見出し画像

おっちゃんと自転車

昼過ぎに仕事を終えて自転車を漕いでいたら、いつもよりペダルが重かった。
後ろの方から変な音がしたので一旦自転車から降りてよく見てみたら、後輪タイヤがパンクしていた。
はぁ、とため息をついた。
今日はとことんついてない。

早く家に帰りたくて無理矢理自転車を漕いでいたが、タイヤが可哀想に思えてきたので自転車を押して歩くことにした。
今日は自分自身に余裕がなくて誰に対しても優しくできなかったので、せめてタイヤには優しくあろうとした。

途中で自転車屋さんに寄っていつものおっちゃんに修理をお願いした。
「釘かなんか踏んだんですかね」
と聞くと
「場所によってはバラの棘でもパンクするからなぁ」
と話してくれた。
バラの棘。そんなものでタイヤがパンクをすることに驚いた。それと同時にバラの棘がパンクの理由だったら何だか快く許してしまいそうだな、とも思った。

修理は30分程で終わった。
「パンクの原因、ワイヤーの端くれやったわ」
とおっちゃんは1cmに満たない程の細いワイヤーを私に見せてくれた。
それをテープで領収書に貼って「ほれ」と私に渡してくれた。

夕方、帰る頃には少し笑顔になっている自分がいることに気づいた。
なんでもない会話が人を救う時があるな。そんなことを考えながらおっちゃんが修理してくれた自転車に乗って家へ帰った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?