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何もない空間が価値を生む |オードリー・タン

読書メモです。グッときた部分のメモです。今回はグッとくる部分が多すぎて、びっくりしています。少しだけ感想を書くと、東洋的な考え方が今っぽい。成功とか成果とか効率とか金融とか、そういったものから、共存とか共有とか持たないに変わってきてる気がする。成功より、幸せ。

第1章 経験する

5. 個人が社会に認められる道は1つではない

どの学校も学力重視でした。しかし、学力だけを競った結果「自分は勝者である」と感じられる子供は5-10%しかいないのです。残りの子供たちは、学校生活全体を通して挫折を味わい、負け犬のような気持ちになってしまいます。
在籍していた小学校では、原住民族のタイヤル族の子供たちがいました。彼らは自然や自分の体とうまく付き合うことができ、アーチェリーの試合に出るととても強かったので、皆アイデンティティがとても強く、のびのびと誇りを持っていました。このことから、成績が良いとか、知的能力が高いということだけが人生の道ではないと気づきました。社会から認めれるにはさまざまな方法があるのです。

6.心身の障害はいつでも、誰にでも起きる

台湾では、健康状態は良くなかったものの、語学力は高かった。しかし、ドイツに行くと、ドイツ語が全く話せないし、読めないし、初めて文字が認識でないという経験をしました。そして自分が「認知機能障害」の人になっていたと気が付きました。その後「心身の障害」は一時的な状態として誰にでもありうるかもしれないと気づきました。携帯電話の小さな画面に集中している人は、外の世界に注意を払うことができず、一時的な認知機能障害になっているかもしれません。

7.人の価値は財産ではなく、他人と分かち合ったものの量

タイヤル族の社会では、人の社会的地位は、どれだけの財産を持っているかではなく、何を与え、何を分かち合い、地域のために何を創造し、どれだけ多くの人を世話する能力があり、どれだけ多くの命を養うことができるかで決まるのです。資源を持っている人は、それを自分のために溜め込むのではなく、共有することで部族内での評価を高めていきます。

9.自己同一性は私には必要ない

人は社会で認識されるアイデンティティつまり「自己同一性」を持ちたいがために、学歴を得て仕事に就こうとします。自分で何も言わなくても社会が自分をどう扱うべきかわかってくれるからです。
なぜ私が「同一性」を諦めるのかというと、同一性は「排除」だからです。今の私は「昔、この時期にこんなことをしました」と人に話して経験を共有します。人はそれぞれいろんな時期に異なる経験をするものですから、こうした経験を語っても誰も排除することにはなりません。

12.ネット上では自分の行動を自分で決められる

人は本来、性別や年齢、種族を問わず、個人を尊重することができるのです。自分の行動を決めるのは自分自身です。子供っぽく振る舞えば子供に見られ、大人っぽく振る舞えば大人に見られます。また、人と人とのコミュニケーションは時間的、空間的な制約に縛られることが少ない環境であるほど、より心地よさを感じると気づきました。すぐに返事をしなけれなならないというプレッシャーをあまり感じないからです。

13.親が子供を大人として扱えば子供は早く大人になる

中学に通うのをやめて高校にも進学しないと決めた時、親を通さずに校長に相談したのです。校長のところに行く前に、私はとても注意深く準備しましたが、結局どれも使いませんでした。何故なら、私が学校を休む理由として「自宅でインターネットを使って海外の大学教授とも研究ができる」ことを挙げ、アメリカの大学教授とやりとりしたメールを見せたところ、校長は納得してくれたからです。大人になろうとしているティーンエイジャーにとって、家族から大人として扱われるのはとても大きな成長の助けとなります。

14.批判的思考とは否定することではない

「批判的思考」とは、相手の主張の穴や間違いを見つけて批判することではなく「それが正しいとしたら、どのような条件下で正しいのか」という問いかけをすることなのです。どんな主張も翌年には当てはまらなくなるかもしれない、皆が信じる社会通念でさえも地球の裏側では通用しない場合がある。

16.ネット上で知り合った仲の良い友人は、実際にあっても仲の良い友人

そんな旅の末、面白いことを見つけました。インターネットで知り合った仲の良い友人は、実際に会っても仲の良い友人だったのです。人の性格には一貫性があり、ネットでもリアルでもあまり違いはないのです。

