見出し画像

中学生、模擬選挙に参加する

 「自民党が来てないって・・・若者を捨ててるってことだよ?」
と激オコの中学生ムスメさま。何があったのかというと・・・

 先日、「日本若者協議会」主催の「2021学校模擬選挙(オンライン開催)」にムスメさまが参加した。この企画は今月末に行われる衆議院選挙に向けて、全国的な学校の模擬選挙を盛り上げ、若年層の政治参加を促進するためのキャンペーンとして中高生を対象に行われたものである。主要政党から議員さんたちが招かれ、学校政策を含めた党の公約についての演説を聞き、意見交換を経て模擬投票をするという非常に興味深い企画だった。この会の告知がtwitterに流れてきた時にムスメさまに声をかけたら、「うん、参加するー」と相変らず軽やか。「とりあえず何でもやってみる選手権」があったら王者に君臨すること間違いなし。思えばハハであるワタクシが人生初のデモに参加した時も(その時の記事はこちら)、顔を輝かせて「行く!」とついて来てくれたよね。あれからもう3年以上経つのだなぁ。

 それはさておき、私も企画内容にとても関心があったので、ムスメさまと一緒に参加させてもらった。その日は公明党・立憲民主党・国民民主党・共産党・維新の会からそれぞれお1人ずつ議員さんが来て下さっていて、自己紹介のあと党の公約についての演説をされた。そもそも直接議員さんからお話を聞く機会がない生活を送ってしまっているので、ただお話を聞いているだけでもお人柄ごと伝わってくるものが色々あってなんだか新鮮。さらに私自身の関心ごとでもある学校政策について、各党のスタンスを比較しながら聞けたのがやっぱりとても面白かったし、勉強にもなった。今回の企画は中高生向けの模擬選挙だけれども、来る衆院選に向けて各政党の公約について知ることができる、大人(有権者)にとっても貴重な機会だった。

 演説のあとは参加者から議員さんへ、google formを使って質問ができる時間を設けて下さっていたので、ホームスクーラーのムスメさまに「不登校のことについて聞いてみる?」と尋ねてみた。聞いてみる!ということだったので不登校をテーマに質問を送ったのだけれども、なんとムスメさまの質問が一番初めに取り上げられ、各政党の議員さんたちから、それぞれ不登校をどうとらえ、どんな対策をとろうと考えているのか、伺うことができた。不登校について、党派を超えた共通認識ももちろん見出されたのだけれども、「不登校」という現象をどのようにとらえているのかという根本的なスタンスは各党によって異なっていて、そこが非常に興味深かった。私は不登校に関して「変わるべきは子どもではなく、学校(社会)の方である」とずーっとしつこく主張してきているが、なかなかその転換が行われず、何度も絶望・・・というか怒りにうち震えてきた。しかしこの会で共産党の山添議員が、「不登校を、子どもや家庭の責任にすることは間違い。学校が(子どもたちにとって)居づらい場所になっている。その中で子どもたちの(教育を受ける・生きる)権利を保障していく、という立場から考える必要がある。」と非常に明快でロジカルに視点の転換を訴えて下さって、「仲間が!ここに!!」と勝手に胸アツ・・・

 さて会の終了後に参加者はgoogle formで投票できるようになっていて、ムスメさまも2択まで絞って真剣に悩み、投票をしていた。そうしてムスメさまが呟く。

「でも(与党の)自民党が来てないと(投票は)意味なくない?」

 そうなんです!
 今回、第一党の自民党がまさかの不参加だったんですよー、みなさん!!
 だから現政権の政策を他の政党の主張と比較した上で評価し、これからの政治も任せたいと思うのか、そうではないのかという意思表示としての投票にはならず、ここでの有権者からしたら「何のための選挙?」になってしまうのは当然である。

 「調整できなかった」としか説明がなかったので、なぜ自民党がこの場にやってこなかったのかは分からない。しかしムスメさまは冒頭の激オコ発言にもあるが、自民党が若者たちに直接語りかける場にやってこないことを「若者を捨ててる」というメッセージとして受け取った。さらには「大丈夫?って思うよね。この場に来てくれた党は、それだけでいい党だって思えちゃうでしょ。大丈夫?いいの?って思うよね。」・・・仰る通りである。今は選挙権がない若者であるが、未来の有権者。その人たちを大事にしていないというメッセージを発してしまうリスク、その人たちから相対的に低い評価を下されてしまうリスクを、「参加しない」選択が含みこんでしまうということを軽視しているのか、考慮に入れられないのか。いずれにしても「大丈夫?(やばくない?)」と思わずにいられない。中学生でも分かるリスクマネジメント失敗例なのでは?と不安にさえなってくる。

