「委員は恋に飢えている!」第14会



第14会「図書室の出来事(日常②)」


図書室にはいろんな人が来る。
私、木本紡木は本を読むことが大好きなので時間があれば本を借りて読む。
もちろん自分で買うこともたくさんあるが、お金も限られているので無料で本を借りられる図書室は大好きな場所だ。

こちらからは全体を見まわせるが、入り口やカウンターからは見えにくいこの場所が私のお気に入り。
今日もここで借りた本を読み進める。借りたのは恋愛小説で、大まかな内容は引っ込み思案な女子生徒が一人の男子生徒に助けられ友達になるというものだ。
 
しばらく読み進めていると、男子生徒がやってきた。
(あれは…、土門君)
土内土門君は前の委員会会議で少しお話をした。
悪い人ではなさそうだし、これから少しずつ仲良くなっていきたいと思っている。
彼は植物について書かれている本を借りていった。
 

何について調べるのか気になっていると次は二人の女子生徒がやってきた。
「ねぇ、本なんて借りなくてもいいじゃん。スマホで調べようよぉ」
「もう、スマホも使って、本も使うの!そうした方が良いもの書けるでしょ!」

「私の資料なんだしぃ、別に良くなぁい?」
「だめ!先生からこの本使えって言われたんでしょ!」
「そうだけどさぁ」

図書室にやってきたのは火恋ちゃんと金美ちゃんだった。
おそらく今授業でやってるまとめ資料を作成するのに必要な本を借りに来たのだろう。

金美さんの、と言っているので火恋ちゃんは手伝ってあげているのかもしれない。
(相変わらず火恋ちゃんは優しいな。私にも友達になってくれたし)
火恋ちゃんは突然私のところに来て、友達になろうと言ってくれた。
私も初めは戸惑ったものの、話していくうちに仲良くなれた。

(金美ちゃんも相変わらずマイペース)
金美ちゃんはいつも火恋ちゃんに世話をしてもらってる。
そして火恋ちゃんにずっと頬を触られている。
私もいつかあのやわらかそうな頬を触ってみるのが目標だ。
 

またしばらくすると、女子生徒が一人、やってきた。
(次は…、日早片さん)
日早片さんは正直苦手だ。

前回の委員会会議でも月くんと言い合いをしていたし、周りを寄せ付けないオーラのようなものが出ている気がする。
私には怖いという印象しかない。

(でも生徒会だから、いずれは話さないといけない時が来るんだろうな…)
私はその時を想像して身震いをした。
 

日早片さんが出ていき、少し時間がたった時、一人の男子生徒がやってきた。
(今度は…、月くん)
やってきたのは月くんだった。

トラウマの克服を手伝ってくれた人。私のことを助けてくれた人。
そして私と初めて異性の友達になってくれた人。
月くんがあの時助けてくれなかったら私は今も男の人と話すことはできなかったと思うし、風紀委員をやめていたかもしれない。

(月くん、あなたには感謝してもしきれない…)
「紡木さん」
「ひゃあ!!」

私は声をかけられ、変な声を出してしまった。
月くんは口の前に人差し指をたて、静かにというポーズをしながら苦笑いしている。
私は慌てて両手で口を押えた。

「ご、ごめん。驚かせる気はなかったんだ」
「わ、私の方こそごめんなさい」
恥ずかしさで顔が熱くなっているのが分かった。

「で、でも、どうして?あっちからじゃここは見えないはずじゃ…」
「うん。見えなかった。たまたまここら辺の本を見たくてこっちに来たら紡木さんがいたからさ。せっかく会ったのに声をかけないのもあれかなって思って」
「そ、そうなんだ」
月くんが微笑みながら言った言葉に私は返事をすることしかできなかった。

「あ、まずい。時間だから行かないと。紡木さん、またね」
そう言って月くんは図書室から出ていった。
「はあーーー」

また彼に見つけられてしまった。前回も私を見つけてくれたのは月くんだった。
もしかしたら彼は私がどんなところにいても見つけてしまうのではないだろうか。
そんなことを思いながら、私は読んでいた恋愛小説の本を閉じた。

このシリーズは続いていて、読み終えたのは第一巻。
最後は女子生徒が友達になった男子生徒のことを気になり始めたところで終わっていた。
(続きが気になる!)

そして私は小説『あなたが見つけた私の気持ち』をもとあった棚へ返却し、図書室を後にした。


後書き

こんにちは。水差いころです。まずは最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回も日常回です。紡木の日常の一コマを書きました。
本を読むことが好きな紡木。図書室ではお静かに。
月とは友達のはずなのに話すときなんだか心が…。この気持ちはいったい何?
なんていう王道ラブコメになるのかならないのか、どっちなんでしょうね。
もう少し日常回は続きます。
次は誰の日常が見られるんでしょうか。
次も読んでいただけたら嬉しいです。感想も大大大大歓迎ですので、ぜひ。


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