第2章 学ぶ

19.私は休んでいる間に学習する

私の学習は夜の夢のなかか昼間も空想、つまり無意識の領域で行われています。学ぶための素材は昼間聞いた話や読んだ本などで、昼間はとにかく素材を集めることに集中します。その後の睡眠や空想の中でなければ学習は起こりません。この現象について文献を確認したことはありません。何故なら私自身が検証してきた結果としての確実な「実感」だからです。

22.問題解決を目指すコミュニティには学べることが多い

私が参加したコミュニティは学習ではなく「問題解決」に焦点を当てていたからです。このような実践的コミュニティでは知識に境界がありません。協力して解決しなければならない問題に直面した時は、科学、技術、エンジニアリング、数学、芸術などの力を集結します。「学科」は学校で知識を受けるときにこそ必要な分類で、ある問題を解決するなら「必要な時に必要な本を気ままに探す」ように様々なスキルを総動員する必要があるかもしれません。

26.デジタル世代の誕生で学習は変わった

彼らの学習パターンには特徴があります。1点目は自発性が非常に強いということです。彼らは辛抱強く300頁の本を読むより、三行目まで読んでキーワードを探し始めるかもしれません。つまり、テキストを一方的に受け取るのではなく、積極的に対話している状態なのです。
2点目はこの自発性の中にコミュニティ行為が含まれるということです。メモを取る代わりにツイートすることもあります。彼らは学習をコミュニティにかえ、学習のプロセスを人々が議論できる対象に変え、学習を集団の共同創造物に変えました。
デジタル機器がなかった昔も、先生の言ってることを気にせず、教科書に絵を描いている人もいました。どんな時代でも「参加したくなるような方向にデザイン」しなければ生徒の注意をひくことはできないのです。

27.平等な発言権と生徒が学びたいことを優先する

自分が質問をしたくなくても、他の人の質問に「いいね」をクリックすることができます。「いいね」の数が多い質問は、質問シートの上位にランクインされ、私が優先して回答することになります。つまり、誰もがクラスメイトの質問に対し、設定権を持っているのです。このような交流を通してシャイな生徒でも自分の意見を述べたり、先生と一対一で質疑応答をしたりすることができます。教室で先生だけがスピーチをしていると、ラジオやテレビのようになってしまいます。このようにして授業は先生が教えたいことではなく、生徒が学びたいことから始められるのです。

28.知識は蓄積するものではなく「作られる」ものである

一人一人の知識の道のりは、必ずその人個人の経験から出発したものであり、経験を逸脱することはありません。

33.これからの10年に必要な能力は「自発 相互 協働」

ある問題を目の当たりにした時、問題を回避する「回避思考」と率先して解決する「接近回路」ができます。若い頃は大抵オープンで「なぜ」という態度を持ちもっと理解したいと思っているものです。大人になると「これについて自分には何も変える能力がない」と感じてしまい回避回路に向かってしまうのです。しかし、いかなる問題にも自分が理解して共有できる視点が必ずあるはずです。これから遭遇する問題は新型コロナウイルスのように確実に1つの学科を超え、場合によっては10以上の学科が融合しないと解決できない難問かもしれません。

34.毎日多くの人の立場に立てば自分の思考を変えられる

相手の話を15分聞いて、その後5分かけて聞いたことを相手に確認します。そうすると相手はもっと話してくれるようになり自分のスタンスを変えてくれることもあります。毎日たくさんの人の立場になることで自分の思考を変えられます。私にとって「傾聴」や「共感」はスキルというより、話し合いやコミュニケーションにおける習慣のようなものです。

36.永遠に疲れない先生が出てくるかもしれない

2016年ジョージア工科大学で350人の学生が履修するオンライン修士コースで助手のジルワトソンに手助けをさせました。毎日100件ほどの質問がきますので、一学期を100日として計算すると学期終了までに1万件の質問に答えなくてはいけません。多くの場合同じような質問が繰り返されます。しかし、ワトソンは昼夜を問わず真摯に対応し、すぐに返信をして、できる限り詳しく説明をしてくれました。ワトソンは教授のチームによって訓練されたAIでした。ワトソンのようなAIの助手は教師の雑務処理のプレッシャーを軽減し、よりクリエイティブなことに時間を使えるようにします。

