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詩 『背のび』

むさ苦しい夏も
凍えるほどの寒さも
誰かの手が触れたときに
ふと心通うのだろう

心の旅も
誰かの悲しい声も
ふと手を重なり合わせれば
そんな気がしている

たとえ
この世界に一人だとしても

たとえ
桜吹雪で消えてしまっても

たとえ
大雪の日に冷えてしまっても

誰かの手がどこかで触れ合うだろう

夢の中で誰かを殺したとしても

今生きる世界で誰かを傷つけたとしても

それがあなたの幸せと巡り合うこと

誰かの手を取り
歩き出したときに

恥ずかしくなってちょっと手を離す


町の中で幸せそうな笑い声と

笑えてしまうくらいの短い丈のスカートと

顔を見て笑い合えるくらいの幸せな世界と

少し背伸びしながら歩いていく

どうしたって誰かの心は背伸びして見たくなる

どうしたって誰かの心は興味なんて一つもない

鳩を見つめる
その瞳に
少し背伸びしてみよう

オレンジとピンクの空
誰かの悲しみと
そっと背中をさするあたたかな手

誰かの腫れた目と
そっと笑い合える悪趣味な人たち

誰だってね
それで良くて

怖いとか
誰だってね
きっと何よりも未来が楽しみで

みんな未来に向かい手を伸ばす
世界中の手と手を繋いで

今が不安なら
誰だって
知らないうちにこれからを待っている

枯れた木に希望の実をつけた
届かない私の手をとって
そっと私の手から希望が繋がれていった

いつ実るかわからないけれど
美しくなくてもいい
ただ実を実らせて花を咲かせてくれればいい

そっと優しい期待を
そっと握りしめたその期待に
私の全てが激しく脈打つ

初めて花を咲かせる場所を見つけて
そっと力強く咲いてくれれば
それでいい

そんな場所でありますように
そんな場所にめぐりあえますように

息が詰まるような世界より
澄んだ世界に花を咲かせられますように

手と手を取り合って笑い合えるくらいの
そんな世界を見る日が来るまで
声を上げ続けられる人でありますように

水がなくて枯れてしまっても
その泉には綺麗な花が映る










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