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#4|断熱とレイアウト

こんにちは、みささぎ・松本です。

明日から着工する工事に先立ち、今回の工事内容について、さらっと説明をしてみます。

◆そもそもは、断熱の相談でした。

22年前に建築環境研究所/吉村篤一さんの設計で建てられた学芸出版社ビルは、京都建築MAPにも掲載されており、私も学芸さんと知り合うずっと前に、外観だけですが見に来ていました。
 (コンクリート壁)面での構成を意識された外観は、フォトジェニックで色々な角度から写真を撮ったものでした。

しかし、実際に勤務する社員の方々には、冬の寒さが厳しかったようです。

私自身も大学を出て勤めた設計事務所で最初に担当した建物は、内外コンクリート打ち放し仕上でした。学芸ビルより6,7年後ですが、当時の一般的な認識として、今ほど、断熱が必要!という感覚はなかったように思います。安藤忠雄さんの一般にも急速に認知された建築の影響もあってか、その熱性能よりも、意匠性の方が利点として認知されていたのではないでしょうか。

しかし、自分がアパートから戸建ての古い民家に引っ越し生活するようになって、断熱への意識が大きく変わりました。そこも内外断熱なしの木造でしたが、なにしろ底冷えがひどい。暖房しても、切るとすぐにジワーッと冷気が押し寄せて来ます。

木造はまだ躯体の熱容量が小さいのでマシですが、それが熱容量の大きいコンクリートだとどうなるか?

冷蔵庫か冷凍庫の中に居るような状態ですね。いくら内部の空気を暖房で暖めても、コンクリート壁面や床天井はキンキンに冷えているので、輻射冷却がジンジン来ます。私が勤めていた設計事務所もたまたまRC躯体現しで(当時は)床さえ断熱なかったので、その芯から冷える感じは経験的にもよくわかります。

今でこそ、その熱容量の大きさを逆に活かして、北欧などのように外断熱にすれば外気温に影響されにくい室内環境が作れる、という考え方が一般化されているように感じますが、22年前は私の知る限り、そんな思潮は少なくとも関西では聞きませんでした。

◆どう断熱するか?

ご相談を受けて、内断熱、外断熱、およびその折衷案の3パターンで現実的に施工できる範囲と方法を考え、コスト概算と共に提案させて頂きました。

その際、外断熱メーカーの東邦レオさんにご協力頂き、代表的な躯体断面におけるヒートブリッジ(熱橋;内外部の温度が建物躯体を伝達すること)のシミュレーションをしてもらいました(その節はありがとうございました)。その結果の一部がこちら。


あくまで代表的な一部分での仮定ですが(かつ比較前提が揃えられていませんが。。)、これを見ると、外断熱が最も効果があることがわかります。また、内部床においてペリメーター部分(外に近い外周部分)を超えれば、中の方まではそこまで外部の影響を(躯体内熱伝導においては)受けていないこともわかりました。(上記シミュレーションではありませんが、結局今回は壁面も内断熱としています)

これらの結果・検討を元に、紆余曲折の末、内外部折衷案で行こう、ということになりました。

吉村先生の設計された印象的なファサードは既に学芸ビルの顔として認知されていますし、撥水剤メンテ更新も定期的にされていたので躯体劣化の面でもまだまだ大丈夫。なので外断熱はしない。

それ以外の部分での外断熱を数年後の設備等諸々更新時に予定し、喫緊に断熱が必要な内部のいくつかを今回部分的な内断熱で対処するという方向性が決まりました。

◆オフィスのイメージ

それに加えて、メインの執務空間である編集部のレイアウトの相談において、頂いた絵がこれでした。


さすが建築の出版社!クライアントから要望がパースで出てきたのは初めてです。すばらしい。某岩切画伯がサラサラっと描かれたそうです。

この空間のイメージと、前田社長によるミリ単位(!)のレイアウト検討図を元に、急ピッチで計画をまとめました。

岩切さんのパースや、重ねた打合、何度か訪問して読み取った雰囲気から、

・抜け感のある
・活き活きとした
・(性能値とは別に)視覚的にも暖かみのある

内装としています。

また、外観が(出隅を空けて)面を強調した構成とされているのに対し、内部では大きなコンクリート柱が印象的(構造計算上はRCラーメン)です。(吉村さんが意図されたのかどうかはわかりませんが)そのズレを援用する構成とすることで、元設計を引き継いだ表現となるようにしました。


(担当の井口さんに一度これを見せたら「ああ、それは特に(打合には)必要ないですね〜」と言われましたが笑。)

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以上、断熱とオフィスレイアウトの2点を大きな軸として、計画しました。

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