ドラフト2021~高校生野手編~
季節は春先から初夏へと移り行き、野球日和な気候になってきています。先日は久しぶりにドラフト候補についてのnoteを書きました。高校生のドラフト候補について記すにはまだまだ早い時期ですが、現状おさえておくべき名前ということでご理解ください。
第2回目の今週は高校生野手編です。最初に断っておきますが、今年に関しては高校生野手で、1位戦線を賑わすようなビッグネームはほとんど出てこないんじゃないか、と今のところ思っています。それでも、楽しみな選手は少なからずいますので、ポジションごとに紹介していきます。それではー、れっつらごー!
●捕手
捕手に関しては、高木翔斗(県岐阜商)と松川虎生(市和歌山)の2人が軸になるでしょう。高木翔斗は昨夏から4番を打ち、186/88という恵体が魅力。反面、遠投95m、50m6.8、セカスロ2.0秒前後という数字には物足りなさがあります。キャッチングにそこまで柔らかさは感じず、フレーミングはもうひとつ鋭さが足りず、ブロッキングは時折甘いときがありますが、雑な印象はないので、愚直に練習に取り組めば上手くなっていくのではないかと思います。
インパクトの際に右脇腹の締めが甘く、少しダウンスイング気味のフォームなのも気になるところですが、フォームそのものは要所を押さえていて悪くないと思います。東都大学野球でいきなり4本塁打という先輩の佐々木泰(青学大)ほどではないにしても、九鬼隆平(ソフトバンク)ぐらいの打撃力はあるのではないでしょうか。
松川虎生は178/98のドカベン体型。見た目通り(?)50m6.9とそこまで俊敏ではないですが、遠投110mでかなり地肩は強いです。ただ、少し投げ方に課題がありそうで、二塁ベース前でワンバウンドする送球が多いのかなという印象。キャッチングはフレーミングをあまりしないタイプ。ブロッキングは未確認。ただ、こちらも雑なタイプではないので、今後の取り組み次第かなと思います。
打撃はグリップを高く上げ、捻りも少し大きめなのは気になりますが、体重は後脚に残らず前に加重できていますし、何より、スイングプレーンが両肩ラインと平行で安定しているのと、ボールを捉える能力に長けていて変な打球がないのが良いですね。金属バットは木製バットと重心位置や重さが違うので、高校生野手がプロ入り後の数年でフォームが変わるケースは珍しくないですから、高校段階ではフォームが多少悪めでもコンタクト能力が高ければ問題は少ないと思います。
他の候補について、何人かは動画も見てみましたが、特にコレ!と響いてくる選手はいませんでした。夏に再度、探してみます。
●内野手
今年のショート最注目は大塚瑠晏(東海大相模)になるかと思います。遠投95mと地肩はそこまで強いわけではないですが、50m6.0・一塁到達タイム4.0前後はまずまずの速さ。そして、持ち替えがとても早く、少しボールを収め損ねてもbetterな動きが出来る遊撃守備が最大の武器。守備だけで見れば昨年の土田龍空(中日)や一昨年の上野響平(日本ハム)と同レベルだと思います。
打撃は東海大相模にありがちな低重心フォームで、下半身の体重移動があまりなく、脇腹も使いきれておらず、現時点ではあまり期待はできなさそう。関東大会での打率がまだ3割を超えたことがないところからも、レベルの高い相手には通用しきれないのかなと思います。ただ、守備だけで上位指名される可能性はあると言えるでしょう。
他のショートで言えば、中村碧人(宮崎商)は50m6.8なのが気になるものの、自然な緩いアッパー軌道を描くスイングプレーンで、かつ、コンタクト能力があるためか変な打球がなく、守備でも柔軟な球際処理が目立ち、面白い存在だと思います。宮下朝陽(北海)にも期待していましたが、センバツでは5打席で無安打、3三振とアピール失敗。ドラフトでの立ち位置で言えば昨年の入江大樹(楽天5巡目)と似たところにいると思いますが、もう少し肩甲骨が動いてくるような打撃や守備ができてこないと、直プロは目指しづらいかもしれません。
ショート以外のポジションで言いますと、恐らく今年の中でもNo.1の評価を受けそうな阪口樂(岐阜第一)の名前が挙がってきます。186/90という恵体から、左へ右へホームランを放つ怪童。リーチの長さを活かした、一見すると力感がなくてもヘッドの走らせがすさまじいスイング。とにかく打球の伸び方が半端ではないその打棒は大谷翔平(エンゼルス)や佐藤輝明(阪神)を髣髴とさせます。とはいえ、昨秋の東海大会では10打数ノーヒットという結果に終わるなど、まだまだ課題もあります。果たして今夏はどこまで成長しているでしょうか? ちなみにポジションは一塁に加え、三塁や右翼にも挑戦中です。
