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§読書録:「美徳のよろめき」三島由紀夫
中学から高校にかけて、海外国内問わず名作文庫を読み漁った。
たまたま本が豊富にある家に生まれ育ったので本には困らなかった。
「文体は美しいけど、言ってることよくわかんねぇ」と思っていたのが三島。そんなわたしが唯一、大人になってから手に取った本がこの「美徳のよろめき」。
世間知らずのご令嬢・節子は姦通にご執心。そのうえ、丁度良い相手(土屋なる、とにかく顔が良い男)がいるのです。顔大事だよね~。
「この人相手なら、私の道徳的な恋愛は巧く行きそうだわ。」
節子アカン、それ不倫や。
実際作中3度も中絶します。ほら言わんこっちゃない!
そんな折、節子の父と旧知の仲であった老人・松木が自殺してしまう。松木は真摯に悩みを聞いてくれていた人物。節子は父に問います。
「もしかりによ。お父様の周囲にそんなことが持ち上ったとしたらどうなさる?」「私の周囲にはそういうことはないし、あの自殺した人に比べると、私は恵まれすぎていると思うくらいだ。」
父ちゃん、節子には響いたようですよ。
「ねえ、私たちは、本当に愛し合っていたんだとお思いにならない?」
「たしかに僕も愛していた。(中略)…それでも僕流には、愛せるだけのぎりぎりのところまで愛したつもりだ」
土屋は面倒くさがってますよね。やっと恋に酔ってるウザい人妻と切れるぜラッキーってなもんです。
節子は、お互いに手紙のやりとりをすることもここ数ヶ月は止めようという土屋との約束を破って、とうとう長い手紙を書いた。
節子はこの手紙を出さずに、破って捨てた。
このラストでわたしは節子を許せました。捨てるんかい。ある意味めっちゃハードボイルド。人の妻たるもの、そうでなくっちゃ!
節子も土屋も28歳。まだまだ恋したり、足掻く年齢ですよね。
これから同じことを繰り返したっていい。若いんだもの。
そのうち身体の衰えとともに愛欲も薄れていきます(わたしだけ?)
優雅なヒロイン節子っていうところに三島先生のブラックユーモアを感じます。「姦通という背徳の銅貨を、魂のエレガンスという美徳の金貨へと、みごと錬成してみせる。」先生、絶対笑いこらえて書いてたでしょ!
”よろめき”って言葉は好きです。口語として出てこないもんね。
わたしはよろめいた 使ってみようかしら。
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