ユキヲミテルトオモイダスヒト

もう夏至を過ぎてるが、こうも蒸し暑くなってくると冬が恋しいと思うようになってくるから不思議だ

当の冬には「早く雪が解けて暖かくなって欲しい」と思うのに、人間ってホント欲深い生き物だと思う(それは私だけかも知れないが)

しかも今は多分梅雨時期だと言うのに

私が住む地域だけなのかも知れないがこれっぽっちもまとまった雨は降らない

雨が少しでも降って気温が下がれば涼しくなるし、夏の水不足にもならないはず(あくまで適度の降雨量というのが必須条件!!)

まあ、去年のように災害級の雨量は勘弁して欲しいけれども

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この蒸し暑さに負けて、さっきから次男坊がアイスが食べたいと要求してくる(笑)

南側に面している次男坊の部屋には暖かい(暑い!)空気が流れ込んでくる

私の部屋より2~3度気温が高めだ

。。。まあ、仕方ないか。。。

外に出るのは嫌だが彼の要求を呑むとしよう・・・

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毎年、雪が降り始めると思い出す人がいる

灰色なのか白なのか区別がつけられないような色の空から降るそれを見て、何故か決まって思い出す人

別に雪に因んだ思い出が有るわけではない

でもそれがその人の全体像を浮き上がらせまるで目の前にいるかのような錯覚に捕らわれる

その人は色白で細面だ

私がその人と初めて出会ったのは春だった

桜がまだ蕾の頃で少し冬の気配が鼻に突く高校の廊下ですれ違った

全く面識は無く、しかもほんの一瞬の出来事にも関わらず

何故かその人について無性に知りたくなった記憶がある

見知らぬ人の事を知りたいという欲求

・・・ナゼ!?

私にとってはとても珍しい感情が湧いてきて
その日から何百人という大勢の生徒の中を探し始めた

数日後、案外早くその人の素性はわかった

高校の新入生歓迎会で部活紹介に出てたからだ
(しかも部長!!)

文化部・・・その人のイメージにぴったりだと思った

当初友達と入る部活を一緒にすると約束してたので友達には申し訳ないが断ってその部活に入部した

もし友達と一緒に予定してた部活に入ってたら、きっと私は今頃体育会系のノリでこんなことをしてなかったかも知れない

『本を読む』

『文章を書く』

『自分の想いを表現する』

なにかひとつでもその人に近づきたくて、共通項を探したくて私はモノを書くようになった

人生とはたった一人の出現によってこうも変わってしまうものなのだ…

新入生歓迎会が終わった日の放課後、私は脇目も振らずに部室に向かった

新学期でどこの部室前も混雑してて、なかなか目当ての場所へ辿り着けない

下手すると前室で止められて「ウチに入部しに来てくれたの?」などと誤解を招いてしまう

丁寧に誤解を解いて断り、そんなに遠い場所でもないのに辿り着くまで5分以上掛かった

『やっとちゃんと会える』

3畳あるかないかの狭い部室の一番奥に、大勢の部員でギュウギュウ詰めの中その人は座って独り話をしていた

そして私だけだが
その人の周りで羽のように浮いてる雪を見ていた

・・・なんだろう・・・

とても懐かしさを感じる

こんな人は今まで会ったことのない人種だと思った

たかだか15年程度しか生きていなかったが
その人生のなかでこんな人はひとりもいないと断言できる

強烈な個性と静けさとを併せ持った深いネイビーのイメージを持つ人

10人近く居る部員の誰とも違う空気を纏い、その人はとても穏やかに話をしてくれた

もちろん私は即決で入部を決め
それがその人と私の最初の時間になった・・・

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それからその人とは1年程しか同じ時間を過ごすことはなかったが

その間一度も雪にまつわる思い出は無かった

雪が降る時期にはほぼ引退して顔を出さなくなってたから

実際雪とその人が重なるような場面も無かった

まぁ確かにその人が卒業して進学したのは

全国でも豪雪地帯として有名な所で
雪のイメージと合ってなくもないのだが・・・

その人の物静かさや佇まいに冬の幻想を思い

いつも雪が降るのを見ると思い出す

灰色とも白ともつかないこの空から降る雪は
アノヒトが見る雪と多分同じなのだろうと

私が空を見上げてその人を思う心も
きっとアノヒトの頭上に降るに違いない

そんな妄想をいつも寒空を見上げて独り愉しんでいる

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コンビニから買ってきたアイスを食べ終わったら

実はすでに日が翳り始めてしまっている

言い出した次男坊は
いつものアイスを食べてとてもご満悦だ
食べ終わるとすぐ自室に戻っていった

私はと云えば

日頃真夏以外にアイスを食べることは極力控えているので

やっぱりスイーツにしておくべきだったと後悔するしている

今更ながら体が冷えてきた

しかもこれを書きながら食べたアイスは

『白熊』・・・

雪の書き物なんてしながら白熊食べるとは
まさに妄想に自分の感情を支配された哀れな結末だ

夕方6時
外は日暮れで涼しい風が入ってきた

鳥肌が立ってしまってるので白湯で胃袋を暖めようと思う

そろそろ頭の中も胃袋も夏に戻る時間になったようだ

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