コロナと老々介護~ 1
以前、働いていた同僚からメールが来た。
『今日、虐待がありまして、、、また、あとで相談します。』
以前、私は介護施設で勤めていた。施設を利用する利用者さんの健康管理をしていた。大半がリハビリで残機能の回復や筋力低下の維持などを目的として、朝は自宅まで迎えに行き送迎車に乗せ施設でお預かりしリハビリや入浴、食事の提供をし夕方まで過ごして自宅へ帰すのだ。
当時、私の仕事は看護師で利用者さんの体調を確認し一日の利用が可能か?家族や送り出しのヘルパーさんに前日までの変化など聞き取り確認して送迎にあたった介護職員からの報告を受けながら、利用の調整や体調を観察をしていた。安全で安心して過ごせるようスタッフへの指示出しの仕事と変化があれば関連部署への連絡や相談、報告をしていた。
その介護施設では5年間携わった。リハビリを目的としたデイケア施設だった。ここでデイケアとデイサービスの違いは、、、ざっくりと言えばデイケアは日常生活の身体機能の向上をメインとしたリハビリ施設で、デイサービスは主に生活を楽しく過ごす事をメインとしたレクリエーション施設である。各種デイサービスには特色があり沢山の行事やお散歩、遠足まであり幼稚園の様な大人版と言ってもいいだろう。
家族から預かり介護保険で受けられるサービスには違いはないが、家族からの要望で介護負担の軽減や身体機能の低下を維持することが多く、リハビリが多いデイケアでは本人の意思は置き去りで利用契約することもある。
『家族に騙された!こんなところに連れてこられた!』
『そろそろ帰らせて頂きます!』
と、初回の頃は騒いだり動き回る利用者さんの姿もある。回を重ねる度に環境にも慣れ楽しんでいくのだが、往々にして言葉数の少ない男性にそれは見られていた。また、持病のある人が殆どで、病気がそうさせているのか元々の性格なのか判別しにくい事もある。とにかく、大勢の人を見てきたし関わってきた。
『○○さん、覚えてますか?、、、今朝、利用日で迎えに行ったら、お母さん、頭が血だらけで、、、。一緒に住んでるお父さんは何も言わずに送り出してきて、スタッフは事情が分からないまま来所させてきたんです。』
虐待、暴力であった。
○○さん、仮にAさんとしよう。Aさんの場合は、老夫婦の2人暮らし、子供さんは何人かいるが遠方で近くに娘さん家族がいるが仕事もしていて、何かあった時のみの介入でAさんは夫に世話されながら暮らしていた。以前は、経理の仕事などバリバリ仕事をし子育ても仕事と両立させながら家庭も切り盛りしていた。性格は内向的で人見知りなところもあり、亭主関白なご主人にもよく尽くして来た。そんなAさんも高齢になり脳疾患も患って薬でコントールできていたがご主人の定年後より認知機能の低下が見られるようになりこれまでの生活は次第に夫に介護してもらうように変化した。
Aさんがデイケアを利用する様になったのは、ご主人の介護疲れの軽減の為に来るようになる。利用当初はAさんの認知と人見知りもあり他の利用者とも会話もできずに過ごしていたが、脳トレの問題や塗り絵など作業をするようになったきっかけで、周りとのコミュニケーションが取れリハビリをスムーズに出来るようになる。
そんな中、Aさんの認知機能はじわじわと低下して来る様になる。低下の要因はご主人の体調の変化でAさんに対する介護は行き届かなくなる事だった。Aさんの徘徊と介護負担はご主人に益々追い込みをかけていたが、頑固でプライドの高い男性の場合、誰にも頼らずに抱える状況が多くまたこのご主人もそうだった。
状況がピークを迎えたのは、、、コロナだった。
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