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二回言うとイヤなかんじになるかもしれない


子どもとの会話中に気づいた、表現についての疑問

子どもが新しいことをした時や、何かを頑張って練習している時など、
わたしはよく「上手、上手」「うまい、うまい」などと声をかけている。
しかし、ふと「コレやめた方が良いかも」と思った。

そもそもは、子どもがアカチャンの時にハイハイやアンヨをするのを見て
「あら~、じょうず、じょうずねえ~」と言っていたのと同じノリだ。
そこに他意は無い。

しかし「上手、上手」「うまい、うまい」と同じ言葉を二回繰り返すのは、以下のいずれかでないと出てこない行動(表現)では?と思ったのである。

 (1)それほど心から思ってない(「真剣に相手をしていない」を含む)

 (2)相手を同格以下に見ている

本当にそうなのか考えてみる

仮説を検証するため、(1)(2)をそれぞれ対極の状況から考えてみる。

(1)それほど心から思ってない(「真剣に相手をしていない」を含む)

  人は心から感心したり驚いた時、感じたことを素直に表す一言だけが
  出てくる事が多い気がする。
    例:「上手い!」「すごい!」「スゲー!」など

  同じ言葉を二回繰り返して感嘆することもあるとは思うが、
  そのような話し方をする時は、比較的冷静に思考できている
  (感動や感情の振り幅が小さい)ことが多いのではないか。

(2)相手を同格以下に見ている

  例えば、大谷翔平のバッティングを見て「上手い!」と感嘆する人に
  それほど違和感は無いが、「お~上手い上手い」と言うのを聞いたら、
  「お前は何様だ」「大谷レベルでバッティングを知ってるのかよ」と
  感じるのではないだろうか。

  あるいは、友達に「OKOK」「わかったわかった」とは言っても、
  目上の人に「了解了解」「わかりましたわかりました」とは
  言わないであろう。イヤミ以外では。

  思うに人は、「自分がそのことを相手と同等以上に分かっている」と
  いう自尊心や(大谷の例)、「自分の考えを相手に分からせたい」と
  いう意図がある時(目上の人の例)、同じ言葉を二回繰り返すことで
  示唆や強調をしたくなる
のだ。

  そして、それはいずれも広い意味で個人的感情を相手にぶつける行為
  なので、言われた方は軽くウザく感じるというわけだ。

  そういえば昔、椎名誠が似たようなことを書いていた。

人間と人間のつきあいの上で、なんでもないコトバでも三回続けて言うと事態はおだやかでなくなる、ということがよくある。

椎名誠『哀愁の街に霧が降るのだ』より

  椎名誠はそれを「三回コトバ血の雨の法則」と呼んでいた。

自分自身はどうか考えてみる


次に、自分自身について検証してみる。

(1)それほど心から思ってない(「真剣に相手をしていない」を含む)

  わたしが子どもに「上手、上手」「うまい、うまい」と声を
  かける時、正直に言って最近は、純粋な感嘆よりも、
  「わたし(親)はあなた(子ども)を気にしているよ」
  「あなたとコミュニケーションを取る気があるよ」と伝えるための
  「相槌」であることが増えてきた。

  「上手」「うまい」という感想自体は嘘では無いのだが、ちょっと
  機械的、悪く言えば適当に言っていたかもしれない。

  「心から感じていない」「真剣に相手をしていない」と言われると
  なんだかなあとは思うが、程度で言えば「軽め」だったことは確かだ。

(2)相手を同格以下に見ている

  現実問題、実際的なことは、子どもよりわたしの方が格上だと
  考えている。基本は「教えてあげよう」という上から目線であり、
  それが当前の義務だと思っている。
  子どもは幼児なので、それで良いと思っている(今はまだ)。

・・・すると、わたしが子どもに「上手、上手」「うまい、うまい」などと繰り返し言葉を口走ってしまう背景には、やはり(1)(2)のような深層心理が働いていそうである。

二回言うこと自体が悪いかというと違うっぽい

とはいえ、同じ言葉を二回言うことがイコール悪、でもなさそうだ。

そもそも改めて我が身を振り返ってみると、
子どもの行動に本当に驚いた時、普通に「すごいすごい!」とか
言ってたかもしれない。

それに、例えば、仲間や上司から爽やかに以下の言葉を言われたらどうか。

 「良いね、良いね!」
 「オッケ、オッケー!」
 「すごい、すごい!」

別段、悪い感じはしない。
これで「同じ言葉を二回言うなんて・・・イヤミか?」などと
感じるようであれば、たぶん、表現云々ではなく別の問題を抱えている。


強いて言えば、繰り返し言葉は「比較的軽めの表現」になりがちではあるかもしれない。

一言でズバっと

 「良いね!」とか
 「オッケー!」とか
 「すごい!」とか

言ってもらった方が、「本当にそう思われてるんだな感」は増すかも。
ただ、それも時と場合と相手によりそうだ。

で、結論は?

これは子育てに限らず、コミュニケーション・人間関係全般に通じることだと思うのだが、

  • 利己的な感情や深層心理がある場合、
    「同じ言葉を二回言う」という行動で表出することがある

  • その場合、自分の本心や態度がマトモかどうか(誰かと人間関係を築くために望ましいものかどうか)を疑った方が良いかもしれない

と言う感じだろうか。

繰り返し言葉は単なる行動・結果にすぎず、それよりも自分の気持ちや、
他者に対してどういうスタンスで臨むべきかということにフォーカスした方が良いかな、と言う感じ。

ただし、心と行動は相互に作用するので、今度から子どもに
「上手、上手」「うまい、うまい」と言いそうになった時は、
「上手!」「うまい!」と、冗長感なく言えるようにしたい。

それはもちろん表面的な言い方のことではなく、
本当に思ったことをキチンと相手に伝えられるようになりたい、
という意味でだ。

(終)






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