ドラフト2023③ 社会人選手

あれ、タイトル間違ってない?と思われた方がいるかもしれませんが、今年は敢えてこれでいきます。これまで何年間も、社会人選手について、出来る限り調べ、しかし単に名前を羅列するわけではなく、指名されそうな選手をチョイスしてnoteにまとめてきました。

ただ、そこまで頑張っても、特に社会人野手に関しては殆ど的中していない(そもそも指名数が少ない)という現実に突き当たっていることは認めざるをえません。活躍している社会人選手をピックアップするnoteなら、指名されるかどうかに拘る必要はありませんが、僕のnoteはあくまでもドラフトにかかるかどうかという観点なので、極端な話、「今年は誰も指名されそうにありません」という状況なら、そう書くことになるでしょう。

加えて今年は、大学生投手の選手クオリティがかなり高い年であり、彼らを押しのけて社会人投手が上位指名されるには、会社の事情でも絡んでいない限りは難しいのではないか、と思います(後述するほかの理由もありますが)。それも踏まえ、今回は1つの記事でどちらも書こうと思います。よろしくお願いします。


【社会人右腕】

(上位候補)

まず、過去5年間の上位指名者を見てみましたが、これには明らかな傾向が見られます。大学生投手の上位指名が多い年は社会人右腕の上位指名が減り、そうでない場合は増えます

2018年 大学生投手 9人 社会人右腕 5人
2019年 大学生投手 9人 社会人右腕 4人
2020年 大学生投手  13人 社会人右腕 1人
2021年 大学生投手  10人 社会人右腕 2人
2022年 大学生投手 7人 社会人右腕 5人 ※矢澤宏太は外野手に入れる

大学生投手が10人以上、上位指名されるような年は、社会人右腕の上位指名はかなり少なくなります。加えて、ここ3~4年のNPBは投手の平均球速の上昇が先発・リリーフともに激しく、右腕なら先発でも145km/hは出ていないと、他でかなり補わなければ、活躍するのは難しいですし、リリーフなら148km/hは余裕で出ていないといけないような状況です。

そこまで出力の高い投手は大学生の時点で指名されているケースが多いですし、そこまでの球速があっても大学生の時点で指名されないほど粗が目立つような投手となると、社会人ではなかなか起用されません。短期決戦なので、試合を壊しかねない投手を公式戦で起用するのは難しいからです。

少し話を変えましょう。ここ5年間のうちに上位指名された社会人右腕(17人)を眺めてみた時、

❶MAX152km/h以上が13人
❷全国大会への出場歴がある
❸プロ入り後はリリーフ起用されている投手が多い
❹身長180㎝以上か未満かは特に関係なさそう
❺リリーフ専任の投手は少ない
❻解禁翌年でも出力が高ければ上位指名の可能性がある

以上のような傾向が見られます。❶に関して補足しますと、2020年以降は全ての上位指名社会人右腕がMAX150km/h以上で、MAX152km/h未満はそのうちたった1人だけとなっています。そこにはやはり、❸の事情が絡んでいるのでしょう。リリーフ起用してもはまりそうな出力の高さがない限りは、先発で安定した活躍をしていても指名漏れするケースは少なくありません

これに該当する主な右腕を、解禁翌年までの投手に絞ってピックアップしてみます(MAXは150km/h以上とします)。

権田琉成  MAX152km/h TDK
川船龍星  MAX152km/h 日通
高杉勝太郎 MAX152km/h 明治安田生命
古田島成龍 MAX152km/h 日通
松本健吾  MAX152km/h トヨタ
石黒佑弥  MAX151km/h JR西日本
竹田祐   MAX151km/h 三菱重工west
高島泰都  MAX150km/h 王子

都市対抗前のネットの評価では、古田島・松本・竹田は上位指名が濃厚なのではないかと思われていました。松本はリリーフで6イニング投げて被安打2、奪三振4、四死球1、無失点の好投でしたが、古田島は10回・5失点、竹田は3.2回・5失点と結果を残すには至らず。古田島は都市対抗前の公式戦ではかなりの好投を見せていましたし、都市対抗の2戦目では好投していましたが、竹田は都市対抗前から被安打が多く、都市対抗でもKOされてしまったため、少し評価が難しくなってしまったかなと思います。

彼ら3人以外はといいますと、高島は10回・1失点。高杉は5.1回・1失点。石黒は7.1回・3失点。権田は出場しておらず、川船はチームは出場しましたが自身の登板はありませんでした。高島・高杉・石黒に関しては結果を出したかなという印象ですが、高島・石黒に関しては投球をリアルタイムで見る限りでは、打者を剛球で制圧するというような投球ではなかったため、評価は分かれそうです(高杉は見ておりませんでした)。

現実的に申しますと、上位確定かなと思わせるような右腕は正直、思い当たらないなという感想です。昨年のドラフトはここ数年の中では最も人材難に近い年でしたが、圧倒的なボールはないまでも、イニングを食い続ける、いわゆる社会人エース型の右腕の上位指名はありませんでした。

