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選挙のうぐいすから見える話し方テクニック

今日10月31日は衆議院選挙投票日。
私は期日前投票で投票をしてきましたが、皆さんはいかがですか?

こんにちは。
フリーアナウンサーの三島澄恵です。

かれこれ30年ほど前になりますが、実は私、選挙のうぐいすを務めたことがあります。社会に出る前の学生時代です。
最初は、統一地方選挙のうぐいすのアルバイトの募集を見て応募したのが始まりです。当時は、とにかくアナウンスを軸としたアルバイトを探していたので、どの候補者を応援しようという意識は全くなく、アルバイト先で研修を受けて、そこから指示された候補者のところに配属される形でうぐいすを務めました。

選挙カーのうぐいすに関しては、私が務めた30年前と比べると今の時代は、さまざまな問題定義がされています。うるさい・名前の連呼は意味が無いなど、色々と思う方もいらっしゃるでしょう。正直なところ、私もうるさいな〜と思うことがあるのですから。

けれど、そのうぐいすのアナウンスの中には、話し方のテクニックとして応用して使えることが結構あります。今回は3つご紹介します。


1.名前の連呼
名前の連呼に意味がないと思われがちですが、実は、名前を連呼することで無党派層や誰に投票しようか迷っている人の記憶に残って投票に繋がると言われています。
私たちは、目は閉じれば見ないでいるという選択ができますが、耳は聞いていないつもりでも、実は聞こえています。耳を塞ぐということをしない限りは無意識のうちに周囲の音を聞いているんです。そのため、何度も何度も聞いている言葉というのは、無意識のうちに覚えてしまいます。
日常生活やビジネスの場で、何度も名前を連呼するのはマイナスだと思いますが、例えば、プレゼンテーションやスピーチなど、何か伝えたいことがあるときは、そのキーフレーズを何度も散りばめておくというのは効果的だと言えます。


2.特定の誰かに声をかける
選挙カーで時々、「2階の窓から応援ありがとうございます!」や「奥様、ご主人様、応援ありがとうございます!」(奥様・ご主人様という表現は私が30年前に教わったので、今は使われていないかもしれません。)という感じで、手を振ってくださった方や声をかけてくださった方に、選挙カーの中からマイクを通して声をかけることがあります。
そうすると、声をかけられた側は、「私のことを見てくれている」という承認欲求が満たされることで、さらに応援したくなります。しかも、選挙カーは街中を走りながらアナウンスをしているので、「大勢の中から自分を見つけてくれた」という特別感を持てます。
これは、日常生活でもビジネスでも同じです。相手の名前を覚えて声をかける、相手のことを観察して気づいた点を声をかけるなど、「私は、あなたのことを見ていますよ」と、ちょっとした声かけで伝えることで信頼関係が深まります。


3.声はチームを一つにする
私も、選挙カーをうるさいと感じることがあります。けれど、そこで発せられる声には、チームが一丸となる力があると感じています。
選挙カーのうぐいすは、1候補にだいたい4人程度がチームになって交代で行っていました。それぞれに選挙に対する思いは違っていて、中には、あまり熱の無い人もいました。
けれど、チームの中でたった1人でも、情熱を込めて声を出し続ける人がいるとチームは一つになり、関心が薄かったうぐいすの人も熱がこもってきて最後には、声が枯れてしまうくらい熱心に取り組んでいました。
私たちの脳には、ミラーニューロンと言われる脳の神経細胞があります。これは、周囲の人の真似をすることでコミュニケーションを深める役割も持っているのですが、私たちの日常の行動にも深く関わっていることがわかっています。
例えば、相手がにっこり笑うと自分もにっこり笑ったり、相手が痛そうな顔をしていたら自分も痛そうな顔になったりします。他にも、グループの中に肥満の人がいると、そのグループの他の人も太りやすかったり、ゴミが落ちている場所には、さらにごみのポイ捨てが増えたりといった具合に、相手の行動を真似してしまいます。
人間は楽な方に流れやすいので例えで後述したことも起きますが、それに流されず、がんばっている人やレベルの高い人がいると、他の人はそれを真似するので、チームの力が高まります。
さらに声は周波数という波があります。「波長が合う」という言葉がありますが、チームでリーダーとなる人の波長に、周囲は徐々に合わせているのかもしれません。

社会に出てからは、職業柄選挙に関わることはしていませんが、30年前の選挙のうぐいすの経験を思い返すと、何より大切なのは、候補者の人となりと、政治にかける情熱ではないかと思っています。
ちなみに、私がうぐいすを担当した候補者5人は全員当選しました。けれど、そのうち4人の方々は落選が予想されていて、かなり苦しい選挙戦を闘われました。それでも当選できたのは、候補者の想いが、周りのスタッフに伝わり、その想いが有権者の方に届いたからではないかと感じています。
話し方のテクニックは色々とありますが、そういう芯の部分こそが人を動かすのだということを、私自身、これからも肝に銘じて話していこうと思っています。

さて、今日は雨が降っている地域もあります。出かけるのに、ちょっとだけ腰が重たくなる人もいるかもしれませんが、皆さんの一票を大切になさってください。


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