ドラフト2023⑤ 高校生野手

これまで4本、ドラフト2023に関するnoteを書いてきましたが、今回でひとまず区切りです。今年のドラフト戦線で上位24人の中に多く入ってくるのは、大学生投手と高校生野手だと思っています。それでは本論へ。


【上位指名候補】

高校生野手は2017年以降ですとほぼ毎年、7~9人ほど上位指名されています。例外は2021年で、この年は大学生野手が10人も上位指名されたこともあり、5人にとどまりました。ただ、上位指名ではなかったことが驚きだった選手となると阪口樂(ハム4巡)ぐらいでしたから、妥当と言えば妥当。今年は上位候補とされる高校生野手が多い年ですから、おそらく、7~9名が上位指名されるのではないでしょうか。

現在、「上位指名候補」と記事やスカウトが言っている高校生野手は6名おりますが、そのうち4名が一塁手という、いまだ見たことのないような年となっています。今年の高校生スラッガーを、清宮幸太郎・安田尚憲・村上宗隆と比較する意見もよく見かけます(僕もしたことがあります)が、当時の彼らは全員違うポジションでした。こんなに一塁手スラッガーが同じ年で重なることは、もうしばらくないかもしれません。

前置きはこのぐらいにして、この6人について動画付きで取り上げてみます。

佐々木麟太郎(花巻東)

1年生のころから話題になっていた、和製プリンス・フィルダー。高校通算140本塁打という凄すぎて意味が分からない記録を更新中で、場外になるかどうかという見方で評価されるような猛烈な飛距離のアーチを数えきれないほど叩き込んでいます。1年生のうちだけで公式戦12本塁打して以降は、故障もあって公式戦でのホームランペースは鈍っていますが、飛距離は鈍っていません。三振が少ないことも高評価ポイントでしょう。

ドラフトにおいてネガティブに見られそうなのは、50m6.9・遠投90mという点を見てもおそらく一塁以外は守れない(一塁守備は上手い)ことと、故障が少し多いことでしょうか。甲子園経験は少ないですが、神宮大会で2本塁打を放ったり、愛工大名電・東邦との練習試合で合計4発を記録したりと、全国相手に歯が立たないわけではありません。何球団競合するかという観点で語られる選手だと思います。

真鍋慧(広陵)

1年生の頃から名前が全国クラスだった広陵の主砲。「広陵のボンズ」という異名がありますが、フォームは村上宗隆に近いかなと思います。身長189㎝という長身ながら、50m6.3、遠投105mと身体能力もまずまずなのは魅力。まだホームランこそないものの、甲子園で常に好成績を残していますし、神宮大会では26打数13安打・3本塁打と、全国クラス相手にも結果を出し続けているのは魅力だと思います。

身体能力が低いわけではないので、プロ入り後に三塁や両翼にコンバートされる可能性は、他の3人の一塁手と比べると高いのではないかと思います。三振も少なめですし、1巡目は堅いのではないでしょうか。もしかしたら入札に踏み切る球団も出てくるかもしれないですね。

佐倉俠史朗(九州国際大付)

彼もまた、1年秋に出場した神宮大会でホームランを叩き込んだ一人です。バットを垂直に高く掲げるフォームが印象的でしたが、今夏はかなりオーソドックスなものに変えており、ストレートに振り遅れなくなってきました。三振は上記2人に比べると少し多いですが、問題になるほど多いわけではありません。

重量級の体型のとおり、50m6.6とそこまで足があるわけではなく、一塁しか守れない可能性はあります。佐々木ほど驚弾を叩き込みまくっているわけではないですし、思ったほど指名順位が高くならない可能性もあるでしょう。2-3巡目かなと思いますが、4巡までスリップする可能性もなくはないと思います。ただ、ドラフト前はそこまでかな、と思っていた村上宗隆も外れ1位競合でしたから、佐倉も想像以上に高評価を維持しているのかもしれません。

明瀬諒介(鹿児島城西)

とんでもない打球速度のホームランを記録する、鹿児島のバレンティン。上記3人のように1年次から話題だったわけではなかったですが、2年秋から、3試合連続アーチなどで評価を上げ、上位指名候補との記事が出るほどになりました。マウンドに上がるとMAX152km/hのストレートを投げ込んでくるなど、強肩も魅力のひとつです。身長184㎝なのも◎。

