こんな年は狙い目? 社会人投手。

2013年、12+2人。2017年、6+5人。
これは、過去に不作気味と言われていた年に上位指名された社会人選手の上位指名人数(左が投、右が打)です。なお、「上位指名」は自分の中では3巡目以上の36人を指します。

(※2017年は特に不作年とは言われていませんでしたが、上位指名された投手の多くが振るっていないあたり、清宮・安田・村上で盛り上がりはしましたが、全体で見れば不作だったと思います)

ドラフト指名される選手の全体としてのレベルは年々上がっていますが、それでも4~5年に一度は、谷間のようなドラフトが起きることが確認されており、その年は社会人選手の上位指名が増加する傾向にあります。

12名となると、上位指名36人の3分の1ですから、かなりの人数です。おそらく、社会人野球の選手を知らなければ、今年のドラフトを見た際に、「あの上位指名されてる選手、誰??」となるケースが珍しくないのではないか、と思います。ただし、後述しますが、その状況も少し変わってきているのではないか、と思う節もあります。

今回は社会人投手と、独立リーグの投手にも少し触れられたらなと思っています。それでは、本論へ。

●指名されている投手たち

社会人選手は支配下指名しないといけないルールがあります。5年ほど前までは、上位指名と下位指名との間に大きな隔たりがありましたが、ここ数年は支配下指名と育成指名との間にその隔たりが移ってきているような印象があり、支配下指名でないとダメだとなれば、よほど自信を持ってプッシュできないと社会人選手は指名されないでしょう。

加えて、大卒社会人ともなれば、スカウトは高校生からずっと彼らを視察していることも当たり前に起きているでしょうから、よほどの安定感を一定期間ずっと見せ続けているか、これまでの課題を払拭していると思わせないと、スカウトの心証を変えることは難しいかと思います。

過去3年のうちに指名された社会人投手を見ますと、共通項として
・都市対抗or日本選手権で登板したことがある
・未登板でも、出場そのものは決めている
ということが挙げられます。

基本的には先発メインの投手が指名されるのですが、昨年はリリーフメインの投手が4人ほど指名されており、ドラフト候補として見ていく範囲を広げなければいけないと感じさせられています。なお、身長180㎝は特に境界線とはなっていないです。

なお、最高球速に関しましては、150km/hがひとつの目安になっているものの、左腕は145km/h以上であれば上位指名されることさえありますし、右腕でも150km/h未満で指名されることもあり、絶対的な線引きとはいえません。ただ、右腕で上位指名されるには150km/hは到達しておきたいところです。過去3年間で例外は2019年・中日3巡目の岡野祐一郎(149km/h)だけですので。なお、一昨年・昨年の指名を見る限り、左腕といえど、MAX146km/h以上でないと指名は難しくなってきているようです。

●社会人右腕

以上のことを踏まえ、今年、指名されてもおかしくない社会人右腕たちをピックアップしてみますと、

(今年解禁)
竹本 祐瑛 JR東日本東北
小谷野楽夕 JR東日本
大津 亮介 日本製鐵鹿島
益田 武尚 東京ガス
関根 智輝 ENEOS
吉野 光樹 トヨタ
河野 佳  大阪ガス
前川 哲  日本製鉄広畑

(解禁済み)
鈴木 大貴 TDK
前田 敬太 日本通運
小孫 竜二 鷺宮製作所
吉村貢司郎 東芝
神頭 剛  日本製鐵広畑

太字にしたのは、「上位あるんじゃないか?」という面々です。これを見て「あれ?」と思われた方もいるのではないでしょうか。そう、都市対抗を見る限りでは、上位指名を受けそうな投手はそこまで多くはないだろうと思えてきています。2014年以降、上位指名されてきた社会人投手の最高人数は6人ですが、今年もそのぐらいの人数に収まるのではないか、という印象です(後述しますが、社会人左腕で上位指名が伺えそうな投手もそんなにいない印象です)。

※社会人野手編の方でも書く予定ですが、これも都市対抗の結果を見る限り、上位指名されそうな社会人野手はそんなにいないだろうな、と感じます。2012年以降の10年間のうち9年は0~2名であり、今年もそれぐらいかなと感じますが、2017年のように唐突に5人も上位指名されるケースもありますから、注視していきたいところです。