 会の終了後は、そういったことを含めて親子で激論タイム。どの政党の主張が印象に残っているか、それらの発言をどう思うか、なぜそう思うのか。ビックリするくらい話が尽きない。ムスメさまはお話の内容にも純粋に興味を持ったようで、議員さんたちが紹介してくれていた党のマニフェストを、「あれも欲しいよね。どこでもらえるのかな?」と言っていた。今の若者たち、子どもたちは政治に関心がないなんて言われるけれども、きっとそんなことはないのだ、と改めて思う。子どもたちに真摯に向き合い、身近なテーマで語りかけてくれる大人がいれば、子どもたちはそれらについて考え、意見を表出したいと思っているだろうし、できるのだ。大人が、社会がそうした機会を作っていない、あるいは奪ってさえいるのだろうと思う。10代の選挙投票率が80%を超えるというスウェーデンでは、学校に政治家を招くことが国の方針により奨励され、学校の活動として政治についての対話に取り組むための(教師向け)教材が作られているほどだが(※)、日本の公教育ではまだまだ政治の話題は性教育と同様アンタッチャブルなままである。会のあとにムスメさまが、「公民ってすごい大事!ちゃんと分かっている人に教えてもらいたい!!」と言っていたが、いきなり「主権者教育を!」「模擬選挙を!」と望んでも叶いそうにない状況ではあるので、まずは教科の中で政治を巡って子どもたちが対話できる機会が欲しいところである。今月末には衆院選という絶好の機会が待っているので、そのチャンスをしっかりとらえて、子どもたちと一緒に考える場や機会を積極的に作ってもらいたいと願っている。そして政治家のみなさん、きっと子どもたちは政治家のみなさんから語りかけてもらえることを、そして自分たちの声を聞いてもらうことを、待っていますよー!

 というようなことを思っていたら、twitterで立憲民主党の特設サイトが流れてきた。見てみると「この国に生きるすべてのあなたへ」と題して、枝野代表が様々な立場・状況にいる「あなた」へ語りかけるショートムービーが100以上アップされていた。今困っている人、問題意識を感じている人々を「あなた」として眼差し、そのことについてどう考え、何をしていこうと思っているのかを語りかける動画たち。その中には「学校へ行けない・行かないあなたへ」という動画もあり、ムスメさまに紹介すると真剣に耳を傾けていた。後日オットにもこのサイトを紹介していたら、そばにいたムスメさまが「私も(「あなた」の中に)いるんだよ!」とオットに教えていたので、語りかけてもらえたことがとても嬉しかったのだと思う。それはそうだろう。今はまだ(学校へ行かないという)特殊な状況にいるマイノリティの「わたし」、時々はそのことに対する無理解や不平等にさらされることもある「わたし」、その「わたし」がここにいることを知ってくれていて、そしてその「わたし」に向かってこの状況をなんとかしていくよと語りかけてもらえる。それはとても心強い思いがするだろうし、嬉しくないわけがない。私だって、「社会問題に声をあげているあなたへ」というメッセージを聞きながら、色んなことと静かに闘いつづけていることを労われ、また一緒に解決していってもらえそうな気がして、ぐっときたんだから。またこれらの動画から簡単にメッセージを送れるようにもなっていて、声を届ける仕組みが実装されていて嬉しい。ムスメさまもここからメッセージを送ると言っているし、私も言いたいことが山ほどあるのでじゃんじゃん送ろうと思っている。ぜひ下記の特設サイト、立ち寄ってみてください。

立憲民主党 「この国に生きるすべてのあなたへ」

 さて話は戻って、ご紹介した「2021学校模擬選挙」の様子はYoutubeにあがっていてアーカイブが残されている。10月17日までは(中高生は)日本若者協議会の下記のサイトから投票もできるので、ぜひ動画で各政党の公約を聞いて投票にチャレンジしてみて欲しい。不登校の問題に関心のある方は、アーカイブの48分頃からムスメさまの質問を受けて各政党の議員さんたちが不登校対策について語ってくれているので、ぜひその部分をご視聴頂けたらと思う。

日本若者協議会 2021年学校模擬選挙ページ

2021学校模擬選挙 Youtubeアーカイブ

 私たちはそれぞれに、政治にとっての「あなた」としてここにいるよ!と声を届けること。
 政治は「あなた」の声を聞くこと。

 そうした相互的で動的な営みは、どちらが欠けていても成り立たない。ひとりひとりがそのことを引き受けて、行動を起こせる社会へ。子どもたちと一緒に、変えていこう。

※「政治について話そう! スウェーデンの学校における主権者教育の方法と考え方」、スウェーデン若者・市民社会庁著、両角達平・リンデル佐藤良子・轡田いずみ訳、2021.

細々noteですが、毎週の更新を楽しみにしているよ!と思ってくださる方はサポートして頂けると嬉しいです。頂いたサポートは、梟文庫のハンドメイドサークル「FancyCaravan」の活動費(マルシェの出店料等)にあてさせて頂きます。