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「らしさ」だけが邪魔をするの?

ママ友づくりの壁

今、僕にはママ友が6名います。うち60代が2名、50代が1名、30代が2名、20代が1名と、思われます。(…年齢を詳しく聞くのはやっぱり失礼なので推測。)

彼女たちとはテレワークで在宅勤務を始める前から愛犬の散歩を通じての交流はありました。とはいえ、ちょっとした世間話が主で、ママ友というカテゴリーではありませんでした。それでも主夫生活を本格的に始めた頃からその関係性も少しづつ変化していきつつあります。現在は隣人以上、ママ友未満といったところです。

会社勤めの時には、ほぼ関わることがなかったコミュニティです。けれども多くのママたちにとっての日常ですし、前職で大手学習塾の広告やマーケティングを手掛けていたこともあり、ママコミュニティの実態やそこで起きる(と、まことしやかに信じられている)口コミの源泉について探ってみたいという興味もありました。

ですが、ここから先に進んでいくために越えたいハードルがあります。

「専業主夫である事実のカミングアウト」

まだ今は「フリーランスでデザインやライターなどの仕事をしながら家事もしています」とか「妻がフルタイムの仕事なので、毎晩夕食は僕が作っています」とか、何となくオブラートに包みながら伝えています。本当は彼女たちに近しい目線を持った「主夫」として交流していきたいなと思いつつも、踏み切れないままなのです。

その理由はわかっています。彼女たちにこんな風に受け取られることを恐れているのです。

「それじゃあ無職なの?」「仕事が見つからないのかしら…」「不景気なのに大変よねぇ」「奥さん気が強そうに見えたから尻に敷かれてるのかしらねぇ」「だいたい主夫なんて務まるのかしら」「きっとよっぽどお金があるのよ。でなきゃね~、旦那さんが仕事しないなんて」etc…。

彼女たちが実際に話していることではありません。すべて、

「僕の心の声」

なのですがこの声の破壊力たるや、なかなか強烈です。実体はないのに次から次へと生まれてきて、チクチクと僕をつついてきます。かなり根深いやつです。

男性は就職(正社員)として仕事をしていることが正しい。外で働いて生計を支えるべき。男性は出世してこそ。男性が仕事もせずにぶらぶらしている(ように見える)のは良くない。主婦(夫)行をする男性はみっともない。

これらも「心の声」です。いわゆるジェンダーバイアスというやつなのでしょうか…。

ジェンダーバイアスとは言うけれど…

世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2020」を公表
内閣府男女共同参画局総務課

近年ジェンダーギャップやジェンダーバイアスについての議論が数多く起こってきました。関連図書もたくさん目に触れる機会も増え、発言する方々もたくさんです。「男らしさ」「女らしさ」の通念を見直さなければならないという機運も高まり、子どもたちへの教育も積極的に導入され始めています。

今までの社会の在りようは性差による役割分担を半ば強制してきており、そのバイアスを開放することがダイバーシティにもつながっていく。そういった意識のうねりはとても喜ばしいことだと思います。あたかも前述の「心の声」は気づかないうちに根付かされた「男らしさ」が強制している亡霊のようです。

でも…

僕の心の声に起因する何かを「ジェンダー〇〇」でひとくくりにしてしまうことに少し抵抗を感じます。例えばもし僕が女性だったら「心の声」は聞こえなかったのでしょうか。その時はまた別の「心の声」が生まれていたのかもしれません。「心の声」の背景をすべて「男らしさ」「女らしさ」のバイアスを起因にして考えていくのは(個人的には)少々無理がありそうです。

たぶん僕は専業主夫をしていることをまだ認め切れていないのでしょう。その迷いが、ありもしない「心の声」を作り出している…加えて他者からの評価にさらされることを恐れている節もあります。これまで自分を守ってきた会社員という鎧が取れた時にあまりにも無防備で準備不足だったことをどこかで悔やんでいるのかもしれません。

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まだ日本は一旦敷かれたキャリアのレールを外れて人生をやり直すことにはあまり寛容な社会とは言いがたいようです。人生は自らの数えきれない選択と決定で作られていくもののはずなのに、それすらも肯定できないで悩んでいる人がたくさんいます。

裁縫が好きなパパもいれば嫌いなママもいます。機械修理が得意な女性もいれば、苦手な男性もいます。フルタイムの仕事で家計を支える妻がいれば、子どもたちの面倒を一手に引き受ける夫もいます。もちろん中には心ならずも、という人もいるかもしれません。

けれども一人ひとりが自分の特性を活かして、最大限の価値を生み出せる場所や場面を選んで生きていることにもっと肯定感があってもいいはず。自己肯定感レスへのアプローチはもしかするとジェンダー問題以上に真剣に取り組むべき課題だと思っています。

でも僕もまだ、その肯定感を紡ぎ切れてはいません。

ですが、主夫業1年生ですしそれも無理からぬ話です。とにかく毎日の主夫業を楽しみ、執筆活動による発信を切らさず続けていくことで、僕自身の「肯定感」が作られていくのをもうしばらく待ってみようと思っています。

イラスト:きのこさん

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