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探し物はなんですか~第1話:序章~

暑いなぁ。ひどく暑い。こんな日にこそスイカが食べたいのに。仕事終わりのジョギングを終えた私は製造途中のアルコールスイカを恨めしそうにみつめながらそう思っていた。あぁ早く食べたい・・・

そう、そうなのだ。なかなか減らないのだ。
アルコールスイカとはアメリカではやっているパーティー料理であり、ネット上で見つけてこれは面白そうだからぜひ作ってみようと喜び勇んで買ってきたのだった。しかしスイカに突っ込んだウイスキーがなかなか滲み出ていかないのである。

なんでだろう。ちょっとスイカが小さすぎたのかな。

もしくは突っ込んだウィスキーの量が多かったのかわからないが、これ以上浸透させるのはもはや難しそうだ。もうこれはこれで諦めるべきか。いや、でもせっかくならもうちょい経過させたほうがいいのか。
少しの葛藤があったのち、聡明な私の頭は一つの判断を下したのだった。

「こんなんおいしいわけないやろ。」

少々ふてくされ気味にウィスキーのビンを引き抜いた私は、仕方なくスイカを冷蔵庫に冷やし、そのせいで行き場がなくなった缶ビールを処分するという名目で喉の奥に流し込みながら、ふと2,3日前のことを思い出していた。
あぁ、あの時も今日と同じくらい蒸し暑い夜だったなと。
でもあの時はスイカを食べたいなんて思っている余裕が一切なかった。あれはあれで必死だったんだ。

そう。これは僕の、貴金属に関する物語だ。

つづく


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