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米国の経済指標わかりやすく解説(ファンダメンタルズ分析)


・雇用統計
市場の注目度が一番高い米経済指標。米労働統計局(BLS)が発表している毎月の経済指標(一般的に、毎月第1金曜日)で、事業調査(CES)と家計調査(CPS)で構成される労働統計

事業調査では、毎月14.3万社の企業及び政府関連機関に対して調査を行っています。
市場で注目されている非農業部門雇用者数は農業部門以外でフルタイム・パートタイムの労働につき、BLSが定める雇用統計調査期間内に労働の対価(賃金)が支払われた人数を指しています。ただ、個人事業主、家族従事者、ボランティア、軍人などいくつかの項目は除外

市場の注目は、ヘッドラインの非農業部門雇用者数と失業率。ただ、FRBの金融政策においては消費につながる賃金上昇、労働参加率も勘案していますので、ヘッドラインが良くても、後者の数値の伸びが低ければ雇用状態が良いとみなせない場合がある


・新規失業保険申請件数
市場ではわかりやすくJobless Claimsと呼んでいます。米労働省が毎週発表している失業保険統計の一つ。

他にも、失業保険継続受給者数、延長給付申請、緊急失業給付数なども同日発表

新規失業保険申請件数は、景気先行指数の構成指標にも含まれていることから、米雇用統計の予想材料として市場の注目度は高いです。申請件数が少なければ、雇用者数が増加というイメージ


・JOLTS(労働移動調査)
人員を採用する側の月次統計になります。対象調査企業は約16,000社。JOLTSで発表される内容としては、
雇用者数(Employment)
求人者数(Job Openings)
採用者数(Hires)
離職者数(Separations)
離職内容でも辞職(Quits)、
レイオフ・解雇(Layoffs & Discharges)

採用及び離職率については、労働市場環境指数(LMCI)にも含まれており、労働者側の数値である米雇用統計の数値と合わせてみておく必要がある。雇用者数の増減が採用なのか、また、離職でも自主的なのか会社都合なのかで企業採用動向をみるうえで、チェックは必要


・ADP雇用報告ADP雇用者数(増減)
人事関連業務の米アウトソーシング会社でもあるADP社の全米雇用報告が発表している数値

対象は、約41万社のサンプル・データ(民間部門雇用者数のおよそ20%)。毎月の民間部門雇用者数の増減の変化を推計した数値

市場では、毎月の米雇用統計(米労働省発表)の予想をするうえで参考にすることもありますが、ほかの週間統計やISM数値とも合わせてみておく必要


・ISM製造業景況指数
ISM(米サプライマネジメント協会)が発表する製造業の購買・供給担当者に対する調査をもとに作成される月次報告

アメリカの調査会社として、経済指標のタイトルにはISMとなっていますが、Markit社が行っているユーロ圏・イギリス、中国などの製造業PMI(購買担当者指数)と共通の調査方法

対象企業は18業種400社以上
回答する購買・供給担当者は、生産、新規受注、雇用など10項目について前月比で上昇・変化なし・低下のいずれかを選択します。
50ポイントが項目の拡大・縮小の分岐点となり、総合のISM製造業指数は、新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の加重平均で算出


・ISM非製造業景況指数
ISM(米サプライマネジメント協会)が発表する非製造業の購買・供給担当者に対する調査をもとの作成される月次報告

対象は18業種375社以上。調査項目はISM製造業景況感指数同様に、新規受注、雇用など10項目。ヘッドラインの総合指数は加重平均されています。50ポイントが項目の拡大・縮小の分岐点


・耐久財受注
耐久財とは、3年以上使用可能であり、比較的高額な商品

調査対象は89業種4800ユニット(会社もしくは部門)で、社内の部門取引も計上されている

この数値は、生産や設備投資の先行指数

価格・受注変動が大きい輸送関連を除いた数値で見るほうがトレンドを見るうえでは有効日常的な資本財受注のトレンドを見るうえでは、コア指数(民間航空機を除く)を見ることが必要


