![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54209173/rectangle_large_type_2_3ebba13f7d233d188d16a755858314cd.jpg?width=800)
紅花山芍薬を求めて学能堂山へ
前日に急に山に行きたくなり、今時期としてコアジサイが咲いているかもと何度か訪れたことのある三峰山を山アプリで検索した。
検索結果に三峰山と出てきたのが学能堂山だ。
山ログには何やらきれいな花の写真があり、見てみるとこの時期にしか咲かない紅花山芍薬を見れるという。
山芍薬は白色もあまり見たことがなかった私は紅花ということにも惹かれた。
ルートを見てみると歩けそうである。
けれど次の日の天気予報はその時点で9時、12時と雨。最近は雨のときは山に登るのを避けていた。
紅花山芍薬は咲いてから2,3日で散ってしまうらしい。
どうしても見に行きたくなった。
雨だけれど…と前置きを置いて夫にこの山に行きたいと相談した。
ルートを見て、雨量を考えたところ、行けそうだから行ってみようか?と夫。
一応…。天気予報が急変したり朝気が変わったらと、ザックの準備は当日の朝にすることにした。
朝起きて天気予報を真っ先に見た。
相変わらず9時は雨だったけれど朝方の雨に変わってその後は曇り予報だった。
もしかしたら雨は上がるかもしれない。
梅雨時期のこの時期、天気予報も外れる可能性もあるけれど期待をして山に向かうことにした。
事前に調べてた道の駅に向う途中やはり雨が降ってきた。今この時間が一番強いから、と夫に話しかけたもののもしかして今日一日雨だったら…という想いが少し憂鬱にさせた。
雨登山は嫌いではないけれど新しく行く山、ガイドブックには「沢沿い」や「危険な急登」とあった。
最近、コロナの自粛で山離れもしていたので山歩きに対して自信が少しなかった。
低山で不安に思う?と思われるかもだけれど、山は低山ならではの危険がある。
天候が悪く霧で周囲が暗かったら?
人気の山ではない、天候が悪ければ熊も出やすいかも?
…などなど想像が膨らむ。
心のなかで「不安」と「大丈夫」が半々ぐらい。
それでも、紅花山芍薬を見たい気持ちのほうが勝った。
道の駅について登山の準備を始める。
雨は少し小雨になっていた。
このまま上がってほしい。
道の駅からは車道を40分ほど歩かなければいけない。車に気をつけながら田舎道だからか雑草で歩道は歩けず車道の脇を歩いた。
途中ウツギの花が咲いていた。鳥が電線で鳴いていて可愛らしかった。
登山口へのアプローチの道にたどり着いた。
左に進む道に「岳の堂はこちら」の看板がある。
夫が迷っているので「こっちだよ」と伝えた。
学能堂山の別名は「岳の堂」だとガイドブックを読んで知ったので夫にそれを伝えたがあまり伝わらなかった。
しばらく歩くと車が停まっていた。
何台か林道脇に置けるスペースがあるという。
「ここどう?」
と聞くと夫は気のない返事。
事前に
「林道脇に置けたら登山道が近いって書いてあるけど置くの嫌だよね?」と夫に聞いていた。
「先行者がいるから熊は安心だね」と話題を変えた。
進めば登山道の入り口の矢印が小さく右を指している。
…なんとなく。
荒れていそうと思い、まだ雨は降っていた。
GPSアプリで確認すると少し先に林道と登山道の交差するところがある。
「そこで入ればいいか」
と夫に確認し、林道をまたしばらく歩いた。
「雨だし林道を行こう」と夫。
「登山道のほうが近道だから次の交差点で登山道に入ろうよ」と私。
林道脇に登山道から上がってくる道を見つけたが、歩いてる道以外の別の道を見落とした。
「あれ?ここが交差点なのに」
と思いながら夫が道を進むのでしばらく歩いたあと、アプリで道を確認した。
「登山道入れなかった」
「雨だから林道でいいんじゃないかな?」
少し不服に思ったので
「花が咲いてるらしいから帰りは雨じゃなかったら登山道の方に行こうね」と夫に念押し。
そんな折にコアジサイを見つけた。
林道の方には咲いていないかもと思っていたから見つけて写真をさっそく撮った。
進めばたくさん咲いている。
お目当ては山芍薬だったけれど、この時期ならではなコアジサイも捨てがたい。
まだ花開いてるものも少なかったけれど見れて満足だ。
単純な私は歩くのがだんだん楽しくなっていた。
山芍薬も見れるかもしれないと期待が膨らんだ。
林道を歩いていると下山してくる人が。
地元の方のようだ。
「おはようございます」と互いに挨拶して、すれ違いざまにおじさんがじっと私の顔を見つめる。
何かワクワクしたような表情で「山芍薬のこと聞いていいかな?」と思ったけれど何も言わないので見つめ合うだけで終わった。
しばらくするともう一人の下山者が。
こちらも地元の方かもしれない。
その方はすぐさま声をかけてきて「この林道の〇〇に山芍薬が」と事細かに教えてくれた。
「群生してるとこがあるって言うけれど一輪だけ咲いとるわ」
お礼を言い、進む。
「あれ山芍薬じゃない?」
少し林道脇の斜面にピンク色の蕾が見えた。
踏み跡があり近くまで行けた。
「まだ蕾だね」と夫が残念そう。
とりあえず蕾を写真に撮ることにした。
山芍薬のおじさんによれば、林道を上がりきったところにもあるそうで、その通りに紅花山芍薬を見つけた。
コアジサイも脇に咲いていた。
「蕾だね」と夫。
林道を抜けてやっと登山道に入った。
杉林のなか上を見上げると段々と傾斜がきつくなる。尾根に出るまで45分。ここが踏ん張りどころらしい。
傾斜もきついし、道も狭い。
中には足一つ幅しかなく、滑ったら遮るものなく落ちてしまいそう。
「これ滑って落ちたらやばい」を何度も夫に繰り返しながら気を引きしめて歩いた。
勝手な感覚だけれど75度くらいの傾斜じゃないか?