松本はリリーフで出てきても150km/h以上のボールでグイグイ押し続けるような投手かといわれるとそうではないですし、古田島も似たような投球をします。両者とも3-4巡目かなという印象で、3巡目でも驚きはないですが、上位から漏れても驚きはないです。

(下位候補)

下位候補というと響きは悪いですが、2020年ごろから、支配下指名の重みが格段に上がっていますので、育成指名が許されていない社会人に関しては、かなり分が悪い状況になっています。この順位となりますと、大半がリリーフ要員ですが、同じぐらいの出力のリリーフなら独立リーグの投手を育成で指名しても良いわけです。そんな中、支配下で(しかも安くない契約金と年俸を払って)社会人選手を指名するのは、なかなか重みがあります。

先程、2020年という年を出しましたので、2020年から2022年までの3年間のうちに下位指名された社会人右腕(10名)について見てみますと、

❶全国大会に出場している
❷10人中、8人がMAX150km/h以上
❸リリーフ専任でも指名される
❹サイドスローだと指名されやすさが上がる
❺解禁からかなり経っていても指名される場合がある

この辺りを踏まえつつ、候補者を挙げてみますと、

古屋敷匠真 MAX154km/h セガサミー
中﨑響介  MAX152km/h 明治安田生命
関根智輝  MAX152km/h ENEOS
嘉陽宗一郎 MAX152km/h トヨタ

この辺りかなと思いました。人数が少ないように思えますが、先程、上位指名あるかも?という8名を挙げましたので、彼らがスリップして下位に来ることを思うと、こんなところかなと思います。サイドの剛腕で、年齢もそこまで高くない投手を探してみましたが、30歳ぐらいの投手が多く、指名はないかなと思いましたのでここには載せておりません。

古屋敷は都市対抗に至るまで、今年の公式戦では先発もリリーフもこなし、30回・5自責点(防御率1.50)と好投していたのですが、都市対抗では1.1回・3自責点というまさかの炎上。ただ、150km/h以上のボールを連発しており、スピードに偽りはありません。
中﨑は今年の公式戦で8.1回・無失点、都市対抗でも1回・無失点でした。イニングに迫る奪三振を奪っていますが、四死球が少し多いのは気になるところです。
関根は昨年もドラフト候補になりましたが指名はなし。プロ入りの意思があるかは分かりませんが、今年の都市対抗では6.2回・2自責点・11奪三振の好投。下位でもOKなら狙い目かもしれません。
最後に、希望込み込みで嘉陽。もう既に社会人6年目ですが、今でも先発で平均145km/h以上の投球をし、150km/hも投げれます。難しい話なのは承知のうえですが、プロで見てみたくないと言えば嘘になります。

気になって調べてみましたが、2008年に現行ドラフト体制に移行してから昨年に至るまで、社会人右腕が上位指名されていない年は一度もありませんでした。今年もし誰も上位指名されない場合、初めての出来事になります。

【社会人左腕】

社会人左腕の上位指名に関しましては、主に球速が問われます。まだまだアマ野球の左腕で、公式戦で先発して好投を重ねつつ、MAX150km/h以上の速球を投げる投手となりますと稀少なので、上位指名されることが多いです。

それを踏まえたうえで今年の候補を見てみますと、解禁年度およびその翌年の先発左腕で、MAX150km/h以上の投手となりますと見当たりません。解禁年度で最もMAXの速い左腕となりますと、MAX148km/hの井奥勘太(パナソニック)の名前が挙がりますが、昨年の日本選手権の登板を見る限り、ほとんど140km/hを超えるような球は投げませんので、上位指名されるようには見えません。今年は大学生左腕も厚い年ですから、無理に社会人左腕が上位にねじ込まれることもないでしょう。

下位指名候補となりますと、151km/hを記録したと話題になった平元銀次郎(日通)が指名有力でしょうか。今年は序盤は先発、途中からリリーフに回り、都市対抗でも無失点投球。その都市対抗では奪三振なし、四球多めになってしまいましたが、本来は三振もそれなりに奪いますし、四球も少ない投手です。

他の投手に関しましては、これも2020年以降に下位指名された社会人左腕を見てみる限り、MAX147km/h以上から指名圏内に入ってくるようなので、MAX147km/h以上の社会人左腕を探してみましたが、解禁年度の左腕ですと、前述の2人以外は特に出てきません。解禁済みの左腕であれば、おそらく昨年時点で指名されていたはずですから、今年は指名されたとしても平元だけ、という年になるかもしれません(そもそも毎年、下位で社会人左腕が指名されているわけではないので)。

※補足
2020年、伊藤将司(阪神2巡)がMAX146km/hで上位指名されるという出来事がありましたが、かなりのレアケースです。このMAXで指名されることも、さらにいえば上位指名されることも、ここ5年間で見れば異例です。そして、伊藤投手がプロ入り後、ずっと先発で140イニング前後を投げ続けていることもまた、活躍する選手を予測するのが難しいということを教えてくれます。

