【感想】映画『吉原炎上』その2

■坊っちゃんはなぜ吉原を炎上させたのか 
主人公の父親は漁師だったが、船の事故で他界。事故の賠償金を支払う必要があり、主人公は遊女になった。 
坊っちゃんは、主人公と同郷の造船会社の社長の息子で、賠償金支払を巡って、主人公を助けられたかもしれない立場にいたらしい。 
坊っちゃんは何度来店しても主人公を抱かない。 
主人公が抱いてほしいと懇願したら、服を脱げと言う。 
てっきり、主人公の性病を疑っていたから、身体に異常がないか確かめるためにそう言ったのだと思ったら、 
主人公が全裸になったところで、 
「想像の中ではできるのになあ…」と呟く。 
坊っちゃんは性的不能だったのだ。 
その後の二人のやり取りは写されていないけれど、主人公は性的不能がどういうものか理解できず、坊っちゃんに対し、「自分を女として見てくれない」という不満を抱いたようだ。 
その後、売上三位の先輩による布団切り裂き発狂事件が勃発。 
遊女のメンツがつぶされたと怒る主人公に坊っちゃんは言う。 
「君は芯から遊女になりさがったんだな。」 
「吉原の門くぐったときからとっくに遊女ですよ(怒)」 
 
このやり取りを経て、しばらく坊っちゃんは店に来なかったが、一年後、坊っちゃんは親から勘当された手切れ金と共に再び主人公の元にやってくる。 
ここで、主人公が坊っちゃんと夫婦になると心を決めれば、吉原はたぶん炎上しないのだが、主人公は言う。 
「わたしには夢がある!!それは花魁道中をやって、遊女としての花を咲かせることよ。」 
 
主人公は坊っちゃんにはついていかず、大金をもらい、しばらく途絶えていた伝統の花魁道中を復活させる。 
花魁道中を終えた後、やっぱり坊っちゃんへの思いが断ち切れず坊っちゃんに会いに行く(!!)。 
花魁道中であんなにゆっくり歩いていたのに、坊っちゃんに会うために対照的に吉原を走る走る。 
しかし、坊っちゃんにはもう別の女がいて、赤いあやとりで遊んでいる。 
あやとりで遊んでいるところと、見た目からして、主人公よりもかなり若そうだ。 
主人公に気づいたお菊(先輩遊女)は言う。 
「あんた今更坊っちゃんになんの用さ。あの子(あやとりの女)から坊っちゃんを盗らないで。」 
この正論に、主人公は坊っちゃんに会わずにとぼとぼ帰っていく。 
 
そして一年ほど後、主人公は他の男のもとに嫁に行く。 
お店の表玄関で他の従業員に見送られて車に乗り、吉原の門をくぐる。 
夫に肩を抱かれ寄り添って吉原を巣立つ主人公を見て、こちらとしても、これから大事にしてもらうんだよ、幸せになるんだよ、という気持ちになる。 
一方、坊っちゃんは主人公のいなくなった吉原であやとり女子を抱く。 
接吻を受けるなかで、女の子は油の入った瓶を足で蹴り倒してしまう。 
坊っちゃんは、それを目視したものの、また接吻に戻る。 
その後、爆発。 
火に揉まれながらも坊っちゃんと女の子は行為を止めない。 
主人公は、道中、坊っちゃんの住む辺りで火事が起きたと聞き、夫の手を振り切って吉原に戻る。 
そこで燃え盛る火を目にし、観念し、坊っちゃんの起こした火の熱風を通して坊っちゃんに初めて抱かれ、吉原で初めて“はずした”。  
坊っちゃんは自分なりに吉原に花を咲かせた。その形が炎上だった。 
…ということでしょうか。 
 
 
主人公はどうでもいいにしても、お菊には幸せになってほしい。 
お菊は、別れた夫の嫁がお金をせびりにきたとき、畳の下に隠していたお金を泣きながら渡す。 
「金が必要ならあんたも遊女になりな」くらい言えばいいのに… 
吉原を出て所帯をもつ夢を見せてくれたお礼に、お金を渡したのだろうか。 
主人公はなんだかんだいって強運なのでこの後幸せになりそうだし、お菊はずっと不運な気がしてしまう。 

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