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生後一週間のいのち ~1

もしも『この子の為に~』と、言われ

安楽死を勧めめられたら、、、あなたならどうしますか?


『うっぎゃ~』と、叫びながら袋を突き破りその子は生まれてきた。

どんなにあわてんぼうな子なんだろう!!羊水でびちゃびちゃになりながら身体だけが床に産み落とされた。

私は驚きのあまり思わず絶句した。

生まれてきた子は、まるで意思があるかのように床の上で頭を持ち上げ口を開けパクパクと呼吸をし始めているのだから、、、


母犬は、生まれてきた子犬を軽くひと舐めし次に来る陣痛の痛みで『くう~ん、くう~ん』と、鳴きながら部屋中を歩き回っていた。

犬のお産は安産だと云うけれど、けしって楽に産み落としているわけではなく、お腹の中に入っている子ども数だけ陣痛があり一匹づつ袋に入ってる状態で産み落とすのだ。ある意味過酷な状況になる。一日がかりでお産をするのだ。流石に見ているだけでも疲労するが、苦しみながらも全てお腹から出ない限り終わらないのだ。

4匹までは何とか頑張って産み落とすことができたが、残りの1匹だけはまだお腹の中にいて出てくる様子もなく、また母犬も4回の陣痛で、体力も底をついたかのように、ぐったりと眠りに落ちていた。

疲労困憊で疲れ切っている母犬をねぎらうかのように優しく長い間なでた、確かにお腹には小さな膨らみがありまだ上の方にいる気配がする。あと1回産み出す為にはもっと下がってきて最後の陣痛を迎えないと終わらない事を知る。犬の子宮は2つあり片方に2匹入っていたらしくその子たちはずっしりと重く大きいまた毛色も単色だった。もう片方は3匹入っていたらしく軽くて小さい毛色は所々2色で混ざっていた。

どうしてこんな事になってしまったものか?

自宅で飼い犬のお産に参加するなんて夢にも思わなかったが、色んなトラブルが重なり合い、動物病院の先生の指導のもとで自宅出産の準備にこぎ着けた。仕事も『犬のお産が始まってしまったので、休みます』と、言ったら理解されず呆れられたが、まあ、何と思われても我が家の一大事。全力でサポートせねば!と意気込んだ。家族総出で我が家のワンコのお産に参加した。

何度も本を読みイメトレはしていたし、獣医師の指導も受けてはいたが現実は想像を超えていた。最初の1匹が出て来た事で袋のままで産み落とす→袋を破る→自力呼吸できていれば羊水を温水で洗い流す(羊水で鼻が塞がっていれば口で吸い上げ詰まりを取り除く)→袋と繋がるへその緒を切り取る。→身体をタオルでゴシゴシ拭き取り、肺呼吸を手伝う様に。中にはそれでも息ができない子もいて子犬身体を両手で包み逆さまにして軽く振る事で呼吸を始めた子もいた。

まるでお産婆さんの気分?(多分、そんな感じなのかな、、、)

お産は流れ作業で役割分担をした。

最初の子犬が自力で飛び出した時点で本の手順通りじゃなかった。

生む方も初めて、手伝う方も初めて、、、

私は母犬にずっと言っていたことがある。

『ママがお手伝いするからね~  生みたい様に産んでね~ きっと大丈夫!みんなでお手伝いするからね!!』

そう、母犬は私を信じている。だから産み落とす事に集中し産んだ。あとの作業は(袋を破る→へその緒を食いちぎる→身体を舐める)しないのだ。責任は重大で、気付いた時点で、役割を家族に振った。

ママ→ 母犬の陣痛の確認と、陣痛開始から動き回る後ろをついて回り、どこでどの瞬間で産み落とすのか?産み落とした袋をキャッチする。中にはサイズが大きくていきんでも、途中で挟んだままだったりしてそこを介助し引っ張り出す。

パパ→袋を破り、へその緒を切る。身体を洗う。その時、呼吸を確認する。していなければ逆さまにして振る。(結局のところは、羊水を口で吸い上げた方がお互いの負担をが少ないらしい)

子供達→洗い流した身体をタオルで丹念に拭き取り、体重測定、母犬の見える箱に並べる。写真撮影。子犬の数と袋(羊膜)の数の確認。

今、家族一丸となりこの愛犬のお産に参加していた。夫は終始自分は『こんな事やったことないし上手く出来ない!お前は子供を産んだし出来るだろうけど!俺は、初めてなんだ!』の連発で慌てまくる。まあ、気持ちは分かるが、既にお産は始まっているし何度も愛犬の育児百科を読む様に言っても人任せで、無知が招いた結果だろうと!口論しても始まらない。

それに私自身、子供たちを帝王切開で出産しているので実のところ産道を通る感覚と痛みを経験していないのだ。私だって初めてだから・・・

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そんな思いにふけっていたが、疲労困憊の母犬の身体がぶるっと震え最後の陣痛が始まった。5匹が漸く下がってきて押し出されようとしていた。

おしりの方から小さい水風船のような袋が見えてきた。

小さい、小さい5匹目の子犬・・・

最初の子犬達の半分の大きさで、まだ未熟もっともっとお母さんのお腹の中に居たかったのだろう、、、そんな気がした。

全てを産み落とした母犬は、重い体をふらふらとしながらも子犬達のもとへ向かいお腹を空かした子犬へ乳を与える。意識は朦朧とするしているかのようで、しかし声は聞こえている、わずかに向きを変えてはそれぞれに与えるのだ。動物の本能とは凄いもので、授乳の間は1~2回のトイレと僅かな水を飲む時以外は片時も離れず、乳をあげ排泄をした子の糞、尿まで舐めて始末し体をなめて洗うのだ。何週間も昼夜とわず続くのだ。

人間で例えれば、産後から一人で5つ子の世話をするようなのだ。

1匹だけ身体が汚れ母犬に放棄されている子犬がいた・・・


   




#我が家のペット自慢

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