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任意売却はゴールではない。本当の解決とは何だろうか。

 「任意売却は、ゴールではない。ここからがスタートだ。この方にとって、任意売却が本当の解決の一歩になるのだろうか」これは物件の引渡しが終わってお客様(物件の売主)と別れる時にいつも思うことです。

 任意売却は不動産売買の取引なので、物件の引渡しが終われば基本的に仕事としては終わりです。多くの場合、お客様とそれ以降の関りを持つということはありません。仕事の範囲を考えると致し方無いのですが、無責任さを感じる時もあります。

 その無責任さとは、任意売却を機に人生を好転させられるかはお客様本人の意思次第であり、とても難しいことをわかっていることからくるものです。私が任意売却を通してできるのは、好転させる土台を用意することまでです。

 任意売却をして住宅ローンなど月々の支出を大きく減らすことができても、人生を好転させるには収入を増やすことが必要です。しかし、任意売却をする方のほとんどは、無職か生活を維持することができない収入であるかのどちらかです。

 私が「私の仕事」と意識しているのは「お客様の人生の再出発」です。任意売却はその過程のひとつとして支出を減らすことができても、収入を上向きにさせることはできません。

 せめてできることと言えば、生活保護受給の手助けができる程度です。生活保護は申請すれば誰でも受給できるわけではありません。不動産という資産を所有していると、受給のハードルは一気に高くなります。その為、役所に一緒に行き、競売という事情のために自宅を失うことを不動産業者の立場から説明をし、受給の手助けをしています。

 お客様は年齢やその他の事情で就転職に不利な方が多いです。ハローワークに行っても、簡単には見つかりません。ハローワーク経由の求人は、募集企業が体裁上面接はするものの年齢を聞いてすぐに断られるというのが現実です。このことは実際に年配のお客様から聞いたことです。

 「選ばなければ仕事なんていくらでもある」という声もありますが、現実を見れば、その声は体が丈夫な若者に向けた言葉でしかないと思わされます。好き嫌いを言う以前に、身体能力の衰えによって、そもそもできない仕事が多く、選ばざるを得ないのです。平時ですらそのような状況なのに、コロナ禍による若年層の求職者が急増し、より一層難しくなっています。

 それでも、人生の再出発のためには収入が必要です。何とかしたいけれど、残念ながら今の私にそれを解決できる手段がありません。とても無力を感じますが、どうすることもできません。

 少しずつですが、自分で雇用という受け皿を作ろうと考えています。それが私にとっての本当の解決に繋がると思うからです。今はまだ仲間と一緒に事業計画を練っている段階ですが、年内には稼働させる予定です。事業と言うほど大げさなものではありませんが、少しでも雇用を生み出せるようにしたいです。

 そうやって雇用を創り、お客様を受入れ、新たなステップへと進む足がかりとなる。綺麗事かもしれないですが、私と関わった人が少しでもいい人生を歩めるように、そう思いながら日々の仕事に取り組んでいます。

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