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僕の好きなアジア映画56: 恋愛の抜けたロマンス

『恋愛の抜けたロマンス』
2021年/韓国/原題:연애 빠진 로맨스/95分
監督:チョン・ガヨン(정가영)
出演:チョン・ジョンソ(전종서)、ソン・ソック(손석구)、コン・ミンジョン(공민정)、キム・スルギ(김슬기)、ペ・ユラム(배유람)、キム・ジェファ(김재화)

この映画、女性の目線からのかなり性的に明け透けな表現が多いので、そこがむしろハリウッド的な感覚と言って良いのかもしれない。

性的な欲求のためには面倒臭い恋愛などない方が良いという、その如何にも割り切ったような、あっけらかんとした欲望の強い女性を大活躍中のチョン・ジョンソが演じている。映画デビューとなった『バーニング 劇場版』、『ザ・コール』、『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』など、容姿自体もすごく美しいというより強烈で、果敢な演技が個性的な女優さんです。

チョン・ジョンソ。エロい役が似合います。

そして男優も現在大注目のソン・ソック。 ドラマでは『 Mother』、『SUITS』、『最高の離婚』、『 サバイバー』、『 D.P. -脱走兵追跡官-』、『智異山』、『私の解放日誌』、配信が始まったばかりの『カジノ』、映画では『犯罪都市2』など遅咲きだが今や超売れっ子。生意気そうな、屈折したようで影のある、どちらかといえば悪い役柄が似合う役者で、僕の好きな男優さんの一人。しかし本作ではかなり良い人だ(笑)。

ソン・ソック。珍しく素直にいい人の役。

物語はこの二人が出会い、面倒臭い「恋愛」という過程を経ずに、お酒を飲んだり、肉体的関係を楽しむだけの、そういう間柄になる。小説家志望の編集者であるソン・ソックは、もはや彼女の行動様式に半分感心していて、その様子を彼女に告げずにSNSで記事にするのだが、それが大きな話題となってしまう。しかしこの映画では良い人であるソン・ソックは、そのことを彼女に告げ謝罪し、二人の間のルール違反を認めて潔くこの関係を終了しようと告げるのだった。

相手に自身の罪について真正面から許しを得たいと思う思考の方向性、そしてその相手の行動を理解し許容しようとする行為、実はこういう面倒くさいプロセス(感情労働)を自身に許容、あるいは積極的に遂行することこそがすでに「恋愛」的なのであり、結局彼らは恋愛抜きのロマンスを標榜しながらも、最終的には望んでいなかったはずの「恋愛」にたどり着いたという、面倒臭いけど粋なラブ・コメディーです。下品に落ちることがないのは脚本が素晴らしいからですね。

百想芸術大賞 映画部門 脚本賞


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