ドラフト2021~社会人野手編~
今週をもってひとまず、6週連続投稿の、このシリーズはおしまいです。承認欲求を隠さずに放出したおかげなのか(?)、多くの方が見てくださっているのが本当にうれしいです。なお、タイトルに「独立リーグ」が入っていませんが、これは、支配下指名される独立リーグ野手は年に1人いるかどうかで、指名される基準もよくわからないため割愛させていただいたためです。悪しからずご了承ください。
社会人野手も、社会人投手と同様、ものすごく指名可能選手が多いですので、1,2番目の項にて、過去の指名状況と、どういう選手が指名されているかを考えていき、それが終わったらポジション別に挙げていきます。所属先の後ろの年数は入社からの年数。高卒の場合は高卒〇年目と言及しますが、言及しない場合は大卒とお考えください。それではー、れっつらごー!
●過去10年と過去5年から考える
最初に、過去10年間に指名された社会人野手をまとめた表を貼ります。
見づらいようでしたら申し訳ありません。色がついているのがセンターラインの選手で、太字が大卒社会人。斜めになっているのは大卒3年目以降に指名された選手です。圧倒的にセンターラインの選手が多いことが分かります。外野手(OF)の何名かも、身体能力の低い選手ではありません。打てないと指名は難しいですが、打てればいいというわけではなく、一軍で出しても守備で足を引っ張ることはない選手であることが重要になります。
それに、ここ5年の傾向として、大卒3年目以降の野手の指名がほとんどなくなっているということが挙げられます。ただし昨年はドラフト前に社会人の全国大会がなかったことで、特に打者に関しては見極めが難しく、ほぼ指名する流れだったものの見送ったという球団も少なくはなかったはずです。指名された3人全員が6巡指名だったというのもその顕れでしょう。今年は大卒3年目の野手指名も何名かあるのではないでしょうか。
もうひとつ、ここ5年の傾向で言うなら、社会人野手の指名人数は減りつつあります。平均でおよそ3-5名といったところです。2015年・2017年にそれぞれ10名以上も指名されたこともあり、社会人野手の指名が急務な球団は少なくなってきているのでしょう。なお、その2度の年も含め、その年のドラフトで社会人野手指名に動く球団の数も3-5球団といったところ。あと、昨年は上位指名がありませんでしたが、近年の傾向を見る限り、3巡以上に2-3名、下位に2-3名といった配置になるかと思います。
●指名されるのはどういう選手?
・・・ではどういった選手が指名されやすい(≒活躍が期待される)か?となると、昨年もnoteに書いたことではありますが、
・ドラフト年の都市対抗で打率.250以上(.300以上が望ましい)。指名年のデータに乏しかったり、成績が悪い場合、他の全国大会通算が.250以上なら良い
・一塁到達が左打者なら4.2秒、右打者なら4.4秒前後。それぞれ4.0秒、4.2秒前後なら大きなアピールポイントになる。一塁到達タイムが分からない場合、50m6.0以内が望ましい
・ドラフト年の三振率が.250以下(2割未満なら優秀)。ドラフト年のデータに乏しかったり、数字が悪い場合は他の年の大会の通算も考慮
といった条件と思います。言わずもがな、センターラインの選手という条件も付きます。昨年も、下位ポテンシャル枠の三好大倫以外の、中野拓夢・今川優馬はこの条件を満たしていました(その三好も日本選手権で二塁打を放っていますし、身体能力は高い選手です)。
あと、今年になってから気づきましたが、右打者でいきなり打撃が通用した選手がほとんどいないですね。特に2014年以降では、一軍で20打席以上に立ってOPS.650以上の右打者は一人もいないのではないかと。一年目からある程度の打撃成績を残せるのは左打者が多いといえそうです。大卒社会人野手は1年目から一軍スタメンとして出れるかどうかが焦点になってきますので、この点は重要になってきます。実際に指名されているのも、ここ5年は左打者が16名なのに対し、右打者は11名と、やや左打者が多くなっています。
●捕手
前置きで1500文字以上も書いてしまいましたがここから本論(?)です。捕手候補として一番気になっているのが井内駿(JR北海道硬式野球クラブ・2年目)。左打で、昨秋の都市対抗では二塁打を含む3打数2安打。今春の公式戦でも4打数2安打。しかも三振がほとんどありません。セカスロも2秒切ってきますし、足も遅くはありません。今年の日本選手権でも打てたら、指名が見えてくるのではないでしょうか(動画の0:40~に井内の二塁打)。
他で言いますと、大学3年次まではプロ確実ペースの成績だったものが、4年次の絶不調で社会人野球行きを選択した藤野隼大(HONDA・2年目)や、印象的な本塁打に加え、意外な俊足も武器の辻本勇樹(NTT西日本・3年目)の名前が挙がって来ますが、いずれも全国大会では芳しい結果は残せていません。日本選手権に期待です。
