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僕の好きなアジア映画16:タレンタイム〜優しい歌

『タレンタイム〜優しい歌』
2009年/マレーシア/原題:TALENTIME
監督:ヤスミン・アハマド
出演:マヘシュ・ジュガル・キショー、パメラ・チョン


本作は生涯6本の作品を残したマレーシアの名匠、故ヤスミン・アハマド監督(1958-2009: アフマドとの表記もあり)の2009年の遺作です。本作がマレーシアで公開されたのが2009年3月。その僅か4ヶ月後に脳内出血で帰らぬ人となりました。

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マレーシアは複雑な民族構成による多民族国家です。人口比では、マレー系が約65%、華人系が約24%、インド系が約8%の順とのことですが、マレー系の中にもさらに民族がいくつもあり、人種以外に宗教の問題もあって、その複雑さは日本人には想像ができません。この映画の背景にはこのような民族構成による、社会的、経済的な格差や、宗教や人種間の確執などの多様な問題があります。

舞台はある高校学校。恒例で行われている生徒達による音楽コンクール「タレンタイム」に出場する学生達の青春群像です。

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出場者達の曲として演奏される楽曲を聞いてみてください。
まずはこちら「Angel」。予告編のAngel Version(BGとして流れます)。

そしてこちらも予告編の「I go」version。

さらに「just one boy」。

とてもレベルの高い素敵な楽曲ばかりです。これらはマレーシアの人気アーティスト、ピート・テオが作曲したオリジナル曲で、マレーシアのポップ・ミュージックのレベルの高さが感じられます。

そして映画は、多種多様な背景をもつ生徒達の身の回りに起こる、事件や悲劇など、様々な葛藤を交えながら、彼らが音楽コンクールにや勉学に挑む様子が瑞々しく描写されます。青春群像を描いているようでいて、実はマレーシア社会の縮図を描いている、というわけですね。確執や困難の中で、人種や宗教を超えた友情や恋愛が芽生えていきます。

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彼らの歌う「優しい歌」に託して監督の描きたかったのは、さまざまな格差や、偏見や障害の壁を乗り越えることができるのは、人と人との触れ合いに基づいた「愛情」しかない。そこにしか融和を見出す方法はないのだ、という監督の強い信念でしょう。

監督が最も影響を受けたのはチャップリンの『街の灯』とのこと。「人生には、とても楽しい瞬間のそばにいつも悲劇が隣り合っているという私の考え方が『街の灯』に通じているからです。だから、最初から最後まで気難しい映画を観ることに私は耐えられません」と述べていたそうです。
慈愛に溢れた、優しい映画でした。

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