50m6.7と、彼もあまり足は速くありませんが、肩が強いので、三塁を守らせてもらえる機会はあるのではないかと思います。ただ、上記3人と違い、全国クラス相手との対戦はありませんでしたから、二軍で全く話にならないかもしれないというリスクを孕んでいます。去年の内藤鵬(オリックス2巡)のように、2-3巡目の指名になりそうと予想します。動画のような驚弾をプロでも見てみたいものです。

堀柊那(報徳学園)

地を這うような爆速スローイングを見せる堀キャノン。その肩だけでも存在感がありますが、公式戦通算打率は4割を超え、二塁打も数多く、50m6.1と足も速い選手です。ホームランはそこまで多くありませんが、非力な選手ではありません。センバツでも20打数8安打、三振2個という好成績でした。

高校生捕手はこちらが思う以上にプロ側が高い順位をつけることが多々ありますし、2巡前後での指名と予想します。松川虎生や松尾汐恩のように入札までは行かないかなと思いますが、プロスペクト捕手を必要としている球団なら、もしかしたら動いてくるかもしれません。

横山聖哉(上田西)

捉えた時の飛距離が凄まじい左のスラッガー。遊撃手としては少し足が遅い(50m6.3)ですが、公式戦でMAX149km/hを記録するほどの強いスローイングができ、三塁手や右翼手へのコンバートも将来的にはありそうです。上位指名あるかもしれないと日本ハムのスカウトがコメントした時は少し疑ったものですが、夏予選で6本の長打を放って甲子園出場を決め、甲子園でもヒットを放つという猛アピールを見せ、上位候補ここにありという印象を与えてくれました。

全国相手の実績に乏しいという点で、少しアピールが弱い面はありますが、一塁以外でも確実に起用可能という点で言えば、今年の上位候補スラッガーたちとも互角に渡り合えると思います。具体的に言えば、DHのないセ・リーグの球団であれば、一塁専うんぬんを考えなくていいぶん、前述の4人より横山を高評価するかもしれません。2巡前後の指名はじゅうぶんありそうですし、場合によれば外れ1巡まであるかもしれないですね。

おそらく、この6人は上位指名確定なのではないかと思います。続いて、各ポジションの他の選手について触れます。

【捕手】

堀以外であれば、強肩を兼ね備えた大型スラッガー・近藤真亜久(星稜)や、低いセカスロが売りで、甲子園でもヒットを放った鈴木叶(常葉大菊川)、U18候補にも選ばれた寺地隆成(明徳義塾)、今夏は不慮の故障で出番は少なかったですが豪打が自慢の豆タンク捕手・坂根葉矢斗(履正社)あたりが指名候補になってきそうです。ただ、そこまで圧倒的なパフォーマンスを見せている捕手は、堀を含めても居ないように感じますし、プロ志望するのがどういった面々になるのかもまだ分かりません。

ただ、高校生捕手というジャンルは案外、4巡目あたりという高めの順位で指名されることも少なくないため、志望届が出揃ったあたりで再度チェックしてみようと思います。なお、過去の高校生捕手を見ていますと、「捕手」として評価される選手も多い反面、ポテンシャルが評価され、コンバート込みで指名されているケースが多いため、足の速さも見ておく必要があります

【一三塁】

今年は一塁手スラッガーが目立つ年だというのは既に触れましたが、一塁手ではもう1人、仲田侑仁(沖縄尚学)に触れないわけにはいかないでしょう。甲子園でも2本塁打を放った、186/96の大型スラッガー。50m6.7は致し方ない数字ですが、右打者で一塁到達4.4秒を記録したこともあるようで、動けない選手ではなさそうですし、三振も少なめ。上位候補云々の扱いをされている報道はありませんが、上位で一塁手スラッガーの指名に失敗した球団が、代替で4巡前後を使って指名してくる可能性は少なくないと思います。

あとは、一塁手としてカウントしていいのか微妙ですが、武田陸玖(山形中央)も注目株。左投手としてもMAX147km/hという、高校生左腕としては支配下指名クラスの数字を持っていますが、打者として、山形や東北では2年次から無双し続けており、こちらの評価のほうが高くなりそうな気がします。50mは測ったことがないとの話ながら、30mでは3.85とのことで、これはかなりの脚力(公式戦でも中堅手として出場経験あり)。身長174㎝とあまり大きくないことと、甲子園出場を逃したことで本人はプロ志望するかどうか迷っているようですが、届を出すなら、こちらも4巡前後での指名はありそうです。

