる可能性を秘めた選手といえるでしょう。

●一三塁

三塁手としては、タイシンガー・ブランドン大河(東農大オホーツク)が面白いかなと思っています。北海道学生野球連盟のリーグで3年春秋とも打率4割を軽く上回るような圧倒的打力。全国大会でも一発を放っています。彼の打撃は、平成中期には一般的だった、両脇を締め気味に構えるフォームで、少し腰を捕手側に捻ってから肩甲骨を引いてトップを作りに行きます。なのでどうしても、速球への対応が遅れてしまうという弱点があります(スイングプレーン自体はとても奇麗です)。下半身の体重移動も十分ではなく、上半身の技術に頼った打ち方です。三塁守備は強肩が光りますが、捕球から送球までのロスが大きいので、俊足なのも生かして外野手転向となる可能性も大いにあると思います。

一塁手では平良竜哉(九共大)の名前を挙げないわけにはいきません。福岡六大学で3年秋までに通算14本塁打、2年秋からは常にOPS 1.000以上を残し続ける異次元の強打者です。まるで坂本勇人(巨人)のようなフォームで、打球を押し込めるタイプ。強いて言うならもう少し、インパクトで後脚が前脚に近づいていくような体重移動ができれば良いかなという印象です。近年は九州の大学リーグ所属選手が上位指名を受けるケースが減っているので、できればもっと全国クラスの相手との対戦が見たいところではあるのですが。なお、遠投116mの強肩で、一塁到達はまずまずの速さなので、こちらも外野手として挑戦できたほうが評価は上がるのではと思います。

虎谷貴哉(亜大)も、3年春秋ともOPS 1.000以上という東都屈指の強打者。少し踏み込んでからの粘りがなく、1、2、3のタイミングで打っているのは気になりますが、スイングそのものはとても奇麗です。四死球も三振もかなりの数ということは、おそらく亜大仕込みのベースギリギリに立つ打撃なのでしょう。前述のタイミングの取り方を考えると、振ると決めたらバットが止まりにくいタイプだと思うので、そこを改善しないと厳しいかなという印象です。元は遊撃手ですが、守備の重圧から打撃を崩した過去があり、プロを見越しての三塁手等に転向するのはリスキー。現実的には外野手へのコンバートでしょうか。

●外野手

入札候補にも挙がっているのが佐藤輝明(近大)です。破壊的とも言える強烈なスイングが魅力で、長身で、身体スペックも高く、筋肉も十分と、こういう打者がプロで1位指名されるんだなという説得力があります。3年春まで3季連続でOPS.900以上を記録する豪打ぶりでしたが、3年秋は.639という極度の不振に。芯がUの字を描くようなスイングで、グリップが先行しきる前に両手首がアンコックしてしまうため、スイングキャンセルが出来にくいタイプ。当初は7打数に1三振ほどのペースだったものが、直近では5打数に1三振ほどまで悪化しており、マークがきつくなってから跳ね返せていないのではと思わされます。三塁も守りますが、スローイング等を見ていると内野手のそれではない気がします。プロで三塁守備ばかり鍛えてもらえるとは思えないので、外野手と考えるのが妥当ではないでしょうか。

既に名前は全国区でしたが、今年に入ってから、上位候補と話題になっているのが五十幡亮汰(中央大)です。彼の武器は何といってもスプリント能力なのですが、昨秋は苦手としていた盗塁も11試合で9盗塁を記録し、実戦で威力を発揮する段階まで来ています。遠投110mと肩も悪くないので、プロでも中堅手として勝負できる選手ではないでしょうか。なお、打撃は少し引手が強く、打ち終わってから一塁方向へ上体が流れていくのは気になりますが、グリップを先行させる意識があり、最後に芯を急加速させる打撃もできるので、想像以上に打てる打者なのではないかと思っています。なお、春は打撃低調、秋は好調というシーズンが3年続いており、春先は身体がキレてこないタイプなのかもしれません。

なお、今年は俊足外野手の当たり年で、並木秀尊(獨協大)小川晃太朗(同志社大)といった面々は、その五十幡も上回るスプリント能力を見せつけています。並木は少し、手首のアンコックが早く、スイングキャンセルしにくそうですが、スイング軌道そのものはとても綺麗で、ある程度の率は残ってくるタイプと思います。小川はスイング軌道がそこまで綺麗ではなく、昨秋は打撃低迷。現在は社会人野球に進むことも視野に入れているようです。丹下大輝(中部大)も、スプリント力があり、リーグ戦での打撃成績は3年春秋とも打率4割以上、特に秋はOPS 1.080という破格の数字なのですが、動画が高校時代のものしかなく、分析しきれていません。情報求む!の状態です。

●おつかれさまでした

今回は少し、一人あたりの分量を増やしてみました。大学生野手は高校と違い、スタメンなら1シーズンで10試合ほど出場するので、結果が良くも悪くも出ますし、好調のシーズンと不調のシーズンとの差も確認することが出来ます。ある程度は身体も出来ていて、木製バットも使用しているので、上位指名ともなれば、3年目以内に一軍定着できなければ少し見込み違いになります。ですので、メカニクスに関しては、慎重に見極めなければならないと思っています。

はい!というわけで本日は大学生野手編でした!大学生野手のことを知れてよかったなー!って方は高評価とnote登録よろしくお願いします!またねー!

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