どっちが良いってわけじゃない

昨日の佐々木俊尚さんのVoicy。

ジムに行くまでは面倒でも、帰りの爽快感を思い出すと続けられる。
高級フレンチは行くまでは楽しみだけど、帰りは量が多すぎて胃もたれするから、あまり行かなくなってしまった。
過程の快感と達成の快感がある、というお話だ。

この話を聞いて「ピーク・エンドの法則」を思い出した。

ピークエンドの法則とは、2002年のノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマン氏が唱えた、人々の評価基準に関する法則です。彼は1999年の論文で、「ピーク」と「エンド」の経験が、物事の印象を大きく左右する傾向を明らかにしました。
つまり、人はほとんどの経験をピーク(もっとも感情が高ぶった瞬間)時に起きる瞬間と、エンド(最後の印象)時に起きる度合いで判断するということです。

出典  去り際で好印象を演出! ビジネスで役立つ「ピークエンドの法則」とは

人はプロセスそのものより、ピークと最後のことしかよく覚えていないし、全体の良し悪しもそれによって判断する。
接戦だったサッカーの試合も、終盤で点を入れられて終わったら「残念なゲーム」と言われる。
つまらないシーンが続く映画も、驚く仕掛けと感動的なラストがあれば「感動的大作」と評判になる。

「今」と「過去」の評価は別物で、そこに矛盾があることすら起こる。
だからこそ判断が難しいことも起こる。

その具体例をこの本は教えてくれる。

終末期の患者がより良い死を迎えるために、本人はもちろん医師や家族はどんな選択をすべきなのか。
患者が本当に望むことは何なのか。
それを推し測るのに「ピーク・エンドの法則」が使えるという。

終末期は様々な病状の変化が次々に起こるため、対処を誤ると患者の本意ではない状況が起こりかねない。
「今」苦しいのがつらい。
でも、手術でしばらくは身体が楽に過ごせるようになったとしても、手術ダメージで家に帰れずに死ぬのは嫌だ。
こんな時、どうするか?

著者の医師が出した答えは、今つらい状態を改善を目指して手術するが、ダメージが残るような手術になりそうなら即中断、というやり方だ。
実際、目指したところまでの手術は出来なかったが、患者の苦しみは軽減され、家にも帰ることができたという。

今にこだわるのも、「達成」という未来にとっての過去を重視しすぎるのも、どちらもダメな気がする。
どちらが重要というよりは、状況に応じてそのバランスが変わるだけだ。

いくら「つらくても結果が出る」と言われても、あまりにもプロセスがつらいと良い結果に辿り着けない。
逆に、どんなに今がラクでも、どこかで踏ん張りどころを我慢しなければ何も達成できない。

ということは、自分にとってどのくらいのツラさならプロセスを耐えられ、どういう結果を望んでいるのかを正しく把握することが必要だろう。

自分を見つめるのは覚悟が必要だ。
覚悟ができないとプロセスがラクな方に流され続け、場合によっては望まない結果を生むだろう。

でも、覚悟は気力・体力が必要だ。
自力だけでは難しいこともある。
そんな時は誰かのサポートがあるといい。
状況と考えを整理するのをアシストされるだけでも随分違うだろう。

覚悟は自分でしか出来ない。
でも、それをアシストするような人になれないか?
ケアについて学びながら、そんな事を考えている。

豊かな人生のために、ファッションのスパイスを。 学びやコーチングで自分の深掘りを。 私の視点が、誰かのヒントになりますように。