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(144)春の小さな楽しみ

すこし間があいてしまった。頭の中では毎日細切れの文がよぎるけれど、この季節は毎年すこし呆となってしまう。毎日春が進み、小さな芽や花の弾ける音が空中に木霊している。

木霊または谺、木魂と書いて、こだま、と読むらしい。読みの音だけで記憶していたが、こだまは、木の精霊や魂であり、山あいの谷の牙なのだ。山そのものが命ある存在として、そこにあるのだ。

身体に刷り込まれていたような記憶が、ふとしたきっかけで出て来る、というのが時々ある。人の記憶は不思議で、頭では知らないと思っていたものが、体の方が覚えていて、ふっと言葉が出てくることがあり、私は知っていたのだ、と認識して驚く。年月を経るほどいつのまにか知っている事が増えているらしくて楽しい。

先日フキノトウの最後の収穫をして枯れ草などを拾っていたら、崖の上の隣家の柚子がいくつか落ちていた。見上げると塀の外に伸びた枝にまだたわわと柚子が成っている。崖上といっても、うちに接しているのはごく僅かで、ほとんど斜向かいだから過去に柚子がうちに落ちてきた事はなかった。拾った実は友人にもらった可愛らしい小さな金柑と一緒にジャムにした。

蕗味噌は前回のがまだあるから、松田美智子さんの「季節の仕事」にあるふきのとうのコンフィにトライした。本のレシピは本来の低温の油で煮るのではなく素揚げして塩を振るのだけど、油が足りなくて揚げ煮のようになってしまった。ここから蕗味噌に方向変換するのは油が多すぎて無理だけど、これはつまりコンフィでは?と気づいて、結局塩を少々振って軽く混ぜて小瓶に詰めた。パスタやサラダに使うと良さそうだ。楽しみがひとつふえた。

今朝ラッパ水仙の花も開いた。黄色の大きなラッパ水仙は明るくて、陽気な太陽みたいでとても可愛い。春らしくて大好きな花、今年は沢山咲いてくれそうなので、昨年がんばって仕事した甲斐があった。ヒオウギスイセンの球根がみっしり重なっていて、しかもここの陽当たりではヒオウギスイセンは咲かなくて、ただの雑草になっていたのを掘り起こす作業はなかなかのものだったから。

ヤブカンゾウの新芽も伸びてきて早速摘んでお浸しに。菜の花もそろそろ食べられそう。野菜を育てるのは上手くないけど、野草は何とかなる。ちゃんと正しいタイミングで野菜を育ててるお庭を見てはすごいなあと感心してるけど、車もない事だし仕方ない。今のままでも結構楽しみは沢山ある。

長くなっちゃったので猫の話はまた次に。
ニャァ。

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