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英語民間テスト、大学入試への導入見送り /実際に体験した私の思うところ

 少し前のニュースですが、大学入学共通テストに導入される予定であった英語民間テストが見送りとなりました。

 受験生が住む地域・家庭の経済力差のため、テストの公平さが保たれない。これは日本の社会ではとても重要視される概念でしょう。

 その他にも、テストの”質”じたいに疑問が残っていたり、いくつか理由があるようです

 どちらにしても、新しい取り組みが全体の合意を得るのはやはり難しい。いままでの延長線上で修正した方がみんな納得しやすい。大きく見ればそんな数ある実例の一つか。。。とも思えてきます。

 それはともかくとして、自分の考えをここから言います

「これは勿体ないんじゃないの。今から10年、20年後の先まで考えて高校生たちに最良の選択と言えるのか?? そもそも民間テストのメリットがまだまだ過小評価されてないか。。」と言いたいですね。

 なぜそうやって思うかというと、私はこの民間テストのうちのひとつ”IELTS”を(20代中ごろ)集中的に勉強しました。

 それまで英語にほとんど興味がなかった私ですが、その結果として(海外留学などいっさいなく)日本からオーストラリアの永住権取得に成功し、今は100%英語環境の職場でエンジニアとして働いています。

 その経験から思うに、IELTSの勉強は読む・聞く・書く・話すの4技能を鍛えるのに、ものすごく強力です。

 例えば英語スピーキング。普通に考えて、英語をしゃべる環境が周りにあったり留学する機会がある人が圧倒的有利。そうでもなければ正直厳しい。

 ただし、このIELTSのスピーキングテストのスコアを上げるという目標にそって勉強すれば、恵まれた環境がなくてもある程度は喋れるようになります。

 この方法はむしろ、今回の決定で守られる立場にある地方在住の学生や、大学受験という目先に捕らわれない一生モノのスキルを身につけたい学生、彼らにとって本当にメリットが大きいんじゃないでしょうか。

 私自身が、20代中ごろたくさん試行錯誤した経験が有るので、どうしてもこれだけは言っておこうと思い、今から自分の思うところを書いてみます。

IELTSの点数と英語力について

 友人のFB投稿で初めて知ったのですが、英語力を測る”ものさし”として面白い指標があります。

 それが CEFR( Common European Framework of Reference for Languages)

 英語を始めとした外国語の熟達度をA1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階に分けて評価する国際基準。欧州で長く研究、実証実験もされてきました。

 とても便利なのが、数ある民間英語試験を一つの物差しで比較できるんですね。(下表を参照)

 例えば、オーストラリアへの留学や永住権取得の申請にはIELTSが採用されているので、参考としてその条件を照らし合わせてみます。 (あくまで目安です)

B1(IELTS 4.0-5.0)・・・オーストラリアの専門学校などの受講が可能なレベル。これ以下のAランクだと留学前に現地の語学学校に通う必要あり。

B2(IELTS 5.5-6.5)・・・オーストラリア大学、大学院で多くのコースに合格可能なレベル。

C1(IELTS 7.0-8.0)・・・通訳や医療関係など高度な英語力が必要な大学、大学院にも入学可能。

C2(IELTS 8.5-9.0)・・・いわゆるペラペラな人や、ネイティブ話者。

 永住権申請に必要なスコアは

 私が申請した当時(2008年)で技能系職種(シェフや美容師など)でB1レベル 。エンジニアなど専門職だとB2レベルでした。

 提出が求められる英語テストのスコアは年々高くなってきており、今現在では技能系、専門職のどちらとも、CEFRで一ランク上の英語力が必要になってきています。

学生時代にどれぐらいの英語力を目指すか?

