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おばあちゃん家の猫

おばあちゃん家の猫が死んだ。

いつもは魚のにおいがプンとするのに、その日は食べたものを吐いてしまったせいか、胃酸の酸っぱいにおいがした。
グッタリとした体を撫でたらその胃酸が手について、なんとなく「あぁ、もうダメなんだな」と思った。
その手についた酸っぱいにおいが忘れられなくて夜が明けた。
猫はその日のうちに死んでしまった。

ちょっと太っていて、まるまるとした猫だった。
もともとは捨て猫でご近所さんが拾って育てていたけれど、気がつけばおばあちゃんの家に住み着いてしまっていた。
皆に「ぶーにゃん、ぶーにゃん」と呼ばれ可愛がられていた。

猫はキャットフードを食べていたが、晩年は魚を食べて過ごした。
3匹300円のパックされたカマスやアジ。
スーパーで購入し、よくおばあちゃんの家に持っていっていた。
その魚を焼いてあげると、はやくはやくと言わんばかりにキッチンにすぐさま近寄り、いつもペロリと平らげていた。

そんな猫が死んでもう6年。
スーパーにふらっと立ち寄った時にパックされた地魚が目につき、ふと思い出してしまった。
そうだ、今日の晩御飯は魚にしよう。久しぶりに家で猫の話でもしてみようかな。
ねぇ、ぶーにゃん、みんな元気にしているよ。
ぶーにゃんも天国で元気にしてるかな。

帰り道、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
どこかの家から魚の焼けるにおいがした。

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