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水面

海なし県に住んでいる私だが、出かける用事があって静岡に来た。

車中で1泊し、朝早くから営業している海鮮食堂で朝ごはんを食べる計画だ。せっかくなら早朝の海辺を散歩しようと思い立ち、まだ眠たい身体を起こした。

海辺に着くと釣り人もちらほら。犬の散歩、ランニングする人達もおり、皆休日の朝を思い思いに過ごしているんだなあと考えていた。

浜は砂ではなく砂利だったことに新鮮さを覚えた。靴の中に砂が入ってこないのが嬉しい。

曇りのわりに暖かかった。風も吹いておらず、外で過ごすには丁度良い気候だ。

波打ち際にしゃがみ込み、遠くを見つめぼーっとしていると、ある言葉を思い出した。

「湖の水面が好きなんだ。海に比べて穏やかだから。」

当時の私はそこまで考えたことがなかったので、物の見方がぐぐっと広がったような感覚だった。

そういえば、茨木のり子さんの「みずうみ」という詩にも、しいんとした心の奥底を静かなみずうみに例えていた。

そこに気が付くというのは、その人の感性の繊細さなのだろう。

海も好きだけれど、久しぶりに湖にも行きたくなった。



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