見出し画像

SXSW2019 | もっとも話題になった2つのこと「デジタル不審時代の突入」と「次のロックスター=政治家?」

2019年のSXSWはいつにもなくカオスな年でした。
2つのトピックから、振り返りたいと思います。

SXSWが毎年発表するブレイクアウトトレンド

期間中に最も話題になったことが、SXSWインタラクティブアワードの中でブレイクアウトトレンドとして発表されます。2012年から振り返ってみましょう。

スクリーンショット 2020-04-24 11.54.45

2012年はソーシャルサービスのPinterest、2013年はジェスチャーインターフェースのLeapmotionと、SXSW=Techフェスティバルと呼ばれていた時代を象徴しているかのようです。
しかし、2014年頃から様相が変わってきます。オンラインプライバシー&セキュリティ、ダイバーシティ、シビックエンゲージメント(市民参加)などなど、どんどんと社会的な動きや概念といったものが、ブレイクアウトトレンドとなってきました

これはSXSWに毎年2000以上あるカンファレンスセッションを見ても同じことが言えます。今やSXSWは単に新しい技術のフェスティバルではなく、これからの社会のあり方を、音楽・映画・インタラクティブそしてそれらが複合する領域を混ぜ合わせながら議論していく場へと変わったのです。
(もちろん技術・音楽・映像の展示会であることは変わりませんが)

スクリーンショット 2020-04-24 12.03.15

2019年のブレイクアウトトレンドは、「Confronting an era of Digital Distrust(デジタル不審時代との対峙)」

スクリーンショット 2020-04-24 12.07.25

SXSWでは、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグや、Twitterの共同創業者のジャック・ドーシーなどのデジタル領域のテックカンパニーのCEOが「世界を変える、次のロックスター」として注目を浴びてきました

しかし2019年には、このデジタル領域のテックカンパニー(特にFacebookやTwitter)に対し、手のひらを返したように批判が集まったのが象徴的な出来事です。人々はデジタル不審に陥っていたのです。

ケンブリッジアナリティアの問題もあって個人情報の取り扱いについて懸念が溢れたFacebook。創業初期からのメンターの投資家ロジャー・マクナミー氏も、若き日のザッカーバーグを知る一人として、その変化と危惧をセッションの中であらわにしました。(詳しくはWIREDの記事がわかりやすいのでご覧ください)

もう一人巨大化するテックカンパニーの被害者として声をあげたのが、コメディアンのキャシー・グリフィン氏です。

彼女は、トランプ大統領の蝋人形と一緒に撮影した写真をSNSにアップして大炎上したことで日本でも知られています。(詳しくはこちらの記事で)

彼女は、SXSWでもおなじみの大人気テックジャーナリストのカーラ・スウイッシャーと対談をしました。
彼女は写真を投稿した後に謝罪、ツイートを削除したのにも関わらず、Twitterの炎上や脅迫は止まらならかったと話します。
止めてもらいたいとTwitterにお願いしても「プラットフォームの中での個人の発言の自由」ということでレスは特になかったそうです。これは法律で守られているから仕方がないとも思えるのですが、逆にこの炎上はTwitterのメディアとしてのビジネスチャンス(広告露出の最大化)にもなっているという事が問題としてあげられています。この炎上に乗じて「他人の発言」を利用してお金を稼ぐためにTwitter自信が油を注いでいる可能性も0とは言えない、というスタンスに民意が変わってきています。
一般のメディアであればその取り上げた内容はそのメディアの責任になりますが、プラットフォームは複雑です。プラットフォーム・メディアのうまいところ取りをしているSNSに対しての不信感が今非常に大きかったと感じました。

スクリーンショット 2020-04-24 12.44.34

テックカンパニーに警笛をならす政治家。新時代のロックスター・リーダーとして注目が集まる。

米国大統領選に出馬を宣言していたエリザベス・ウォーレン氏をはじめ、2019年のSXSWには多くの政治家が登壇しました。2020年の大統領選を控えていたこともあり、セッションから映画まで様々な分野で政治家が取り上げられました。

エリザベス・ウォーレンはセッションの中で、国家をも凌ぐくらい巨大化したテックカンパニーを解体(小さい会社に分割)するべきと主張していたのが象徴的でした。

もう一人、注目が集まった政治家がいます。最年少の女性下院議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)です。

彼女は、ニューヨーク市ブロンクス区出身。ブロンクス生まれの父親とプエルトリコ出身の母親を両親に持ち、労働者階級の家庭で育ちます。ウェイトレスやバーテンダーの職を務めた後に、政治家へのデビューを果たします。まさに期待の星です。

彼女のSXSWのセッションでは、経済やテクノロジーにも言及し、様々な視座を与えていますが、最大の魅了したポイントは新しいリーダー像としての姿だったと感じました。
普段からインスタライブなどで自宅から配信してもいますが、質疑に多くの時間を使い、どんな人の声にも共感をした上でその場で答えていく彼女の姿勢はとても透明性があるものです。透明性はこれからのリーダーの絶対条件であると強く確信しました。

SXSWのセッション中にも、「政治の世界に入っていきたい(私たちのような)黒人の女の子に何かアドバイスありますか?」という会場からの質問された彼女はこのように答えました。

今ある”力(権力)”に従うのはやめよう。新たに、自分自身の力を構築していこう。
おかしいと思ったら勇気をもって発言するべき。自分の当選はその少しずつの勇気をもらった結果。だから感謝している。

女性・ヒスパニック系・ブルーカラーというコルテスさんは、女性の解放や、男女平等を強く唱えてきたこれまでのリーダーたちと違い、”人間”として正しいと思う社会の形を主張し、作ろうとしています。
ただ単に社会的に正しい事を語るのではなく、自分の言葉で語る事が、新しいリーダーのもう一つ条件であると感じました。

パワーや体制に与せず、自分の信念を表現する様は、まさにロックスターですね。SXSWはいつでも次の時代のロックスターを探しているのだと思いました。



---------------------------------------------------------------------------
<ご紹介>VISIONGRAPH Inc.は、年末に次の年の予報をしております。2020年予報も無料でダウンロードできますので、ご興味のある方は、是非以下よりダウンロードしてください。

画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?