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上橋菜穂子『香君』読了

上橋菜穂子の『香君』を読了した。

軌跡の稲を携えて来訪、香りで万象を知る活神である香君。その稲で力をつけ、依存を深める帝国。
香りの声が聞こえる少女が現れ、物語が動き始める。

最初はモノカルチャーや生態系の話が直線的すぎるかな、と思っていたのだが、だんだん、物語世界に引き込まれていった。
ちょっとナウシカに似た世界観だった。

香りの声が聞こえる、って昔話の聞き耳頭巾のような、桜の花が「あ~れ~」と言いながらひよひよ散っていくような牧歌的なイメージだたのだが、昼夜を問わぬ悲鳴に夜眠れなかったり、香りの悲鳴に圧倒されて気分が悪くなったり。そしてやはり香りの声を聞いた母亡き後、その世界を共有する人がいない孤独に悩む。
現実に香りの声が聞こえると、そうなってしまうのだろうな。

荒れ放題の我が家の庭からはどんな声がしているのだろう。
「ちょっとは手を入れろよ」かもしれないし「このまま放置しておいて」かもしれない。
若い頃、サボテンの心電図を取ると可愛がっている主人が飛行機で離着陸しているときに針が揺れた、サボテンにはテレパシーがあるという話を読んだことがあって、サボテンですらすぐに水を切らして枯らしてしまう私は、サボテンは育てないようにしようと思ったことがある。

庭に植えるのも水やり不要の丈夫なハーブが多い。

あとがきで語られる専門家からの取材とそこに挙げられた参考文献の厚さに圧倒された。

上橋菜穂子に出会ったのは「精霊の守り人」。最初は藤原カムイの漫画で読んだのだ。


以来、はまってほぼ全作品を読んでいる。守り人シリーズの中でも「闇の守り人」が一番好きで、何度読んだかわからない。

過酷な話だが一番好きなのは「獣の奏者」かもしれない。

神の一族とそれを象徴する空飛ぶ王獣、その神を守る闘蛇と呼ばれる龍をあやつる部族。
決して馴らしてはいけない王獣を竪琴の音で操れるようになった少女。

「香君」にも通じる、異界から来た創始者が定めた禁忌がより強く、残酷な形で提示される。

アニメも漫画も面白かった。

上橋菜穂子の物語は食べ物の描写が秀逸で飯テロ;;

私もタンダに胃袋を掴まれてみたいものだ。


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