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字幕翻訳者が語る!何度も見返したくなる「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」

こんにちは。「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」でまるわかり字幕の翻訳を担当したMです。ドラマや映画はタイトルを聞いただけで見てみたい!と思う作品も多いですが、この作品はタイトルだけだとどんなストーリーなのか少し想像しにくいかもしれません。(一瞬、おじさんと若い女の子のラブストーリー!?と誤解してしまったのは私だけではないかと…)

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 15話

ハートフルドラマと紹介しましたが、見ているだけで心がほんわかとして自然と笑顔になってしまうような“ぽかぽかハートフル”ではなく、人間の心の深いところを見てしまい切ないけど誰にでもそういう部分ってあるよね…と共感するような“ズキズキハートフル”とでも言いましょうか…。分かりにくくてすみません。
「ミセン -未生-」や「シグナル」と同じキム・ウォンソクさんの演出なので、登場人物1人1人の心情が痛いほど伝わってきて切なさや苦しさを感じながらも、気づくと温かい涙が流れてしまうような心に染みる作品です。
その中でも、私が感じた見どころをいくつかご紹介します。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 5話

登場人物はみんな悩みを抱えて生きる人たち

暗い過去を持ち、ただ毎日を生きるためだけに働いているジアン。そんなジアンが派遣社員として働いている建設会社で上司のドンフンのものを盗んだことで物語が展開していきますが、ジアンとドンフンの周りの人たちもみんな何かしら問題を抱えています

仕事もなく妻とも別居中のドンフンの兄サンフン、弟のギフンは売れない映画監督、三兄弟を立派に育て上げたつもりがいまだに世話を焼いていることに愚痴をこぼしながらも息子たちが心配でしかたのない母、浮気をしているドンフンの妻ユニ、ギフンに恋をする女優ユラなど…まだまだ他にも心に傷を持った人たちがたくさん出てきます。
現実の社会でも大人はみんな大なり小なり悩みを持っているでしょうし、ささいなことで落ち込んだり、人につらく当たってしまったりする登場人物たちの気持ちがひしひしと伝わってきます

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 15話

三兄弟の母親はなぜ最も出来のいい次男ドンフンを心配するのか、21歳のジアンはなぜ自分のことを“3万歳”と言うのか、女優のユラはなぜ夢を諦めたギフンに惹かれるのかなど、登場人物の行動やセリフにハッとさせられるシーンが満載なのでじっくり味わってみてください。

まるわかり字幕なら面白い言い回しも
“まるわかり”

皆さんもどこかで耳にされたことがあるかもしれませんが、ドラマや映画の字幕には字数制限があるので全てを訳して、字幕として出すわけにはいかないという事情があります。
子供から大人まで大半の人がストレスなく読み切れる字数が1秒につき4文字と言われていて、これが基本になっているため、面白い言い回しも泣く泣く無難なセリフにしなくてはいけないことが多々あるのです…。

字幕翻訳のルールは他にもありますが、やはり一番の敵(!?)はこの字数制限なので、まるわかり字幕の翻訳のお話を頂いた時は夢のようなお仕事だと思いました。
ふだんから韓国ドラマを見ていて思うのですが、韓国の方って(ドラマだけ?)比喩やことわざを多用したりして、会話を面白おかしく楽しんでいる気がします。
例えばこちらをご覧ください。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 15話

2秒ほどの字幕なので通常は8文字程度(多少のオーバーは許容範囲です)に収めなくてはならないため、通常版では「お前らが酒を抜くだと?」だけになっていますが、実はたった2秒ほどの間にこんなにしゃべってるんです!これはなんと18文字以上オーバーしていて、まるわかり字幕の中でもトップレベルの字数オーバーです。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 4話

他にも4話では、通常字幕で「礼儀を知らないんだな」というセリフが、まるわかり字幕では「謙遜の心は飯と一緒に食っちまったのか?」「礼儀知らずな女め」となっていて登場人物のちょっとひねくれた言い方なども味わえるため、キャラクターの理解度もより一層、深まって楽しめると思います!

是枝裕和監督もとりこにしたIUの魅力

カンヌ国際映画祭にも出品され話題になった韓国映画「ベイビー・ブローカー」で赤ん坊を捨てた母親役を演じたIU。
この映画のメガホンを取った是枝裕和監督は、「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」のIUを見て、この映画への出演をオファーしたと語っています。
韓国ドラマやK-POPファンなら誰もが知っているであろう歌姫IUですが、このドラマではほとんど笑いません!いつもの透明感あふれる愛らしいIUを封印し(それでも透明感はあふれちゃってますが…)常にどんよりとした雰囲気をまとい、下を向いて歩き、ぼそぼそとしゃべり、人を近寄らせないオーラを放っています。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 3話

それでもIU演じるジウンからはなぜか健気さが感じられ、ひどいことをしていても、憎らしいことを言っていても応援したくなってしまう魅力があるのです。
ドラマ序盤では完全にやさぐれているのに、回が進むにつれてどんどんかわいらしく見えてきて彼女の姿を見るだけで胸が締めつけられます。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~ 4話

秋の夜長に、みるアジアでどうぞ!

何も考えずに軽く楽しむ作品…とはいきませんが、ちょっぴり肌寒い秋の夜長に暖かい部屋で家族愛や友情、人生の挫折や再出発などをしんみり、じっくりと考えてみるのにぴったりなドラマです。
ぜひハンカチを用意してご覧ください。

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~はこちらから!
1話~3話の冒頭5分はどなたでもご覧いただけます!▼

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