任意売却と自己破産。どちらが先かで大きく変わる結果。

 前回、自己破産のススメという題名で書きました。それに関連して、自己破産はどのタイミングでするのが効果的かについての内容です。

 結論から書いてしまうと、自己破産は任意売却が終わった後にするべきだと私は考えています。それは、引越代を捻出できる可能性が大きいからです。引越代を捻出できた場合、精神的負担も多きく変わるからです。


 住宅ローン等の支払いが滞り、競売になってしまった方の多くは、任意売却や競売で自宅を手放してもローンの残債が残ります。完済できる人は少なく、個人的な感覚では全体の1割程度?2割はいないかな?といったぐらいです。

 その為、前回書いたようにほとんどの方に自己破産を勧めています。ただ、いきななり自己破産をするわけではなく、任意売却後の自己破産です。

 自己破産を弁護士に依頼をすると、遅かれ早かれ自宅の売却が必要になります。債務を免責にする前に所有している資産をお金に換え、可能な限り返済に充てる必要があるためです。結局、自宅を売却することになりますが、自己破産と任意売却の順番がとても大切なのです。

 それは多くの方にとって、任意売却をすることの意味は引越代の捻出がその殆どを占めることにるからです。具体的にみていくと以下のようなことです。


 まず大前提として、自己破産の必要があるのかを確認します。要は残債がどのくらい残るかを調べるということです。これ自体はとても簡単で、相場と比較して自宅がいくらで売れそうか調べればすぐにわかります。

 任意売却をしても残債が残ることが分かり、売却後に自己破産をするとした場合、所有者にとっては自宅がいくらで売却できようが関係無くなります。残債がいくら残っても自己破産で免責にするのですから。

 それならば煩わしい手続きが必要な任意売却をする理由は何でしょうか?それが引越代の捻出ということです。


 では引越代はどのように捻出をするのか。それは債権者との交渉によって捻出をします。交渉を有利にし、少しでも多くの引越代を捻出するためには、売却の主導権を持っていることがとても重要です。

 この主導権は、自己破産を先にした場合は弁護士にあります。仮に破産管財人が選定された場合、所有者でも売却する権限は無くなってしまいます任意売却であれば、売却の主導権は所有者のままです。

 この主導権が誰にあるかはとても大きなポイントです。

 主導権が弁護士にある場合、引越代の捻出は期待できません。弁護士の仕事は引越代の捻出ではなく、自己破産手続きの処理だからです。売却はその手続きの一環として行っているので当然のことだと思います。そもそも引越代の捻出を目的としていませんので交渉もしません。

 一方、主導権が所有者にある場合、売却の主な目的が引越代の捻出ですので、結果が変わってくるのは当然のことです。私はこの目的のために、債権者と交渉をしています。

 ちなみに引越代の目安ですが、単身者の方での40万円前後、2人世帯でも50-60万円前後、一軒家からの引越などだと70-80万円前後はかかります。賃貸の敷金・礼金等の契約に必要な費用、引越業者の費用、殆どの方が荷物を処分しないといけませんのでその処分費用などです。競売にかかっている方で、それだけのお金を持っている方に出会ったことがありません。

 それでも、競売になってしまった以上、いずれは引越しないといけないのです。金融機関から借りることなんてできませんから、親・兄弟・親戚・友人等から借りてでも引越をしなくてはいけないのです。

 これがどれだけ精神的負担が大きいのか。数十万円のお金を理由も聞かずに貸してくれる人など身近にいますか?事情を話して頭を下げて借りるのです。一人からの借入で間に合えばいいですが、場合によっては複数人から借りる必要があります。

 任意売却によって引越代の捻出ができれば、これらの精神的な負担が大幅に少なくなります。全く無くなる場合もあります。返済の必要もないので、売却後の新生活のスタートがとても楽にもなります。

 そうやって引越が終わった後に、自己破産をしてローンの残債を免責にすればいいのです。自己破産を先にしたら、引越代の捻出も無く、引越費用は誰かから借りざるを得なくなります。ローンの残債は免責になっても、引越しの為に借りたお金まで免責にする人はいないと思います。当然、新生活が始まったら少しずつでも返さないといけません

 この様に、自己破産と任意売却の順番が前後することによる違いはとても大きいと思います。だから冒頭のように私は任意売却後の自己破産をお勧めしています。

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