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絵本を読む『三びきの やぎの がらがらどん』

<注意>
この記事には『三びきのやぎのがらがらどん』
(絵:マーシャ・ブラウン)の物語内容・ネタバレが含まれています

図書館にて

2歳になったばかりの我が娘は、図書館に行くと、だいたい絵本にしか興味を示さない。しかしその日はアンパンマンやらミッフィーやらの間に、小田原の老舗「鈴廣」に取材した『かまぼこができるまで』いう本を忍ばせていた。
わたしはそれを見て、ハッとした。

『かまぼこができるまで』は、たぶんわたしなら死ぬまで借りることは無かった本だ。好きなジャンルでもないし、かまぼこに特段興味もない。

しかし、「そういう考え方はとても勿体ないな」と感じたのだ。
手を伸ばせば届くところに知らない物語や知識が山ほどあったのに、自分の趣味嗜好にばかり目を向けていたのだと。
ジャンルなど気にもせず取りたい本を取りまくる娘の行動に、自分の視野の狭さを気付かされた思いだった。

そして「今まで読んでいなかった本が読みたい」「いつもと違う物語や発想に触れたい」という好奇心が湧いてきた。
思い立ったが吉日、まずは目に入った『三びきのやぎのがらがらどん』という絵本を借りてみることにした。
以下の記事は『三びきのやぎのがらがらどん』の読後感想である。


『三びきのやぎのがらがらどん』とは

『三びきのやぎのがらがらどん』は、ノルウェーの昔話だそうだ。
日本でも結構読まれているらしい。

確かスティーブン・キングの『IT』という小説の中で、図書館のスタッフが子どもたちに『三びきのやぎのがらがらどん』を読みきかせている場面があり、絵本のタイトルだけは知っていた。

それ以上の興味は無かったので忘れていたが、時を経て図書館でその本を見つけて、昔の忘れ物が手元に戻ってきたような懐かしい気持ちを感じていた。

何より、自分のために子ども向けの絵本を借りる行為は(わたしにとって)非日常的で新鮮だった。とにかく、ワクワクしながら読み始めたのである。

この感情は何だろう

結論を言うと、この絵本を読んで良かったと思っている。直感に正直に行動し、新たな物語と思索を得ることができた。とても素敵な体験だった。

ただ、絵本の内容に対する率直な感想は「ナニコレ」であった。
数日経った今でもよく分からない。正直モヤモヤしている。

このモヤモヤを伝えたい。『三びきのやぎのがらがらどん』を読んだ人に、同じモヤモヤを感じていてほしい。そして、この物語が一体どういう意図で作られたのか、そしてなぜ広く長く読まれるようになったのか、教えてほしい。そう感じて、この記事を書かずにはいられなかった。

『三びきのやぎのがらがらどん』の内容

<注意>
以下引用部はわたしなりに英文を解釈・要約したものです
誤訳があるかもしれません

『三びきのやぎのがらがらどん』の内容は、以下の通りである。

山深い谷間に、一本の橋が架かっている。
ヤギの3兄弟は橋を渡って豊かな草場に行き、草を食べたいが、
橋の下には大きな怪物(トロル)が潜んでいた。

3匹の中で一番小さなヤギが橋を渡ろうとすると、トロルが現れ、「わしの橋を渡ろうとするのは誰だ、食べてしまうぞ」と脅す。

するとヤギは「この後、もっと大きくて食べがいのある獲物(別のヤギ)が来ますよ」と言った。トロルは「それならば」と、一番小さなヤギを素通りさせた。

次に、中くらいの大きさのヤギが橋を渡ろうとすると、やはりトロルが現れ、「わしの橋を渡ろうとするのは誰だ、食べてしまうぞ」と脅す。

このヤギも最初のヤギと同じように、「この後、もっと大きくて食べがいのある獲物が来ますよ」と言い、トロルは「それならば」と、中くらいの大きさのヤギも素通りさせた。

なるほど、トロルもヤギを通しちゃうあたり、童話的で可愛らしい展開だ。
最後の、3匹目のヤギはどうやってトロルをやり過ごすのかな?

最後にやってきたのは、とても大きなヤギだった。
トロルにも負けない力強さと、迫力だ。

トロル「わしの橋を渡ろうとするのは誰だ!」
ヤギ 「このおれだ!」
トロル「食べてしまうぞ!」
ヤギ 「やってみろ!
    この角で目玉を突き刺して、くり抜いてやる。
    そして、この蹄で、体も骨まで踏み砕いてバラバラにしてやる!」

武力で脅す展開は予想外だった。

確かに、このヤギと戦うのはトロルも躊躇するだろう。
トロルがしぶしぶ引き下がってヤギの戦略勝ち、メデタシメデタシ。
という展開か・・・

そう言うと、ヤギはトロルにとびかかり、
角でトロルの目玉を突き刺してくり抜き、
蹄でトロルの体を骨まで踏み砕いてバラバラにすると、

!?

バラバラになったトロルを橋の下の川に投げ捨てました。

(絶句)

それからヤギは丘を登りました。 ※ニッコニコの3匹のヤギの絵

3匹のヤギは草場でたくさん草を食べて、歩けなくなるくらい太りました。

まだ太ったままだったら、そこにいけば会えるかもしれませんね。

はい、おしまい。



いや。いやいや。

ほのぼの雰囲気で「いや~よかったよかった」みたいに終わってるけど、
挿絵でトロルの肉片がエグイ量で飛び散ってますね?
やっぱり最後は腕力ですよね~」ということ?

ホントに幼児に読み聞かせるような本なのか、これ・・・


混乱した頭で考えてみたが

この物語が何を訴えているのか分からない。展開も釈然としない。

・最後のヤギも「次にもっと大きなヤギが来る」と言えば、
 戦いは避けられたのではないか

・大きなヤギはトロルと駆け引きをする様子が無かった
 戦いが前提だったなら、なぜ小さなヤギが先行する危険を冒したのか

・トロルは「後からもっと大きいヤギが来る」としても
 先に来たヤギを食べれば良かったのではないか

など、次々に疑問が浮かぶ。しかし、これだという答えが出ない。

いや。そもそも、物語に理屈や教訓や道徳を求めるのが間違っているのかもしれない。日本にも浦島太郎など釈然としない物語はたくさんある。
物語とは、ただ「そういうもの」なのだ。きっと。

それにしても、子どもたちはこれを読み聞かされてどう反応をするのだろうか。2匹目まではドキドキしながら神妙に聞いていて、3匹目のヤギがトロルを瞬殺したところで盛り上がる?
アメリカなら子ども達総立ちで ”Whoooo !” "YEAHHHH!" みたいな・・・
子どもは素直だからなー(適当)

Don't think , FEEL.

しばらくそんなことを考えていたが、考えるのはやめることにした。
「こまけえことはいいんだよ!感じろ!」ということだろう。

いずれにせよ、「絵本を読む」ことが色んな意味で面白いと分かったので、今後も娘と一緒に色々読みたいと思う。またモヤったり感動したことがあったら、ここで紹介したい。

ちなみに娘が借りて来た『かまぼこができるまで』も、知らないことがたくさん書いてあって、普通に面白かった。
まさか「ちくわ」があんな風に作られていたなんて・・・

(終)

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