所々にフタリシズカを見つける。
場所を選んでしゃがんで写真を撮った。
傾斜がきつく早く通り過ぎたい気持ちと久しぶりの登山で体力が続くかなという思いとあったけれど、案外ペースは程よい。
事前に不安に感じてた山道への心配はあまり感じなかった。
雨も途中でやみ辺りも明るさを感じ、鳥が懸命に鳴き始めてた。
その光景に一息ついて、少しホッとした。
一段落上がりきったところで下山者が上で待っていてくれたのでお礼をを言って上がった。
私は道を譲るのは得意だけれど道を譲られるのはさっさと歩かなければと焦るので苦手だ。
「この先泥々ですよ」
「わかりました。ありがとうございます。」
伝えられた通り、登山道のぬかるみはひどい状態だった。
傾斜はまだ緩やかになっていて、ぬかるみにはまって靴に泥が付き、滑るし足が重い以外は平気だった。
見ればズボンの内側は泥々。
(洗濯が大変)と心のなかで思う。
ぬかるみから脱出したら尾根に出た。
ここから15分で峠。15分で山頂だ。
尾根に出ると日が差してきた。
木々の間から一筋光が地面に当たり、そこだけ明るかったのが段々と上がってくる霧を消して、周囲に光が溢れる。
天気が良くなる兆候だった。
平坦な道は苔と新緑が明るく輝き美しかった。
「いい道だね」
「いい道だね」
と夫と言い合い、夫も機嫌が良い。
最後の登りに差し掛かり、久しぶりの登山で夫も私も足がだるいと言いながら登れば程なく開けた山頂に出た。
学能堂山の標識がある。
「岳の堂」とも書かれていた。
「着いたー!」と声を上げ、山頂で写真を撮った。
雲が多いもののほんのり青空が見えてきた。
紅花山芍薬は山頂の標識の少し先。
夫と歩く途中、話をし、休憩より先に山芍薬を探しに行った。
人が集まっている。
「あの辺かな?」と見に行けば。
咲いている。
蕾も開きかけている。
…実は雨の登山。
何を心配したかといえば、せっかく見に行っても山芍薬って雨だと開かない?…が疑問だった。
「お天気回復したから咲いてるね」と話してる登山者がいて内心疑問は解決した。
雨の雫の残る紅花山芍薬はきれいだった。
一つの花束だけではなく、たくさん咲いている。巡っているうちに青空が出て、周囲の奈良の山々も見渡せた。
今回の目的は紅花山芍薬で、天気予報からは期待していなかったけれど、この学能堂山は360度奈良の山が見晴らせるとされている。
完璧な360度じゃない。
けれど満足だった。
山芍薬もどんどん開いて咲き始めていた。
山頂でお昼食べたあと…ピストンの予定だったけれど私がさっき登ってきた傾斜75度に「これ下山で滑っだら死ぬ」を繰り返すので下山は別のルートで下りることにした。
そちらの道も傾斜はあったけれど、道幅もあり、切れ落ちてもない。新緑もキラキラしている。
ピストンじゃなく周回になったので、下りてから車道を一時間と少し歩くことになったけれど、すっかり晴れて伊勢街道を田んぼを見ながらダラダラ歩いて道の駅に戻った。
全部で17km。
歩いたねー。
疲れたねー。
晴れたねー。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?