第3章 働く

45.自分の価値観を実現するためにシンプルな条件を設定する

私が入閣した当初の条件は以下の3つでした。
①命令はしないし、されないこと
②私が取り仕切った会議や私に会いにきた人については、その後資料をインターネットで公開すること
③どこで仕事をしても仕事とみなすこと
これらの価値を理解している人が来るので、「人を出し抜こうとする人」には出会いませんし、「秘密を抱えている人」が一緒に何かを企もうと誘ってくることもありません。これは「内外に対する相互信頼」である

46.打ち合わせは無駄にならないようにするのが一番

私が政府に入った当初10年議論され続けていたテーマがあります。文化部に聞くと教育部体育署の仕事だと答え、体育署は経済部が担当すべきだと主張し、経済部は担当していないという答えます。そこで各省庁がアイデアをオンラインで公開し、関心を持つすべての人がそれを見て意見を出すことができるようにしました。こうして、3回の会議を経て誰もが同意する結論に達したのです。これが10年来未解決案件の結論です。

49.テクノロジーの重要な役割は、労力の節約と安心を与えること

50.デジタル担当政務委員の3つのスキルツリー

①ファシリテーションスキル
全員が何か収穫を得るよう進行させる能力
②重訳スキル
大量のデータを簡単にまとめたり、参加者が容易にわかるカタチにする能力
③ドキュメンテーションスキル
途中から参加した人も、以前起こったことがわかるよう記録に残す能力

52.イノベーションの最大の鍵は、判断しないこと

55.怒りを持つ人には、まずその怒りを肯定する

その感情を認めてあげて、一緒に未来に目をむける

56.人と意見が合わないのは自分の問題でも相手の問題でもない

未来へ向けた1つのトピックとして議論できると私は考えています。

57.争いあるところに革新的なアイデアが生まれる

対立があるということは、古い方法では満たされない状況が起きており、革新的な方法を考えるタイミングが来たということです。相違点から共通点を探しながら「満足はしなくても、受け入れられる」コンセンサスを得ることができるのです。

第4章 ネット上を生きる

67.個人攻撃に反応するかどうかは自分で決められる

ネット上で誰かが私にコメントしても反応するかしないか、どう反応するかは私が決めることです。罵倒には反応しないが、具体的な提案をすると反応することがわかれば徐々に効果的で合理的なコミュニケーションに向かって行きます。一部の罵倒も「心のマッサージ」だと受け止めて反応しません。もし、相手が私が感情的になることを期待しているのなら、がっかりするでしょう。ずっと注意を引くことができなければ、他の誰かに嫌がらせをするでしょう。

68.不安を感じたら、新しい習慣を身につける

私は「不安と習慣」について書かれた論文をいくつか見つけ、不安に対するための自分なりの習慣を少しずつ身につけていきました。個人攻撃への反応について言えば、以前は無意識に直結しており、怒りや、さらには反撃となりがちでした。しかし、個人攻撃の文章を見たら、まず新しい組み合わせのフレーバーでお茶を淹れる習慣を考えました。もし、その日に十分な睡眠を取れば、目が覚めた時にはまた記憶が更新されていて、お茶を淹れる習慣がスムーズに出てきます。2ヶ月も過ぎるとすっかり身についていました。

78.スマホはタッチスクリーンを使わない

私の経験ではタッチペンで画面を触るとスマホ中毒になりにくいかと思います。一人になる時間を守った上で、何か依存性があると感じるならば、一刻も早く解決策を考えることが大切です。

第5章 AI時代の哲学

75.私たちはもう2度と苦労を糧と捉えなくなる

今度AIが産業界にもたらす最大の変化は、私たちがもう2度と苦労を糧と捉えなくなることだと考えています。過度に煩雑な仕事はAIに任せ、本当の喜びをもたらす仕事を見極め、それを人に任せ、その他の仕事は人が行う必要がなくなります。

79.初対面の人をカテゴライズしない

未知の人と出会った時、その人を分類することをしません。その人が自分の経験を話した時、自分との共通点は何かを考えます。友達どうしのコミュニケーションとはお互いに最も快適な状態に調整することです。ネットワークグループの最も素晴らしい点は、同時でなくていいところです。自分のリズムでコミュニケーションできます。

80.新しいリーダー像とは

かつて、日本の経営思想家である野中郁次郎氏にも、このような価値を共有する重要性について相談したことがあります。そこで私が学んだことは、リダーは常に「新しい可能性」を開くことに目を向け、どちらの立場にも立つことができ、さまざまな異なる立場から物事を見る知恵を身につける必要があるということです。さらに日々秒単位の実行プロセスに人々を巻き込んでいく、これこそがリーダーであるかもしれません。

