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触り心地の良いものは、居心地を良くする

いつだって、肌触りのよいものに包まれていたい。
嬉しい時も、悲しい時も、元気な時も、辛い時も。
特に冬の寒くて塞ぎ込みがちな時には、
ふわふわとしたものを求めてしまう。

寒い日には、暖かくてもこもこで触り心地の良い服に身をつつみ、
守られているという感覚をもって外にでる。
ひとたび風が吹いてしまうと、私の体は簡単に凍える。
冬将軍は冷徹で非情だから、自分の身は自分で守らなければ。

実家を出てすぐの頃に買った、何の変哲もないワッフル生地のバスタオル。
乾きも悪くなかったし、何より糸屑がつかなくてお気に入りだった。
でも、2年以上洗濯と乾燥を繰り返していると、
もともと硬い触り心地だったタオルはさらに硬くなり、
乾きづらくなって、しまいにはカビのような匂いが洗面所に漂う。
まだ破れたりはしてないからなあ、なんて呑気に思っていたけど、
使い心地が悪いと精神的にもよろしくなかった。

お風呂に入る時、1日の汚れを取り除いて、
毎日生まれ変わるような気持ちで体を流す。
禊を済ませた神聖な体に、2年分の穢れがついたタオルで拭くのは
なんと矛盾した行為だろう。

繊細な体だから、肌に触れるものは心地良くないと気が済まない。
頭ではわかっていても、もったいない精神と先延ばしで実行に移せない。
そうしているうちに、お風呂の時間が苦痛にさえ思えてしまった。

意を決して、バスタオルを新調することにした。
今まで使っていたのは無印良品。
ここなら手頃で良さそうなものが見つかりそう。
店内のタオルコーナーに直行した。

購入基準は「触り心地・乾きやすさ・使いやすさ」の3つ。
ホテルにあるようなバスタオルは、触り心地は完璧だけど
絶対乾き悪いから買わないと決めている。

そして何より、パイル地によくある不快問題。
「体を拭くと糸屑がつく」
私はこれに何度悩まされたことだろうか。
実家でも母が買ってきたタオルはことごとく糸屑がつく。
「そのうち出なくなるわよ、私はつかないけど。」と母はいつも言う。
スキンケアをしたくても、手や首もとについた糸屑が気になって仕方ない。
ボディクリームを塗ると、永遠に奴らはついてくる。
極め付けは、髪の毛にまでついてくる奴らの始末。
ストレスの7割は奴らといっても過言ではない。
奴らのせいで、お風呂やスキンケアが億劫になる。
だから、実家を出た時はわざわざワッフル生地のバスタオルを買っていた。
でもあの肌触りは、ワッフル生地では出せないということもわかっていた。

そうして探しているうちに見つけたのは、薄手のパイル織りのもの。
乾きも良さそうだし、触り心地もふわふわでちょうどいい。
しかも、昨今のサステナブル思考なのか、
使い古したら雑巾にできるよう、裁断用の線が入っている。
これが実はありがたかったりする。
だって、わざわざ大掃除のときに雑巾を買う必要がなくなるから。

早速購入して家で洗濯。
かさばらないから冬の洋服と一緒に入れても満ぱんにならない。
そして浴室乾燥でも生乾きにならない。これは期待以上の乾き具合。

お風呂上がりにこのバスタオルに包まれると、一息できる。
ふわふわで吸水性もあって、肌への刺激がない。
懸念していた「糸屑」問題は、今まで使ってきたパイル地タオルの中で1番といってもいいほど、ついてこなかった。
それでも、使っていくうちに多少つき始めたけれど、
昔のように全身糸まみれになることはなかった。

タオルひとつでこんなにも繊細になる自分に驚きもあったけれど、
こんな些細なことにも意識を向けてあげるだけで、
自分の欲望を満たしてあげられるのかと嬉しくもなった。
「これまで以上に生地にはこだわって、生活の質をあげたい。」
今後の密かな目標になった。

miru

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