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鋭利な季節

思春期が好きだった。

今思い返しても、あのころってかなり好きだなと思う。

思春期の人間というのは、基本的に汚い。
顔はにきびと脂まみれだし、女の場合は体が脂肪を蓄えだすし。そのうち使う言葉も汚れていって、
ただ髪の毛と瞳だけがくろぐろと輝いて。
汚いのも美しいのも紙一重だと、あの時初めて知った気がする。

思春期の人間というのは、なーーーんにも知らん。
またタチの悪いことに、なんにも知らんくせになんか知ってるような顔をしだして、必死に大人のふりをする。
常に子どもだったり大人だったり、あるいはどっちだかわかんなかったりする。
混沌の中で生きている。私も、確かそうだった気がする。

そして思春期の人間は、
妬み、嫉み、恨み、憎しみなど、複雑な負の感情をおぼえはじめる。
喜怒哀楽+その隙間を埋める無数の感情を勝手に拾い食いして、それで勝手に貪食したり吐いたり暴れたりする。

汚物と吐瀉物、血、汗、涙にまみれたかれらは、
自分が一体何をしてるんだか、自分にも分かっていないし、他人にも永遠に分からない。
思春期の人間は、分かりあわない。
私も、確かそうだった気がする。

思春期というのは大変しょうもなく、
青春は醜い。
それでも、愛していた。気がする。

もうほとんどなくしてしまったので、
ほとんど忘れてしまったので、
あのときの私はもうこの世にいないので、
ただの真綿みたいなやわらかい思い出でしかないけれど、
あの鋭利な季節が、わたしは大好きだった。とても、とても、泣きたくなるほど大切だった。

たぶん、今でも愛している。
気がする。知らんけど。



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