81.私の人生の長期計画は1日ことである。

今日学べることがあれば、今日学びます。今日作れるものがあれば今日やってみます。もし、今まさに行なっていることが手元にあり、作業のその日のうちに終わらないなら、そのままそれをネット上に公開すれば、誰かに続きをやってもらうことができます。必ずしも私でなくていいのです。こういう気持ちからこのような習慣が身につきました。

82.楽しさだけでなく、ユーダイモニア(幸福)を感じたい

fun(その場限りの楽しさ)
happiness(その日限りの楽しさ)
eudaimonia(幸福)
ユーダイモニアとは、無欲なまま満ち足りる、極めて深層的な満足
、つまり現状に満足した状態です。私の場合は、十分に寝て、十分に食べて、呼吸しさえすれば、ユーダイモニアを感じることができます

83.恋愛で大切なのは自分を大事にすること

「自分を大切にする」とは心身共に健康で充実した状態を保つことです。心理学では「自我機能」といい、その中には以下が含まれます。
・事実を検証する能力
・危険を見分ける判断力
・人間関係を維持する能力
・正確な自己評価
・不安に対する能力
お互いに分かち合い、思いやり、成長し、前向きな関係を築くために必要で、相手に大切にさせたり、補わせたりしていては難しい

84.年長者は若者に変化を強要されたくないだけなのだ

誰も犠牲になる必要はありません。年長者が要望を伝えたり、若者の方から「どういう方法に慣れていますか」と聞いたりすれば、最終的な成果を一緒になって作り上げることができます。

85.難しいことを急いで解決しなければ挫折は起こらない

難しいことを解決する時、短期的に戦おうとするのは危険です。せっかちな人は他の人が問題を解決するのを待つ余裕がなく、自分でやらなければと思ってしまうのです。今は難しいと思えることでも、十年後、二十年後には新たな解決方法ができ、私を必要とせずに解決できると考えます。

88.私たちは皆、お互いの生まれ変わりである

例えば、注意力を視界に向けると、音が少し聞こえなくなってしまうことがあります。しかし、目を閉じると、また、音が聞こえます。でも、目や耳はそれぞれ独立した個体ではありません。私の注意力が目から耳へ移っていると言えるでしょう。
自分自身をログアウトして相手の視点から自分を見た後、再びログインして同じ相手同じ場面に向き合い続けたとしても、すでに相手の視点で目の前の全てを見ることができるということです。 

89.ネットの在り方は老子の道(タオ)と似ているかもしれない

だから、多くを望まない魂は隠されたものを見る
そして、常に欲する魂は欲しいものだけを見る

90.この世界の渓流になる

自分の強さを表す方法を知りながら、物腰の柔らかさを維持して、山間を穏やかに流れる深い渓流のように、この世界のどこへでも流れることができる
老子 道徳経 第28章
男であることを知りながら 女であり続ければ
世界を流れる川の川床となれる
永遠に揺るがない力を持つ世界の川床でいれば
再び戻って新しく生まれ変わる
(略)
命を与え 養い
産み育てても所有はしない
務めても 権利を求めない
導いても 支配はしない
これを不思議な力と呼びます

93.生きる価値のない人生はない

もし、私が今日不快な思いをしたとしても、その不快な体験が、将来同じような経験をした人にあった時、わかり合える助けとなるからです。
ですから、他者との共通体験を最大限に生み出すことを重視すれば、どのような人生でも生きている価値はあるはずです。

94.逃げず、困難を認め、行動したら、手放す

人生の挑戦に直面する時、逃げないで
困難を人生の一部と認め
対応する方法を考えて行動に移した後は
結果がどうであれ気にしない

95.信仰を持つのではなく、信仰を持つ状態になるようにする

あらゆる宗教が教えようとする1つの考えは、「みずから面倒を起こさないこと」みずから面倒を起こさなければ、他人に面倒をかけることもありません。

終わりに

「新しい習慣を身につける」習慣を身につけるべき、と彼女はいつも言います。なぜなら習慣はアプリのようにもっと快い人生を送る術を与えてくれるからです。知恵に満ちた友達と雑談しているかのようでした (アイリス チュウ)


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