・NY連銀製造業景気指数
ニューヨーク連銀が毎月発表するNY州内の約200の製造業幹部(主にCEO)に対して調査を行った数値

調査項目は総合指数のほかに新規受注、出荷、受注残など10項目。

ISMとは違い、ヘッドラインの数値は各項目を加重平均したものではなく、それ自体が調査項目になりますので、数値のブレが比較的であり、市場予想との差もかなり出てくることから、この数値だけに頼らず、各地域の地区連銀の景気指数とも合わせてみる


・フィラデルフィア連銀製造業業況指数
ISM指数との相関が比較的高く、「製造業」の景況感を判断する景気指標

ペンシルベニア、ニュージャージー、デラウエア州の製造業における景況感や済活動の現状を示したもので
非農業部門就業者数、失業率、製造業の新規受注・在庫、平均賃金、個人所得など11項目から構成され、各項目について1ヶ月前と比較した現状と6ヶ月後の期待を、「良い」「同じ」「悪い」の中から選択させインデックス化した指標


・個人所得・支出
アメリカ国内在住の個人の消費動向に関連する指標

個人所得は実際に受け取った所得から社会保障費・税負担を差し引いた可処分所得

所得の構成項目(賃金給与・賃貸・利子配当)、可処分所得、貯蓄率

個人消費支出は、商品・サービスの金額ベースの数値


・ミシガン大学消費者信頼感指数
消費者の家計や経済状況に対する楽観・悲観の度合いを調査に基づいて算出した指数

調査対象地域はアラスカ・ハワイ除いた48州とワシントンDC在住の成人男女500人
調査対象者は6か月ごとに入れ替わるローテーション方式で、新規回答者は60%
質問構成は、家計状況、経済状況など約30項目

毎月中旬の金曜日に速報値、月末に確報値が発表されます。景気が好調なときは100ポイントを上回ることもあり、その場合にはFRBの利上げ期待が高まりやすいといわれている


・消費者信頼感指数
米カンファレンス・ボード(CB)が発表する月次の経済、雇用、所得などの調査指標
現在と将来に対する消費者のマインド、個人消費動向を把握する指標
消費者に対してアンケート調査を行ない、消費者のマインドをインデックス化し、現在の状況 (経済・雇用) と6か月後の予想(経済・雇用・所得)を調査


・新築住宅販売件数
契約段階の新築住宅の売買を示す統計
中古住宅販売と合わせて、景気トレンドを先取りした経済指標
ただ、対象は一世帯住宅としており、多世帯、モービルホーム(一般的にはトレーラーハウス)は除外
指標は売買をベースとしているので、実際の受渡しの有無は確認できない


・S&Pケース・シラー住宅価格指数
全米主要都市圏の一世帯住宅の販売価格の動向を示す指数

調査の対象都市は、主要10都市(ボストン、シカゴ、デンバー、ラスベガス、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンDC)

主要20都市統計の場合には、(アトランタ、シャーロット、クリーブランド、ダラス、デトロイト、ミネアポリス、フェニックス、ポートランド、シアトル、タンパ)
あくまで主要都市の価格動向としてとらえたほうが良い

・中古住宅販売戸数
アメリカでの住宅市場の動向を見る上では、住宅売買のおよそ80%を占める中古住宅販売戸数は重要

景気が上向けば先行性が比較的高いこの統計は上向き傾向となる

契約者への所有権移転完了ベースで集計しているため、所有権移転文書に関しての規制変更に伴って、最近では販売数と成約数で違いが見られる、後者の成約数でトレンドを見たほうが良い


・住宅着工件数
月中に着工された新築住宅戸数になります。発表内容には、種類別(一世帯、多世帯)、地域別(北東部、中西部、南部、西部)と詳細もあります。着工件数の先行指標として、建設許可件数もあります。
一般的に住宅投資が増加すると、家具・電気製品への波及効果が大きいため、景気動向と密接な関連を持つといわれている


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