【社会人野手】

はい、ここでやっと折り返しです。以前のnoteで、社会人野手の指名順位分布を調べたことがありますが、ここ3年間の間に上位指名された社会人野手が2名のみ(水野達稀・中村健人)ということを考えると、そもそも社会人野手が上位指名されるのは稀であると判断せざるを得ないと思います。

理由としましては、大学生野手の市場人気が上がっていることや、NPB一軍のボールに対応できるかどうかは社会人野球で活躍していても判断がしづらいことなどが挙げられると思います。大卒なら2年間を二軍調整に充てても3年目で花開けば問題なしですが、特に大卒社会人野手ですと、2年も一軍レベルに達せないのであれば少し厳しい目で見られてしまうでしょう。

指名されているのは、たまの例外もありますが、センターラインの野手(もしくは社会人レベルでセンターラインの守備に就かせてもらえるだけの野手)です。言葉は悪いですが、打てなくても守れるからOKという感じの野手が多いです。そのため、下位でローリスクに指名できる野手の指名が多いように思います。どの球団にとっても欲しい選手というより、その球団にとっては(主にバックアップの意味で)必要だという選手が指名されている印象です。

こちらとしては、都市対抗などで打ちまくっているような若い野手が指名されたら嬉しいのですが、そういう選手は所属先の企業でも大事な選手ですから、〇位以上でないとプロにはやれないという形になっているほうが多いでしょう。プロ側としては、わざわざ高い順位を使ってまで指名したくないケースの方が多いでしょうから、それなら下位指名OKの選手の中から指名するか、となるのも頷けるところです。それではポジション別に。

(捕手)

過去3年間の指名はなく、4年前に柘植世那(西武・5巡)が指名されたのが最後です。社会人野球で、入社早々の捕手がいきなり正捕手というケースは殆どないため、指名されるのはかなり稀です。

今年、指名がもしあるなら、久保田拓真(パナソニック)でしょうか。2年前にもドラフト候補であり、今年は都市対抗予選から人が変わったように打ちまくって、都市対抗でも長打を含む2安打を放ちました。あとは拾尾昌哉(三菱重工West)。高卒4年目の捕手で、今年は殆どの公式戦で結果を残し、都市対抗でも長打を放ちました。ともに、下位なら指名あるかもしれません。

(二遊間)

過去3年間で6人も指名されており、社会人の中でも指名されやすいポジションです。

解禁年度の選手で候補となりそうなのは、5月以降の公式戦で打撃好調を維持しており、守備も上手い中川拓紀(HONDA鈴鹿)、打撃では都市対抗予選以降で結果を出せませんでしたが、セカンドもショートもしっかり守れる武田登生(日本新薬)、都市対抗では苦しんだものの、それ以外の公式戦では打撃好調だったセカンドである木村翔大(日通)、高卒3年目ながら名手級の遊撃守備を見せ、都市対抗でもヒットを放った相羽寛太(ヤマハ)などでしょうか。

解禁済の選手も含めるなら、今年も打撃好調の瀬戸西純(ENEOS)が指名される可能性もあると思います。

なお、一三塁の選手に関しては指名されていないので割愛します。今は一三塁だが、二遊間も守れるというのであればワンチャンあるかなとは思いますが…。

(外野手)

過去3年間で5人が指名されています。両翼しか守っていないというケースはほとんどなく、大半はセンターで何試合も出場していた選手です。

おそらくセカンドではなく、ここに入ってくると思いますが、昨年から1位候補と言われている度会隆輝(ENEOS)の名前が最初に挙がるでしょう。まだ高卒3年目で伸びしろ十分。ここ3年で上位指名された社会人野手2人のうちの一人、水野達稀も高卒3年目でしたし、度会も上位指名は堅いかなと思います。
強いてマイナスポイントを挙げるなら、昨秋の日本選手権および今年の都市対抗であまりに打てなかったことと、ポジションがライトという点が挙げられますが、3年後のコア野手候補という観点で見れば特に致命的とも思えません。球団によっては1巡目を使ってくる可能性もあるでしょう。

他で言えば、5月以降の公式戦で4番に座り、豪打連発した山内慧(JR東日本)の指名もあるのではないかと思います。今はライトですが昨年はセンターも良く守っていました。ガタイが凄いですが足も遅くないのは◎。今川優馬(日本ハム)のような選手になれる器かなと思います。下位で指名できれば良い補強になりそうです。

解禁済の選手で言えば、昨年以上の打撃成績を残しており、都市対抗でも4打数3安打の三井健右(大阪ガス)が気になりますが、ポジションがレフトのため、指名があるかどうかで言えば際どいところだと思います。

【おつかれさまでした!】

今回は投打まとめて社会人候補のnoteを書いてみました。野手に関してはかなり人数を絞りこんだため、書いていない選手が指名されることも十分ありそうですが、彼らを当てに行くなら今度は書く名前が多くなりすぎるので、今年はこれで行きたいと思います。

季節は8月。ついに甲子園の季節、ということで、次回はついに高校生投手編です。夏を迎え、景気の良い数字を出してくる投手も増えてきました。読み応えのあるnoteに少しでもなれば、と思います。それでは、またねー。

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