 これは一般化してもあまり意味がないので

 ここからは話を限定して、工学部で学び将来はエンジニアとして手に職をつけ、食べていこうという学生さんを例に挙げてみます。

 (もし仮に自分が高校一年生に戻ったなら、どんな英語教育を受けたかったか?という視点で考えてみます。)

 高校一年生になった時点で(大学入試に採用されるかどうかに関わらず)英語外部テストから一つ選ぶ。ここではIELTSを選んだとします。(世界中で認知されているTOEFLかIELTSのどちらかが良いでしょう)

 高校卒業までになんとかB1レベルのIELTSスコアを取る。

 ただし高校生の段階では、(矛盾するようですが)読む・聞く・書く・話すための基礎固めに徹すれば十分じゃないかとも思います。

 特に英単語。高校時代に苦労して覚えたことが、ゆくゆくは大きな助けになり後からずいぶん楽ができるはずです。

 また、この時点で話す書くというアウトプット能力がすこしぐらい劣っていても大丈夫だと思います(全くやっていない”ゼロ”とは違います)。

 そして次の大学4年間では、自分の世界も高校時代より広がり、アウトプットしたい(出来る)事がおのずと出てくるはず。

 そうしたら、ひとつのネタについて1分程度のスピーチを考えてみてはどうでしょうか。

 例えば、機械工学を学ぶ学生が”電気自動車スタートアップの将来を予測”と題して1分スピーチ。趣味でもあるラグビーについては「ラグビー日本代表の10年後」。旅行の話、自分の夢、趣味、家族、恋人。。。。

 10個、20個と1分スピーチのネタをどんどん増やしていく。

 とにかくこの時期でいっきに、話す、書くというアウトプット能力向上を意識して磨きます。自分の得意な話題に絞れば、かなり難しい単語を知ったりと語彙力も急に伸びると思います。

 そして、高校時代からすでに慣れているIELTSを再受験。ライティング、スピーキングのスコアが伸びてくるか?これがひとつの指標になると思います。

 こうして大学卒業までにIELTSの4技能でスコア6.0を取得する。

 ここまでやれば、けっこう細かいレベルのコミュニケーションがすでに可能です。

 初めてあった人とも、英語で簡単な雑談話で盛り上がれたり、かなり自信はついてるはずです。

 英語を身につける事で広がる可能性

 ここまで英語を頑張ってきた方であれば、多くの人が社会に出ていろんな場面でそのスキルを活かせるんじゃないでしょうか。

(留学をしたり特別恵まれた環境にいなくても、多くの人にとってここまでなら十分なんとかなる)

 そしてもっと積極的に英語を使っていきたいならば

 数年の実務経験を積んだのち、海外の大学院に興味を持ったとしても、英語力の要件はすでに満たしているので問題なし。

 英語を単なるスキルには留めず、海外の生活体験を夢見てオーストラリアへのワーキングホリデーを決めた場合でも

 現地の語学学校に通う必要はなく、いきなり現地企業が募集するエンジニア職に応募し数か月の就業体験をしてみることも可能。ワーキングホリデーで得られる経験値はもの凄くちがってきます。

 (私の職場で向かいの席に座っている同僚のイタリア人エンジニア。ワーキングホリデー当初は、車を洗車するアルバイトをしながらサーフィンに明け暮れてたそうです。そのあとで今の仕事を勝ち取って今なお働いています。)

 SNSを多くの人が活用する今、日本で自分がしているのと同じITエンジニアの仕事なら、アメリカ現地では2~3倍の給料を貰えるかもしれない。こんな事だって今なら筒抜けです。

 そしたら、よしアメリカに行こうと考える人も中にはいるでしょう。

まとめ

 海外に出ることをただただ礼賛するつもりは全くありません。

 実際のところは、日本にいながら英語スキルを使って周りに重宝される。それで十分という場合が多いでしょう。

 私がただ言いたいのは、高校時代から実用的な英語習得に思いっきりこだわれば、多くの人がここまで言ったような選択肢を持つことは現実的に可能ということです。

 そのために高校・大学と一貫してIELTSもしくはTOEFLを利用し、社会に出るまでに目標とするスコア(学習到達度)を目指すのは、ものすごく強力なやりかたです。

 私の経験からこれは自信があります。

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