話を戻しまして。上記の投手たちは、前項で挙げた共通点を満たしています。かつ、今夏の都市対抗だけでなく、前年の日本選手権や、今年の公式戦を見ても、安定した成績を残している投手を多く選んでおります。そうでもない投手も何人か入れましたが、MAXが150km/h以上かつ身長が高い、アームアングルが独特、など、尖った特徴のある投手なのでセレクトしてみました。それでは、太字の投手から順に紹介していきます。

益田武尚(東京ガス) 大卒2年目
身長175㎝ 体重86kg MAX153km/h

一昨年はまさかの指名漏れ。それでも昨年は都市対抗で好投し、リスタートを切ったばかりでしたが、2試合目の登板で脇腹を痛めて降板、今年もなかなか公式戦で先発復帰できませんでした。それでも6月21日に復活の先発登板を果たすと、今夏の都市対抗でも3試合に先発、チームを決勝に導き、上位候補の貫録を見せたかなという印象です。

今年の公式戦実績が少ないため、判断しづらいのは辛いところですが、都市対抗初戦で完封後、その後の2試合、10.2イニングで自責点7というのは少し不安。それでも今年なら1巡目に入ってきそうな気はしています。イケメンなのも良いですね。


吉村貢司郎(東芝) 大卒3年目
身長183㎝ 体重84kg MAX153km/h

昨年後半から驚異的な安定感を手にしていましたが、チーム事情もあって指名はなし。今年も昨年同様、素晴らしい安定感で投げ続けています。3月9日~5月30日まで、6度先発して自責点1という無双状態。都市対抗でも6イニング投げて自責点1という好投を見せました。

例年でしたら、大卒3年目で1巡目というのは考えづらいですが、身長・球速・実績の3つすべて備えている投手なんてなかなかいないですし、1巡目には入ってきそうな気がします。


河野佳(大阪ガス) 高卒3年目
身長176㎝ 体重80kg MAX151km/h

昨年、高卒2年目ながら圧倒的成績を残し、期待されていた投手ですが、今年になってから被安打率が大幅に悪化。都市対抗ではまさかの1イニング3被弾。解禁年度にこの投球なのは辛いところです。球速もあまり出ていませんし、故障している可能性も否定できません。それでも上位指名はされるのかなと思いますが、1巡目は難しいかなという印象です。


吉野光樹(トヨタ) 大卒2年目
身長176㎝ 体重78kg MAX150km/h

今年になってから一気に実績を積み上げてきた投手です。8試合に先発し、ほとんどの試合で6イニング以上投げ、自責点は最大でも2点という安定感。都市対抗の初戦でも先発して好投していましたが、足がつって4イニングで降板、それが唯一の登板となってしまいました。1巡目もあるかなと思っていましたが、さすがに全国大会での登板が少なすぎるのではないかと感じますし、上位指名はされたとしても1巡目は厳しいかな、という印象です。


関根智輝(ENEOS) 大卒2年目
身長183㎝ 87kg MAX150km/h

  • 今夏の都市対抗の決勝のマウンドにも立った投手です。名門ENEOSで今年、何試合も先発のマウンドを託されるほどの信頼感を得ていますが、重厚なENEOS投手陣がいるからという点を踏まえても、最高で6イニングしか任されていないというのは少し不安を感じさせます。平均球速が落ちるのが早いという点を考えても、プロではリリーフになるのでは、と思います。それでも、上背ありますし、ギリギリ上位か?という感じでしょうか。


小孫竜二(鷺宮製作所) 大卒3年目
身長180㎝ 体重85kg MAX155km/h

昨年、大卒2年目にしてMAXを3km/hも更新した遅咲き右腕。四球が少し多めであったり、全国大会での出場が少ないのもあってか昨年は指名漏れしましたが、都市対抗では2イニング無安打投球でした。

今年は4月下旬から先発で7回以降まで任されるようになり、完投勝利も見せて本戦出場を勝ち取りましたが、本戦ではまさかの陽性反応で登板できず、チームも初戦敗退。ただ、全国大会での登板そのものはありますし、激戦地区で好投したのも、150km/h台連発の投球も事実ですから、ギリギリ上位で引っかかるか、下位指名であれ、指名はされるのではないかと思います。四死球の多い登板もまだ散見されるので、そこをどう見られるか次第でしょうか。


他の投手に関しましては、小谷野楽夕は都市対抗でも長いイニングは任されてもらえず、10.2イニングの登板で自責点4と今ひとつですし、大津亮介は初戦で8回・自責点3と好投したものの、リリーフで登場した次戦は2.1回・自責点2と微妙。鈴木大貴は2試合で13.1回・自責点2と結果は出しましたが、大卒3年目という点と、2試合とも3四球と、ボールで圧倒できていなさそうな点とが不安要素でしょうか。

