見出し画像

精神病院で生きていた話 その18

 
ロビーでノートにらくがきをしていると眼鏡で短髪の女性の職員が急にこちらに話しかけてきた。
「三谷さん、こんにちは。心理士の玉那覇と言います。先生から心理検査を頼まれましてこちらのテストを暇な時に書いていただけますか?」
 
玉那覇さんは三枚のプリントを渡してきた。
「週末に知能検査を行うのでそれまでにできる所までお願いします。」
 
一つのプリントは様々な質問に「そうだと思う」「そう思わない」「少し思う」「そう思う」「わからない」等で答える物。
もう一つは文章の最初が書いてあって続きを書くもの。「私は_____」「私の母は_____」などといった具合だ。
もう一つは一人がセリフを言っていて相手のセリフを埋めるイラストテスト。「この花瓶は高かったのに割ってしまったのか」「______」などといった具合で埋めていく。
 
あぁ、心理テストだな…と思いながら次の日には全部やってしまった。なかなかいい暇つぶしになったし、穴埋めテストは大喜利をやっているようで楽しかった。ふざけた回答ばかり書いてしまったので若干後悔しながら提出した。
 
そして知能検査の日になった。
ブロックを並び替えてお手本の様に並び替えるテストはとても得意だった。昔からパズルゲームは得意だったのだ。
いくつかのイラストをみて「違う絵」を探すテストは終盤はどこが違うのか全然わからなかった。
簡単な計算をするテストは出来たが、心理士が数字を言っていきそれを暗記するテストは全然できなかった。
計算障害でもあるんじゃないかと心配になった。

ロールシャッハテストやバウムテストなんていうテレビでしか見た事が無い物までやった。
 
でもここでそんなテストはここにきていい刺激になった。
「最後に三谷さんの生い立ちについて聞きたいのでその時間を設けます、お話していただけますか?」
 
僕は(嫌だな…)と思った、僕はトラウマが多い。
 
「では家族構成を教えてください」
「母と妹がいます…妹は血が繋がってなくて姉の子供を養子縁組して…」
「お姉さんもいるんですね?」
「姉は素行がひどくて縁切りされてて…」
などと家族構成を聞かれる。
 
「子供の頃はどんな子供でしたか?」
「先生が嫌いで不登校気味でした。それが原因でいじめられてて…余計に不登校になっていました…」
傷をえぐってくる質問がいくつも続いてくる。
 
「家族をどう思ってるか教えてください」
 
(嫌な質問が来たな)と思った。私は母と妹は好きだが姉が嫌いだった。その旨を話す。
「お姉さんと何かあったんですか…?」
「姉にはよく虐められていて、性的ないたずらも良くされていて、それで性におおらかになってしまったんです」
「性的ないたずらと言うと…?」
 
私は泣いてしまった。泣きながら
「舐められたり舐めさせられたり、無理矢理本番行為を許容されたりしていました。小学生の頃でした。でも姉の事を嫌いに慣れなくて」
と一番傷になっていることを話した。そして思い出して勃起してしまっている僕が本当に嫌になって号泣してしまった。
 
「…辛かったでしょう。それでは今日は終わりにします。また聞くことがあったらお声掛けするかもしれません。心理検査の結果が出るのは少し時間がかかります。」
 
僕は泣きながら部屋を出て、思った。そうか、結果が出るまで退院できないのか。それは今が精神病院の中で楽しいからいい事だと思った反面、良くない事だなとも思った。


実話をもとにした創作精神病院入院記です。
毎週金曜日更新予定。
無料公開ですが投げ銭、欲しい物リストでやる気が出ます。

欲しい物リスト

↓投げ銭↓

ここから先は

13字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?