【駄文】 最上の枕とは

最近、夫が一万円を越える枕を買った。
前々から枕が欲しいと言っていて、それこそ長いこと買うわけでもない。
四月に越してきた現在地の近所の、イオンの枕コーナーでよさそうな枕を見つけたというので、
買え買えと連呼して、ついに買ってきた。
何年越しだろう。恐らく三、四年越しである。

妻である私が枕を買うことに反対していたわけではない。
むしろ、睡眠の質の向上のためならば、多少の出費は厭わないべきであるとさえ思う。

だが夫はなかなか枕を買わなかった。
それも、今までドクターショッピングならぬ、枕ショッピングを続けてきたからである。
その結果、もう、合う枕はない、という理由をつけて、合わぬ枕を、
そして枕ですらない、ぬいぐるみやら、タオルを折り畳んだものやら、
いっそ枕なしでやら、
とりあえず「うん、まあまあましかな」と思うものをいろいろと取っ替え引っ替えしながら暮らしてきたのである。

長いこと、ぐだぐだと合わぬ枕で暮らしてきて、
先日やっと、何やらでかくて、枕という言葉を言ったときに想像する形ではない物体を買ってきた。
なんだか不思議な感じで布団の上に置かれているが、本人が納得したのでよかった。
一月近く経つが、わりと合っているようだ。


ところで、私はよく昼寝をする。
毎日とは言わないが、貧血気味なのもあって、昼頃に時に昼寝をする。
その時どうやって寝ているかというと、「寝る」という言葉にあるまじき体勢で寝ていることが多い。
本でも読みながら、或いはYouTubeでも見ながら寝落ちしただろ、という体勢で寝る。

我が家は転勤族なので、布団一家である。
(なぜ転勤族だから布団なのか、説明は省くとして、)
昼間は畳の部屋に畳んである布団。敷布団を畳んだ上に掛け布団をおいて日中は過ごしているのだが、私の昼寝は必ずこれらを用いる。

基本的には、薄い毛布を畳んだ布団の横に敷き、そこにのって、毛布の残り半分を自分の上にかけて、言わば柏餅の柏の葉っぱにくるまれた状態で、この畳んだ布団衆にもたれかかって寝る。
時には、私と夫と二人分並んだ布団のうち片方の、三つ折りになった部分に入り込み、もう一人の布団セット上に上半身か肩から上だけをもたせかけて寝る。
まあ、変な寝かたなのかもしれない。
まあ家での過ごし方なので、人にどう思われようがそんなことはどうでもいい。

とりあえず重要な点は、これらの寝かたをするとき、三つ折りの敷布団の上にふわっと畳んである掛け布団こそが私の枕になるということである。
そして、この寝かたが如何に昼寝として快適か、昼寝後の脳の爽快感を与えてくれるかに気づいてから思ったことがある。
結局この枕ならぬ枕がいいのだと思う。

このでかでかとふんわりと、肩のあたりからボスン!と沈み込めて、完全に頭の形にフィットしてくれる ー いや、正しくはフィットせざるを得ないのだが、つまるところ枕ではなくて、枕の働きをさせている柔らかい布団なのだから、かぶるときに体にフィットしてくれるのと同じように、上からのしかかっても体に合わせてくれる ー 
この完全なるフィット感が私の昼寝の質をあげているのだと思う。

暑くなってきて、掛け布団をかける必要性のない季節になってきた最近では、わざと掛け布団を自分の頭の方に持ってきて、それに乗っかって寝ている。
ああ、なんて快適なんだろう。
最近、これが私の最上の枕だという確信を持つようになってきた。

結局、夫も私も、枕らしからぬ形をした枕が一番快適らしいという意外な共通点を見つけてしまった。

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