竹本祐瑛は先発で8回・自責点0、リリーフでも無失点ですが、初戦の4四死球に不安を残します。前田敬太は都市対抗直前の好投が光りましたが、都市対抗では5回・自責点3とイマイチ。ただ、8奪三振はさすがでした。神頭剛は高卒5年目・身長187㎝の大型右腕で、都市対抗でMAX151km/hのストレートを武器に好投しましたが、他の公式戦登板を見ると被安打がかなり多く、圧倒するには至っていません。前川哲はこの中では唯一、今夏の都市対抗で登板なしですが、ここ数年で人気を高めている、MAX150km/h以上のサイドスローですし、指名はありそうな気がします(昨年の日本選手権ではリリーフで好投しています)。

後半で簡単にまとめた投手たちは、上位は難しそうとはいえ、支配下で指名されてもおかしくない投手たちなので、注目していきたいと思います。

●社会人左腕

前述したように、社会人の左腕で、上位指名されそうな投手は正直思い浮かびません。MAX150km/h以上の今年解禁投手、入江空(茨城日産)と林明良(エイジェック)は両方とも都市対抗出場ならず、補強でも選ばれずでしたから、指名あるとしても下位でしょうし、都市対抗に出場した投手たちも、先発した投手は今ひとつでしたし、リリーフ中心の投手も多いということを踏まえると、上位確実といえるほどのパフォーマンスは残している投手はいないと思います。そんな中でも、指名候補として挙がってきそうなのが

(今年解禁)
藤村 哲之 東芝
長谷部銀次 トヨタ
加藤 三範 ENEOS
高野 脩汰 日本通運
入江 空  茨城日産
林 明良  エイジェック
片山 皓心 HONDA

(解禁済み)
高橋 佑樹 東京ガス
宮本 大勢 大阪ガス

指名されそうかなと思える投手で言いますと、前述の林・入江に加え、今年4月以降で2度の公式戦完投勝利を挙げ、都市対抗でも3回パーフェクト・6奪三振の好投を見せた藤村哲之。リリーフメインながらMAX149km/hのストレートで押していく長谷部銀次。先発にリリーフにと活躍している加藤三範。正直、これぐらいかなと思います(長谷部も都市対抗の数字を見ると少し危うい気がしますが)。ただ、MAX150km/h以上の左腕なら上位指名されていることを思うと、昨秋の都市対抗にて、7イニング・自責点0に抑えた林明良は、四死球こそ多いですが上位指名ワンチャンあるかもしれません。

昨夏まで、片山皓心の上位指名は不動だろうと思っていましたが、昨秋以降はめっきり出番がなくなってしまい、今夏の都市対抗でも未登板のままチームが敗退してしまい、上位どころか指名そのものが危うい状況です。他の投手に関しましても、支配下指名にふさわしいような投球を見せ続けている投手はいなさそうだなというのが率直な感想です。ただ、球団によっては指名の下の方で名前を呼んでいく可能性に関しては有り得るでしょう。

●独立リーグ

独立リーグの投手はほとんど育成指名なのですが、それでも一部の選手は支配下指名を受けています。共通点としましては、左であれ右であれ、MAX150km/h以上であること。高卒から間もない投手の方が指名されやすいこと。それぐらいでしょうか。本指名の可能性があるとすれば、どちらも今季20歳の、西濱勇星(群馬ダイヤモンドペガサス)と長尾光(武蔵ヒートベアーズ)あたりになってきそうです。

西濱は少し腕を下げ、大勢(巨人)のような角度になっているのはトレンドに乗っている感がありますし、長尾はテークバックの大きめなクラシカルなフォームから力強いストレートを投げ込んでいます。どちらも身長180㎝以上なのも良いですね。果たして、支配下指名はあるでしょうか?

●おつかれさまでした!

今回は社会人投手について色々と考えてみました。最初は10人近く上位指名されるのではないか、と思って都市対抗を眺めていましたが、そこまで多くはならなさそうだな、というのが率直な感想でした。ここにきて高校生の候補にも楽しみな選手が増えていますし、案外、例年通りな振り分けになるのかもしれません。

出来れば今月上旬には社会人野手編も書く予定です。甲子園が終わるまでには書きたいものですね。それではまた次回のnoteでお会いいたしましょう。バイバイ!

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