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精神病院で生きていた話 その17

沙紀ちゃんや和也くんは口悪くあだ名をつける。
 
丸刈りの吉山くんは姿勢がいい。毎日朝早く起きては太極拳をしたりウォーキングをしたりする。
看護師と喧嘩もする。
「それはこの病院のルールなんですか!」
沙紀ちゃんは彼に「模範囚」と言うあだ名をつけた。
 
庄田くんは髪が薄い。でもロン毛にしていて頭頂部だけ薄くて左右後ろは髪の毛が長い。
 
和也くんは彼の事を「スヌーピー」と呼ぶ。
たしかに言われてみればなるほど。左右の毛がスヌーピーの耳の様に見える。
 
悪口の様なあだ名を陰でこそこそいうので時々敵を作る。
この間は吉山くんが公衆電話で電話しているときにロビーで盛り上がっていたら「うるさいよ!!」と怒鳴られてしまったし、何も言われてない芹岡さんが「俺のこと馬鹿にして楽しいか??」と聞いてきたし。
 
でも庄田くんは何も言わない。
沙紀ちゃんは時々冗談で「あー!退院したら庄田くんと付き合いたいなー!」と言っているのでそれが耳に入っているのかもしれない。
 
 
ある日、みんなで話していると恋バナになった。議題は「今までで一番愛した異性は?」だ。
 
「うーん、むずかしいなお母さんかな」
「それは逃げてるよ!私は今の彼氏。退院したら会うんだ。」
「俺はサエコかな」
「誰だよ(笑)みっちーは恵ちゃんでしょ(笑)」
「えー、じゃあ沙紀ちゃんは誰なの?」
 
沙紀ちゃんは後ろの公衆電話で電話をしている庄田くんを見ながら
「私は庄田くんかなー!」
 
と大きな声で言う。電話を切った庄田くんはチラッとこっちを見る。
沙紀ちゃんは庄田くんに大きな声で聞く。
「庄田くーーーん!今までで一番愛した女ってだれーーー?」
 
庄田くんはこっちを見据えながらすごい威圧でぼそりといった。
「・・・新垣結衣」
 
沙紀ちゃんは突っ伏して壺に入ってしまった。
でも庄田くんはずっと沙紀ちゃんを見ていた。
どことなくそれは気になる異性を見るような眼と思った。


実話をもとにした創作精神病院入院記です。
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