三塁手では山下陽輔(智弁学園)が面白そうです。175/86という体格から、うまく脇腹を使い、自然と緩いアッパースイングができています(捕手側の脇腹を締めてインパクトに向かえないとダウンスイングになりやすいです)。踏込み足がまだ踏ん張り切れてないのは課題かもしれませんが、余計な捻りが一切なく、肩甲骨もうまく使えてる方でしょう。ガンガン振っていくタイプではなさそうなのもありますが、際どいボール球を平然と見送れる選球眼も魅力です。遠投100mなのでサードとして出れるだけの地肩はありそう。昨年で言えば佐々木泰(県岐阜商)のような立ち位置でしょうか。この手のタイプはさほど目立たないうちに進学を決めるパターンもあるので、今後の動向に注目したいです。
他で言えば、この山下陽輔を少し粗くしたようなタイプの渡辺大和(高野山)や、一塁専任ながらかなり良いスイングをしている前田健伸(大阪桐蔭)も気になるところです。
●外野手
今年は昨年の来田涼斗(オリックス)のような目立った存在はいないものの、有望な選手が多く集っています。外野手はセンターであれば守備走塁も問われますが、両翼はとにかく打ててナンボなので、打力がないと話になりません。
昨年から良く名前が挙がっていたのが前川右京(智弁学園)。1年秋の奈良大会で5試合4ホーマーと大爆発して脚光を浴びますが、今のところ、その活躍がピークになっています。今は本人も語るほどの不調で、今春のセンバツでは10打数2安打に終わりました。フォームは松山竜平(広島)と似ていますが、打てている時でさえ、引っ掛けたゴロが目立つなどコンタクト能力には今ひとつ疑問符ですが、センバツでもあわやホームランという大飛球を放つなど、一発の魅力は失われていません。足や肩にポジティブなスペックはないので、とにかく打てるかどうかがカギなのですが、ここから夏が終わるまでに巻き返せるか注目です。
同じく、良く名前が挙がっていたのが徳丸天晴(智辯和歌山)。1年春から同校の4番を任されていた選手です。今は少しフォームが変わっていますが、2年夏のフォームはかなり良いですね。右脇腹を締めてインパクトに向かい、うまく側屈できていて、まるで坂本勇人(巨人)のような綺麗な縦振りができています。今は右翼手から、プロも見据えて三塁手に挑戦しているということで、もしかしたら三塁手として指名されるかもしれません。
同じ右打者の、池田陵真(大阪桐蔭)も注目の一人。スイングプレーンが肩と平行で滑らかですし、投球のラインにバットの芯を入れるのがうまく、質の高い打球を連発します。ガッチリした体型ですが50m6.1で、センターを守る選手。府の大会では合計6本塁打を放っており、長打力もあります。近畿大会や全国大会でもホームランを打てれば、さらに評価を高めていけるでしょう。
右打者としてはもうひとり、瀬千晧(天理)も。少し前に突っ込み気味なフォームですがコンタクト能力が高い好打者です。1年次はホームランも何本か打っていますので、結果が問われる今より、むしろプロ入り後の方がホームランは出るかもしれません。身体能力がズバ抜けて高い打者ではないので、ホームランを連発できると評価する球団が出てくれば指名は確実かな、と思います。
他ですと、細身ながら長身と身体能力が魅力の吉野創士(昌平)や、清宮幸太郎の弟で、ケビン・クロン(広島)に似たフォームの清宮福太郎(早実)あたりの名前が挙がってくるでしょうか。上記の名前も含め、高校生は夏までに急成長する選手も多いので、引き続き追跡していきます。
●二刀流
最後に、二刀流の選手も。阪上翔也(神戸国際大付)、田村俊介(愛工大名電)、金井慎之介(横浜)の3名は、投手としても評価は高いですが、指名されるなら打者としてかもしれない、と思います。
阪上は肘を痛めており、指名されるなら恐らく外野手として、だと思います。右投左打で、フォームも悪くなく、身体能力も高め。ただ、指名確実というほどの圧倒的なものは今のところ感じません。
田村はMAX145km/hの左腕ですが、打撃フォームはかなり良いものがあります。下位や育成でもプロに行くというのであれば道は開かれそうです。
金井はMAX148km/hながら昨秋は制球難に悩まされ、投球で巻き返せるか分かりませんので、昨秋の神奈川大会でOPS 1.097と打ちまくった打撃で勝負してもいいかもしれません。
●おつかれさまでした
今年の高校生野手、阪口樂以外は、凄い!と思わせてくれるような選手はいないなという印象ですが、昨夏は元謙太(オリックス)が一気に評価を上げたように、夏大会で一気に評価を上げる選手が出てくるのが定番です。そのまま甲子園でも活躍すれば、一躍、1位候補にまで昇り詰める例も珍しくありません。あと4ヵ月、期待していきたいです。
来週は大学生投手について取り上げます。参考になった!とか、来週もお願いします!という方、note登録と高評価、よろしくお願いします。それでは、ばいば~い。
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