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精神病院で生きていた話 その24


佐藤さんという変わったおじいさんがいる。この人も痴呆症だ。そして傾奇者だなぁと思う行動をよくしていた。
「佐藤哲也です!よろしくお願いなすって!」なんて挨拶を何度も皆にしていたし入院着を着こなしてズボンを首に巻き着物の様に着ていたり面白いお爺さんだった。
このお爺さんも徘徊癖があり、様々な部屋に行っては「この部屋は私が百万円で買いました!皆さん出ていきなさい!」と叫んだりいろいろ困らせているお爺さんだった。
 
ある日、新木くんという男の子が入院してきた。新木君は精神薬にハマってしまい、それを抜くために入院して来たらしい。
「いやー、睡眠薬も抜かれちゃって全然寝れないんですよー」
 
なんて言っていた。確かに僕が深夜目を覚ますとロビーにいたりしてそこで楽器や好きなバンドの話をしたりして仲良くなり、僕は「アラーキー」なんてあだ名で呼ぶようになった。
 
ある日の深夜。
 
「謝れよ!!!てめぇ!!!謝れよ!!!」
 
と普段穏便なアラーキーが佐藤さんにブチギレている。
すると慌てて看護師さんが飛んできた。
 
「あいつ!!やっと寝れたと思ったら部屋に入ってきやがって!!!病棟を移せ!!!解放病棟へ移せ!!!」
と看護師さんにもキレていた。
 
「もうー!寝れないのに!僕もう出ていきます!!」
といい荷物をまとめてロビーにいたりして本当にギリギリなんだな、と思った。
 
佐藤さんは保護室に入り、アラーキーの敵はいなくなった。
しかし次の夜。
 
「てめぇもか!!!謝れよ!!!謝れよ!!!寝れない人の気持ちがわかんねぇのか!!!」
 
と仲野さんにもキレていた。
その次の夜には電波系の大久保さんにキレていた。
 
「謝れ!!!謝れよ!!!!」
「でもこっちから私を呼ぶ声が聞こえたんです」
「うるせぇ!!!」
 
可哀想だなと思いながら少しコントみたいで面白くもいた。
 
その次の朝。
「川本先生がもう明日退院でいいって言ってくれましたよー。なんか川本先生もこの病院辞めるみたいですし落ち着く環境へ行けって」
 
僕は初耳だった。川本先生が辞めるのか…そんなこんなでアラーキーは入院して10日ほどで退院していった。
里桜ちゃんの記録を抜くスピード退院だった。



実話をもとにした創作精神病院入院記です。
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