三塁手では、昨秋から本塁打量産の森田大翔(履正社)の評価が気になります。昨秋大阪大会で4本塁打、今夏大阪大会で3本塁打、甲子園でも2本塁打の大暴れ。三塁手としても守れていますし、180/77、50m6.4とフィジカルスペックも問題なさそう。プロ志望かどうかは分かりませんが、届を出せば3-4巡での指名まであると思います。三塁を守れるというメリットは大きいでしょうから。

【二遊間】

横山聖哉以外での二遊間となりますと、50m5.8という快足と、パワフルなスイングが売りの百崎蒼生(東海大熊本星翔)が、現状ではプロの評価が高そうだなと思います。今夏は地方予選と甲子園、どちらも高打率で、長打も合計4本でした。フォームに粗さが残る点と、178/74でまだ少し線が細い点は気になりますが、4巡前後の評価は貰えるのではないでしょうか。

その次となりますと、2年連続で夏の甲子園決勝に進出した仙台育英の山田脩也が挙がるでしょうけど、守備は一級品で50m6.1の足があるとはいえ、身体もまだ細く、打撃も圧倒的ではないとなると、そこまで高い評価は得られないのではないかと思います。プロ志望とのことですが、育成でもOKかどうか気になるところです。高卒ショートはポテンシャル重視ですので、技術よりもフィジカルスペックと長打力が評価に直結する印象です。

【外野手】

ここまで書いてきて、書き忘れたことに気づきましたが、ここ5年間の高校生野手の上位指名人数を、ポジションごとにまとめます。1巡目の選手は個人名つきで。

捕手:5人 松川虎生 松尾汐恩
一三:9人 井上朋也
二遊:14人  根尾昂  小園海斗 太田椋  森敬斗 イヒネイツア
外野:10人  藤原恭大 吉野創士 浅野翔吾

一番多いのは二遊間ですが、実は外野手もかなり多いです。外野手で上位指名となりますと、ほぼ全員、打撃に秀でた選手です。ただ、50m6.5より遅い選手はさすがに圏外になっているようです。

プロ志望かどうか分かりませんが、届を出せば高評価をうけそうなのが萩宗久(横浜高)。185/84の恵まれた身体を持ち、50m6.0とスピードもあり、豪打が魅力となれば、上位に食い込んでくるだけのものがあると思います。夏予選は決勝で敗れましたが、打率.318、2本塁打を含む4本の長打を放ち、三振は1個だけでした。今後の進路に注目です。

今夏の甲子園出場組で言えば、松本大輝(智弁学園)が気になります。182/90の肉体、50m6.2のスピードを持ち、奈良大会で打率.625で4本塁打、甲子園では打率.385で本塁打も放ちました。OBの前川右京よりワンランク上に見える選手で、その前川が4巡目だったことを踏まえると、志望届を出せばワンチャン3巡目もあるような評価を受けてもおかしくありません。志望届を出すなら、ということでいえば丸田湊斗(慶應)も、シャープな打撃に加え、50m5.9の俊足で、高打率を残していますが、身長175㎝前後ということもあり、指名されても下位かな、という印象です。

甲子園未出場組では、平田大樹(瀬田工)に注目しています。身長181㎝で、50m5.9の俊足。しかし彼の最大の売りは足ではなく、夏予選では2試合で本塁打を含む3本の長打を放つ左のスラッガーです。さすがに上位云々ではないと思いますが、支配下指名が期待できる選手ではないか、と思っています。

おつかれさまでした!

甲子園決勝が終わってから書き上げてもよかったのですが、少し早めに書き終えました。大学生野手でもプロの一軍に対応するまで3年ほどかかることが珍しくないこともあり、ポテンシャルの高い高校生野手の市場人気は上がる一方です。

次回は上位指名予想をしてみようと思います。まだまだプロ志望届も出揃っていない時期なので、様子見な感じになると思いますが、現時点での予想ということでよろしくお願いします。それでは、また!

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