現在はレフトでのスタメンが続いていますが、高卒4年目の猪田和希(JFE東日本・高卒4年目)は今年、スタメンで出た試合で17打数9安打・4本塁打。三振も2個だけと非常に優秀。元々、三振は少なめですし、都市対抗でもホームランを放った実績があります。外野手でとなると少し指名は難しいかもしれませんが、捕手としても強肩が魅力の好選手で、特に守備が悪いという話は聞きませんし、まずは捕手として指名してみようと考える球団は出てくるかもしれません。
使えるデータかは分かりませんが、ここ5年間で指名された社会人野手のポジション別の比は、捕手:二遊間:外野手≒1:2:1となっており、平均して5名ほど指名されていることを踏まえると、捕手は年に1人ほど指名されるどうか、だと思われます。
●二遊間
先程のポジション比で考えますと、二遊間は年に2-3人の指名。セカンドの指名はショートの指名人数の半分ほどで、5巡目以降になることが多いです(西武の山野辺翔選手は例外)。実はこの2年、社会人の二遊間の選手はショートの選手がそれぞれ1名ずつ指名されたのみ。ただ、大学生の二遊間との兼ね合いもありますし、その年のドラフト市場に出る二遊間の選手レベルや、プロ球団の需要も絡み、ここ5年で見ても最少は2名、最大9人とかなり振れ幅があります。とはいえショートの指名人数だけで見ると、5→5→4→2→4と、2019年を除けば平均4-5名なので、正直、大学生ショートにそこまで目立つ選手が少ない今年、社会人ショートは3名ほど指名される可能性がありそうです。
現在、twitterでとても人気が高いのが水野達稀(JR四国・3年目)。高卒3年目の小柄なショートで、ワンステップで踏ん張って投げれるスローイングと、右へ左へ質の高い打球を飛ばせる打撃が持ち味。三振も少なく、足も速い。打撃はもう少し左のお尻がインパクトに向けて前に出てくると良いかも、と思いますが、同系のフォームで活躍している村上宗隆選手(ヤクルト)もいますし、インパクト後の右足のブレも少なく、近年活躍している左打者の要素を押さえている気がします。3度の全国大会で全て打率3割以上なのも魅力的です。来年、一軍で120試合スタメンを期待できるわけではないでしょうけど、素材の良さを買って上位指名される可能性も高いのではないでしょうか。
彼とは全くタイプが違いますが、中川智裕(セガサミー・2年目)も人気が高いように思います。187/88のビッグサイズながら、まるで坂本勇人選手(巨人)のようなアグレッシブで機敏な遊撃守備。昨年の都市対抗予選の際は不振ながら、都市対抗本選では2本の二塁打を含む打率.313と活躍し、ここ10試合で6本の二塁打、ホームラン(満塁弾)1本、打率.349と完全に打撃開花。フォームはかなり捻るタイプで、その代償なのか都市対抗でも17打席で7三振、ここ10試合でも45打席で17三振で、かなり三振が多いのだけは不安要素。とはいえ、守備力だけでも評価されるだけのものはあると思いますし、こちらも上位指名の可能性はあるのかもしれません。
昨年の指名漏れ組である上川畑大悟(NTT東日本)は、今年の公式戦で27打数8安打の打率.296とまずまず。昨年の都市対抗でも二塁打を放ち、好守備に陰りはありません。日本選手権に出場し、ある程度の数字を残せれば、ドラフト戦線からまだまだ外れる選手ではないでしょう。ただ、これまでの例で見ても、NTT東日本は下位で選手をプロに送る企業ではない模様で、上位指名必須となると少し微妙なラインになってくると思います。
他で言いますと、抜群の守備力を見せる和田佳大(トヨタ・2年目)、50m5.8の俊足が武器の大内信之介(JPアセット証券・2年目)らが思い浮かびますが、和田はベーブルース杯で打率.583、三振1という好成績を残したかと思えば、JABA北海道大会では一転して打率.091、三振6と沈んでいたり、打撃の波が激しすぎるように思います。大内は昨秋の都市対抗で打率.333でしたが、セーフティバント2つ、内野安打1つで3安打なので、実際のところ打力がどれだけあるのか分かりませんし、今年に入ってからの成績が分からないので評価が難しいです。要追跡、というところでしょうか。なお、両者とも左打者です。
セカンドに目を向けていきますと、千野啓二郎(HONDA・2年目)は昨秋の都市対抗で.打率353、二塁打2本の活躍。動画で手動計測した限りでは一塁到達4.2秒と脚力もまずまず。今年の公式戦であるJABA日立市長杯では13打数6安打で打率.462、三振も2個だけ。都市対抗では18打席で5三振と少し多めでしたが、少し不安は払拭された形です。守備は特別うまいわけではないですが、安心して見ていられます。
