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アクロストンさんのオンライン講座開催します②

 小学生だったか、もう中学生になっていたかはっきりとは思い出せないのだが、その頃に自分が性に関することで突拍子もない不安に襲われた、びっくりエピソードについてお話しようと思う。いや、今から考えるとそれは「突拍子もない」んだけれども、当時の私はなけなしの断片的な知識をかき集めてきて、必死で論理を組み立てたんだろうと思う。そのけなげさに胸打たれなくもないが、うん、でも正直なところお話するのがやっぱり恥ずかしい・・・でも言っちゃうんだけど。

 「おりもの」を見て、「精子がでてきた!」と動揺したことがあるのである。

 いやぁ何でそんなミラクルな結論にたどり着いたのかは、もう今となっては分からない。なにより「おりもの」を知らないってだけで、身体の性別さえをも軽々と超えた論理を勝手に作ってしまうっていうのがすさまじい。でも、「知らない」ことを「知っている」ことでツギハギして埋め合わせてしまうと、究極こういうことが起こりえる。知識の穴があるということは、荒唐無稽なストーリーを抱え込むリスクと隣り合わせなんだなってことが、自分の経験を振り返ってみてよく分かった。

 アクロストンさんの新刊「思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!」は、あの頃の自分・・・「もしかして私、身体の内部は男性なのかも・・?」という不安にかられてた気の毒な私に、そっと手渡してあげたい1冊である。「おりもの」もそうだけれども思春期に起こる身体の変化について丁寧に説明があり、まずは「初めての経験で戸惑ったり不安になったりしていること」が、誰にでも起こりえる自然なことなのだということを知ることができる。その上で手当てが必要なラインもきちんと提示されているので、どこまでが自然な変化の範囲で、どこからが受診の検討になるのかも分かりやすい。さらに心強く思うのは、「自然な変化」の範囲の中でも多様性があること、人それぞれとても違いがあることが繰り返し伝えられている(表現されている)ことである。「人と比べて自分はどうなんだろう?(≒私は普通なのか?正常なのか?)」と気になりながらも、実際に人と比べにくい事柄であるので、バリエーションが提示されていると「自分はこれに当てはまるかな?近いかな?」と安心できるのではないかと思う。

 とりわけ「このバリエーションの提示はすごい!」と思ったのは、女性の外性器(バルバ)のバリエーションである。といっても写真やイラストで「はっきりと」示されているのではなくて、クラフト作品でカラフルに可愛らしく(おしゃれに!)提示されているのが素敵!本書では全編にわたってクラフト作品の写真がたくさん使われているのだけれども、バルバに関してはカラフルなフェルトを使った作品になっていて、生々しさがない一方で、造形(形・つくり)には多様性があるので「いろんな姿形があるんだなぁ。」ということが見ていて分かる。ちなみに男性器(ペニス)も包皮の状態を含めて、フェルトのクラフト作品でバリエーションが提示されているのだけれども、こちらもぱっと見「かわいいな」と思うようなページになっている。なんていうのかな、性に関することって影でこっそりと、という雰囲気になりがちだと思うんだけれども、この本は日向の本!という感じがする。親子でリビングで広げられる、恋人と一緒に読むことができる、そんな雰囲気を纏っている。もちろんこっそりが悪いわけでは決してないんだけれども、これまで相対的に日向な本やツールが少なかったので、「ありがたい!」と思うのである。

 第2章は公教育で教えられない「セックス」がテーマになっており、性感染症予防・避妊に関する正しい知識とともに、「性的同意」とは何か、その重要性についても説明がされている。それらを合わせて「セックス準備シート」が巻末に添付されており、正しい知識を身につけ、かつ万一の時にどうしたらいいのかを考え、お互いの意思を確認しあうためのツールとなっている。元保健室の先生で、現在はフリーの性教育講師として活動されている「にじいろ」さんが性をめぐる現代の中高生のリアルをコラムとして紹介してくださっているのも興味深く読ませて頂いた。続く第3章は「恋愛・性の多様性・ジェンダー」編となっており、これらのテーマを巡っての現代的な課題、対処法について論じられている。

 あぁ、10代の頃にこの本と出会いたかった・・・

 今時はインターネットで何でも調べられるけれども、でも検索した先の情報が正しいとも限らないし、そもそも子どもたちは検索の仕方も(公教育で)きちんと教わっていない上に、検索するには前提となる知識が不可欠だったりする。たとえば「おりもの」を精子だと思い込んでしまった私がインターネットで検索をしようとしたら、「おりもの」っていう言葉を知らないんだから「精子」「女子」みたいな(思い込みに基づいた)キーワードを入力するしかなくて、正しい情報にたどりつけるような気がしない。性に関するワードで検索をしたらアダルトコンテンツがヒットする可能性も高く、誤っていたり偏っていたりする情報をそのまま受け取ってしまうことだってあり得る。そうしたリスクを考えれば、子どもの情報検索力に委ねるのではなく、まずは子どもたちに正しく信頼できる情報を伝える、情報源につなげる義務が大人にはあると思う。アクロストンさんの本書は、その一つである。

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 この素晴らしい本を世に送り出して下さったアクロストンさんが、今月末11月29日に「子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)」をテーマにオンライン講座をしてくださることが決まっている。このワクチンに関しては、接種後に体調を崩した子どもたちのことが大きく報道されて以来接種が避けられるようになり、私自身もセンセーショナルな報道の影響を少なからず受けている。性教育全般にも言えることだが、まずは科学的・医学的に正しい知識を知ること、知ったうえでどうするか考える場を持ちたいとの思いから、今回の講座を企画した。当日は子宮頸がんワクチンのお話が中心になるが、性教育に関する質問も幅広く受け付けて下さるので、ぜひお気軽にご参加頂けると嬉しい。

アクロストンさんの講座概要は下記の通りです。

「ワクチンでがんが防げるってすごくない?今こそHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の話をしよう」

 子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を予防するHPVワクチン。日本では2013年より小学校6年生から高校1年の女子を対象に、公費でうてる定期接種になっていますが、様々な事情で積極的に接種をすすめる方針がとられず、対象年齢の子どもたちや保護者に十分な情報が届いていません。そのため子どもたちを対象にした性教育ワークショップを展開されている医師のご夫婦ユニット「アクロストン」さんを講師に迎え、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)のことを学ぶ場を持つことにしました。まずは科学的に正しい知識を学び、自分はどうするべきか自分で考え、またそのことについて家族と話し合うきっかけとなるような場となることを願っています。

日時:11月29日(日)19:00-20:00
対象:中高生~おとな
場所:zoom(オンライン)
参加費:500円

講師プロフィール(アクロストンさん)
医師としての仕事の傍ら、2018年にアクロストンとしての活動をスタート。公立の小学校の授業や企業主催のイベントなど、日本各地で性にまつわるワークショップを行っている。著作に「赤ちゃんってどうやってできるの?いま、子どもに伝えたい性のQ&A」。
Web:https://acrosstone.jimdofree.com/
note:https://note.com/acrosstone

お申込みは、下記よりお願いします。
梟文庫HP:https://www.fukuroubunko.com/
Peatix:https://onlinefukuroubunko-acrosstone2020.peatix.com/


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