大卒3年目ですが、福永裕基(日本新薬・3年目)は、昨秋の都市対抗でも2本塁打、今年に入ってからの公式戦でも打率.367、2本塁打と好調。三振も少ないです。興味深いのは二塁打よりもホームランの方が多いこと。動画で見ても、綺麗な放物線を描くホームランが多く、強い打球を放つというよりもフライを打ち上げていくタイプなのかもしれません。フォームも良いですし、長打力に期待する球団が指名に動く可能性はあります。なお、一塁到達も右打者としては早めで、守備も中の中ぐらいには上手いです。
他で言いますと、島快莉(伏木海陸運送・2年目)が気になっています。50m5.8と言われる俊足、昨秋の都市対抗で4打数2安打、今年ここまでの公式戦で打率.348。ホームランこそ期待しづらいですが今年に入ってからの23打数で2本の二塁打、都市対抗でも1本放っていますし、単打専門ではありません。守備は動画があまり見つからなかったので評価はしづらいですが、待って捕ってしまうタイプのようにも見え、もしそうだとしたら少し評価は落ちるかも。足に期待して指名する球団がもしかしたら出てくるかもしれません。
●外野手
大学生外野手の指名も含めると、外野手の指名は年に5-6人。今年は大学生外野手で支配下指名されそうな選手が4名程度いるように見受けられますので、社会人外野手の指名は2名前後になってきそうです。ここ4年で見ても、指名されているのはおよそ2名前後です。
今年の外野手で外せないのは、昨秋の都市対抗で若獅子賞(いわば新人賞)に輝いた藤井健平(NTT西日本・2年目)。8打数6安打、ホームラン含む3本の長打、三振ゼロという驚異の成績。50m5.8で、遠投125mの強肩でもあり、身体能力が高いのも魅力です。チームではライトを守っていますが、身体能力に期待してセンターを任せても守れると思います(少し打球判断に不安は見え隠れしますが)。今年に入ってからの公式戦でも打率3割以上、長打も出ていますし、三振/打席数も2割未満なので問題ないでしょう。1位指名まであるんじゃないかと思っています。
昨年まさかの指名漏れとなってしまった向山基生(NTT東日本・3年目)。指名漏れ直後の都市対抗でも活躍していますし、社会人野球挑戦後、ほとんどの公式大会で結果を出し続けており、安定感が素晴らしい選手です。ノーヒットの試合がほとんどないという点も優秀ですし、藤井健平には劣るものの身体能力も高く、チームではセンターを主に守っています。強いて言えば大学時代から少し三振が多いのがネックで、3打数に1個は三振してしまう傾向にあります。なお、上川畑大悟と同様、向山もNTT東日本所属なので、上位指名必須だとしたら少し重たいかもしれません。果たして、昨年の雪辱なるでしょうか。
他ですと、50m5秒台の俊足を活かしたプレースタイルの小柄なセンター・金子莉久(JR東日本・2年目)、藤井健平と似たタイプの選手で都市対抗でも2本塁打を放った山本卓弥(HONDA熊本・2年目)、都市対抗で三塁打、今年の公式戦大会で打率.308、二塁打4本にホームランも記録している小柄なセンター・北畠栞人(TDK・2年目)らが気になります。金子は打撃が小さすぎる点、山本は今年に入ってから結果を出せていない点がネックでしょうか。北畠は一塁到達が手動計測で4.2秒、そこまでスピードを売りにできるわけではなさそうですが、打撃開花がホンモノなら面白い存在になるかもしれません。なお、この3人は左打者です。
おいおい、船曳海(日本新薬・2年目)はどうしたんだ?という声が飛んできそうですが、船曳は昨秋の都市対抗で、ホームランこそ放ちましたが打率.200。今年の公式戦でも28打数4安打、11三振という不振。個人的にはドラフト候補からは後退したかなと思っています。
●おつかれさまでした
候補者はだいぶ厳選しましたが、この辺りで社会人野手についてのドラフト候補レポートは終わります。あの名前ないじゃん?という声もあるでしょうけれど。ただし、本番は今夏の日本選手権。ここでの成績次第でプロからの評価は変わってくるはずです。ただ、これまでの傾向を見る限りでは、前年の全国大会で候補者に目をつけ、翌年の全国大会の結果次第でGOサインが出る、という気がします。昨年ほとんど音沙汰なしで、今年の大会で活躍しても、フロックである可能性は捨てきれないでしょうから。
来週は1位指名と上位指名について予想してみようと思います(現時点の備忘録として)。twitterを普段読まれている方には新鮮味がないかもしれませんが、noteならではの分量をフルに活かしてみる予定です。それでは今回のnoteは以上となります。6回のドラフト特集おもしろかったよー!とか、来週も楽しみにしてる!とか思ってくれたら、note登録と高評価、よろしくお願いします。それでは、ばいば~い。
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